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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集【第24回参議院選挙と安全保障】第二回・・・イギリスEU離脱,通貨危機勃発と危機対処

2016-06-25 21:22:00 | 北大路機関特別企画
■参院選で求められる危機管理
 第24回参議院選挙と安全保障、この命題にイギリスの欧州連合脱退を受けて突発したポンド危機と欧州経済危機、欧州の団結維持と世界経済危機の回避という課題が急浮上しました、この問題は単に為政者が完了に丸投げするのではなく、解決策の展望を具体的に示し、各国首脳とも共有示できなければなりません。

 日米安全保障の視点から検証する予定でしたが、イギリスのEU離脱を受け急遽差し替えました。参議院選挙では、日本国憲法施政下の日本では内閣の首班は衆議院での最大与党から選出されますので、政権交代に繋がる事はありませんが、衆議院選挙へ重大な影響を与えるものです。ここで、参院選では今回のイギリスEU離脱に伴う世界危機への対処が可能な施策を示す能力を持つ政党に躍進が求められるでしょう。ポンド暴落、日本政府が対策の主導権の一端を担います。イングランド銀行支援へFRB連邦準備制度理事会と日本銀行が介入の姿勢を示したことで、下げ幅が縮小しました。

 この施策は政府が主導したものですが、他方、イングランド銀行との歴史的関係がその草創期から非常に長い欧州中央銀行の去就がどのように示されるかにより、ポンド危機の鎮静化の道筋が示される事となります。一方で、ドル、ユーロ、円、に並ぶ為替媒介通貨であるポンドの下落影響がどのように進むかにより、EUの次の段階、ユーロを共有する各国のEUとの関係にも影響する問題といえるでしょう。経済力の大きな中国の人民元ですが、変動相場制を導入していない為、為替媒介通貨としての機能を持ちません、すると、世界主要通貨ではドルとユーロに円がポンド危機対処へ重責を担い、此処で誤れば世界通貨危機へと展開しなけません。

 今回の参院選では国際金融の安定化を争点とした政党はありませんが、民主党政権時代の様に注視のみ続ける選択肢では通貨危機を放置するばかりか助長しかねません。実際問題、民主党政権時代に生じた幾つかの世界的事象は、適切に日本政府が関与する、若しくは対応策を壴解すれば回避できるものでした、この中で、今回の事象についても主導的な役割を欠けば危機を助長する事になります、欧州中央銀行と日銀の協力関係を政治主導で強化し、ポンド危機に立ち向かう事が必要です。この点でイギリスのポンド暴落に対し欧州中央銀行の反応が鈍い実情が、イギリスのEU離脱に対する制裁的な意味合いを有しているのか。

 欧州中央銀行の行動は一方でギリシャ支援への資金拠出により資金が枯渇しているのか、という不透明さが指摘されていましたが、ギリシャと共に経済不安が指摘されるイタリアへ総額3990億ユーロのうち4分の1以上の供給されていた、とのこと。ただし、欧州中央銀行はこのほか、国家債務不履行の懸念が続くスペイン支援等を求められており、長期的に視た場合では資金枯渇の懸念は否定できません、最後の貸し手、として安定化へ責任を持つ体制が日本政治に求められるでしょう。

 世界経済危機の回避への主導を日本政府がどのように考えるのか。伊勢志摩サミットにおいて警鐘を鳴らした危惧が、ポンド危機により現実となりましたが、危機の拡大回避という従来の経済危機の対処手法は機能しません、何故ならば、ポンド危機はイギリスEI離脱による経済混乱の最初の序章であり、今後イギリスがEUを離脱し、EUとイギリスの新関係締結が画定されるまで続くのです。故に世界の投資家の間ではリーマンショックとは違う懸念が、と。

 日本外交には静観ではなく関与が求められる。単純に考えた場合で専門分析を受けずともイギリスへの新たな投資は当面不透明過ぎてハイリスクとなる、これが影響の長期化を生む要素となるかもしれません、イギリスに新しい投資を行おうにもその産業がEU域内へ輸出を念頭とするならば、EU離脱と共に関税障壁により阻まれる事となりますので、それならば東欧のポーランドや中欧のハンガリーへ投資した方が良い、となります、イギリス国内向けの輸出、と言いましても今後は深刻な景気後退となりますので、販路を確保できるとは限りません 。

 アメリカの大統領選による外交戦略の変動を視野に、欧州とイギリスの関係を再構築する、トライラテラル外交関係、こちらも日本外交に求められるものとなります。オバマ大統領はイギリスのEU離脱を秩序だった対応の上で進める事を望む、としました、アメリカの反応ですが為替介入や市場の激変というもの以上に英米は安全保障上の関係がNATOとイギリス以上に大きく、これによりイギリスが弱体化する事を避けなければなりません。

 一方でEU脱退について、アメリカがこれまで進めてきました自由貿易の実現という視点からは多少、受け入れる要素があります、関税障壁の撤廃と公正な競争を掲げている為です。ただ、短期的な影響が大きすぎ、これは原則論を単純に掲げただけに過ぎません、しかし日本が放置すれば、EUは介入の距離感を此れから欧州理事会で画定する混乱段階、アメリカは今後大統領選挙により方向性が右往左往、この部分から日本は確たる国際経済の視点から対応が求められることとなります。 これは、単純に話し合いで解決を、と一言で済むような単純なもの代ではなく、各国の指導者と調整し、且つ我が国の精度に適合させたうえで具体的な施策を採る必要があり、この為には政党党首の価値観と世界観、そしてこれらを共有させる調整力が大きく反映されるものです。

北大路機関:はるな くらま
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