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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上防衛作戦部隊論(第五三回):ペントミック師団(五単位師団),作戦能力保持が必要

2016-06-02 23:01:55 | 防衛・安全保障
■部隊編制と任務遂行能力
 広域師団と装甲機動旅団に航空機動旅団という編成案、を提示してまいりました。

 これまでその対案として、または過渡案として、今回提示しました五単位師団です。作戦単位、戦略単位を考える上で必要な視点は、その部隊が戦闘基幹を構成し、有事の際には主戦闘地域を画定し、攻撃か防御の決心を行う、攻撃任務を選択する際には攻勢の基盤となる地域から攻撃準備と攻撃発起を行いその地形に掩護を行う事が可能な地形見積とそれに見合った部隊を編成する、流れはこのようになる。

 防御任務に当たる際には主戦闘地域と前方地域を画定し前地戦闘の基盤を構築した上で後方地域と段列地域を画定する、防御は最終的に敵の侵攻を阻止し奪われた国土を奪還するべく攻撃の基盤となる地域を見積もったうえで、任務遂行の分水嶺となる最終確保地域を画定しなければなりません。その為の決戦地域、進出掩護を受け易い地形、しかし迂回されにくい緊要地形、その上で戦闘展開に適した地積、火力戦闘部隊支援を受ける上で適切な地積、これらを選ぶ必要があります。

 攻撃は包囲か突破か、となるため戦闘部隊は一方向からの任務遂行ではなく双方向以上の攻撃方向を選定する必要があります、攻撃は包囲か突破かとの命題は即ち突破が包囲へ転換する戦術上の可能性を含み併せて主攻と助攻を明確化せねばなりませんため、攻撃方向を一方向へ単純化する方策は戦術上の禁忌ともなります。また、主攻部隊と助攻部隊は基本的に同一正面幅を付与する必要があり、予備隊と火力戦闘部隊との連絡線を維持可能な部隊編制も必要となるでしょう。

 絶対要件として、任務に当たる部隊に対し充分な戦闘力の配分が無いもの、この原理原則を無視した状況は回避しなければなりません。その上で、その戦闘力には攻撃開始線から敵部隊へ前進する上で必要な防御力と不整地突破能力を含めた機動力の付与は当然含まれますし、敵戦闘部隊の機甲戦力や機動能力に対応する攻撃衝力持続性も付与されなければなりません。

 主戦闘地域と前地に後方を画定する際には作戦単位が過小であれば部隊編制として任務遂行が不可能となります、攻撃方向画定に際し部隊規模が過小であれば攻撃衝力不足が生じます、主攻部隊と助攻部隊は基本的に同一正面幅を付与する観点から同一編成の戦術単位部隊が複数必要となります、主攻撃と助攻撃の前者に寄与する攻撃行動を行う事は併せて部隊規模は地積見積の観点から過小があるとともに過大も有り得る、という視点も必要です。

 こうした上で二つの作戦部隊単位を示したわけですが、共通要素は、現在の防衛省が進める機甲戦力と特科火力の本土からの撤収は間違っている、というものです。戦車に代える装輪装甲車は任務遂行に必要な不整地突破能力と攻撃衝力持続性を持つとは考えにくく、無理に任務に充てる場合には膨大な数的犠牲、その損耗に耐える配備数が不可欠となります。また、特科火力が不十分であれば対砲兵戦が成り立たず、主攻部隊と助攻部隊に予備隊、という位置づけではなく、単なるテロ対策重装備治安部隊に転落しかねません。

 もちろん、北方の戦車を迅速に本土に輸送可能となるよう北海道新幹線東北新幹線東海道山陽新幹線を複々線化し戦車貨物輸送体制を構築する、航空自衛隊が戦車や自走榴弾砲を空輸可能で先日生産終了となりましたC-17戦域間輸送機を25機程度ライセンス生産し取得する、特科火力不足を補うべく陸上自衛隊が米海兵隊のように独自航空戦力を構築しF-2支援戦闘機かF/A-18F戦闘攻撃機を90機程度配備する、というならば機甲戦力不足や特科火力不足は補えるのかもしれませんが、現実的に考え、今回の特集のような五単位師団の提案を行いました。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (6)
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