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カスケーディアライジング2016演習、米本土西海岸M9.0級巨大地震想定し20000名が参加

2016-06-08 22:00:51 | 防災・災害派遣
■国土安全保障省主管防災訓練
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 日本の防災訓練等は我が国は阪神大震災以降、そして東日本大震災以降数多くが報じられるところですが、アメリカではどのような訓練が実施されているのでしょうか、そこで今回は現在実施中の西海岸における訓練の様子を紹介しましょう。カスケード地溝帯での大規模災害を想定したアメリカ国土安全保障省主体の統合演習”カスケーディアライジング2016”がアメリカ西海岸において実施されました。カスケード地溝帯はアラスカからカナダとアメリカ西海岸へ至る巨大な地溝帯で、過去には1700年にマグニチュード9の巨大地震が発生しています。

 アメリカでは地震が少ない、と誤解されるのは東海岸のニューヨークやワシントンDC等に限ったもので、西海岸のサンフランシスコやロスアンジェルスなどは過去に幾度も巨大地震に見舞われている他、1965年のアラスカ地震は気象庁震度換算で震度七の揺れを筆頭に烈震がが七分間にわたり継続するという非常に長い時間の地殻破壊を継続しており、地震のエネルギーとしては1960年チリ地震と並び20世紀最大規模の地震となっています。

 カスケーディアライジング2016はオレゴン州沖においてマグニチュード9.0の海溝型巨大地震が発生、延安部に地震による広範な被害をもたらした直後にたかさ数十m規模の巨大津波が襲来し沿岸部を破壊、広範囲に孤立地域を発生させた、という想定で行われ、これはアメリカ国土安全保障省が2011年の日本における東北地方太平洋沖地震東日本大震災での津波被害を強く意識したもの、とのことでした。実際にカスケード地溝帯では1700年に東日本大震災と同程度の巨大地震が発生しているとのこと。

 演習では想定地震発生とともにワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、三州が非常事態を宣言し、州兵の動員を開始、連邦政府及び州政府と郡庁などから即座に20000名の動員体制を立てるとの状況から開始され、第二段階として州兵部隊による離島地域への救援と物資輸送を演練しています。この水陸機動訓練ではメイソンカウンティア総合陸上競技場へ陸海空の統合物資集積空輸拠点を構築し、物資集積と空輸拠点を既設飛行場以外に開設しました。

 更にウェストポート津波避難施設が孤立したとの状況想定の上で救出訓練を実施、続いて離島であるバション島とタウンゼント港間を海軍艦艇へ州兵部隊が上船し展開し、孤立地域からの救出を演練しました。水陸機動作戦と云えばアメリカでは海兵隊の任務という印象がありますが、 州政府が初動の段階で隷下に置くことが可能であるのは州兵部隊です、中には浮橋等架橋機材をそのまま離島への交通手段として用いた事例があります、自衛隊も東日本大震災では一部実施していた方法でした。この為手元にある部隊を元に水陸両用作戦部隊を臨時編成する、見習うべき命題と云えますね。

 特殊災害への想定もカスケーディアライジング2016では演練されており、想定事故としてポートエンジェルス化学工場が大規模な津波被害により広範囲に有毒化学物質が流失し、大量の地域汚染と共に被災者が致死性化学物質により汚染され一刻を争うとの状況で除染訓練を実施しました、化学物質の流失による大規模な汚染はそのまま、万一の際の原子力施設への地震被害が生じた際にも避難要領の演練、除染施設の立ち上げや多数住民への除染実施等、我が国では原子力事故対処訓練として除染訓練を実施する事は東日本大震災以前ではほぼ禁忌ではありましたが、この方策、応用できるかもしれません。

 孤立対処訓練、特筆すべき訓練として、フォックス島において実施された孤立対処訓練が挙げられます、孤立対処訓練はフォックス島が巨大な津波に遭遇し、一方西海岸全域へ広範な被害が生じた為救助着手が遅れ、このため限られた物資を少数の連邦政府職員と郡役場職員により集積し配分するというもので、自然災害における緊急時対応計画として画定している非常対処要領に則り、平時と有事の切替を演練しています。平時と有事の切替は、法的権限や行政手続きの災害時という非常事態故の簡素化を示すもので、平時手続きでは判断や予算行使等間に合わない状況を回避する手段として重要な認識の一つ。

 訓練では平時から指定された災害緊急ボランティアグループが招集され、避難所に当たるきんきゅシェルターの設置が担当毎に平時から住民に割り当てられていると共に、受け持ち地域の巡回を行うと共に、ボランティア活動拠点へ緊急時通信ボランティアとして参加するアマチュア無線愛好家が展開し、州政府緊急対処司令部との通信基盤の確立を行い、カスケーディアライジング2016において実に40のアマチュア無線愛好家が通信拠点を構築した、とのこと。

 郡役場ではもう一つ、緊急耐震点検として橋梁施設の迅速な点検訓練を実施しています。西海岸沿岸部では地形上、峡谷や離島とを多数の橋梁や高架道路が結んでおり、緊急時においては崩落していないものの、橋梁通行に制限が加わる場合があります。この場合、例えば我が国の先日発生した熊本地震などでは通行止めとすることが基本ですが、カスケーディアライジング2016では郡役場土木科橋梁監督署が中心となり、軽車両の通行に必要な補強と重車両通行の可否、歩行者のみの通行可否などを迅速に判定する訓練を実施しています。

 我が国が大きく認識すべきは、カスケーディアライジング2016は国土安全保障省が中心となり、隷下へ州兵部隊や住民防災組織を含めた州政府を複合的な系統について一元化を図っている部分で、更に平時手続きを有事の際に継続する事での弊害を認識し、更に防災計画へ住民を参加の促しという次元を超えた内部化を図っている部分が挙げられるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (1)
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