北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集【第24回参議院選挙と安全保障】第一回・・・公示日の北朝鮮弾道弾実験と集団的自衛権

2016-06-22 22:43:29 | 北大路機関特別企画
■第24回参議院選挙公示日
 本日、第24回参議院選挙が公示となりました、18日間の選挙戦の始まりです。そこで今回から、第24回参議院選挙と安全保障、としまして様々な視点から考えてみる事としましょう。

 第24回参議院選挙が公示となりましたその当日の早朝0600時頃、北朝鮮が新型弾道ミサイルムスダンの日本海に向けての発射実験を実施、この実験は失敗したとみられますが0900時頃に第二発目の発射、こちらは高度1000kmに到達した後に400km先の日本海海上に落下しました。今回のミサイル実験では北朝鮮は実験に伴う危険海域の宣言を行っていなかったため、高高度からの弾頭部分再突入体試験を行った可能性があり、この視点からは実験が成功している可能性がある。

 今回の参院選の争点の一つは、野党が民主党母体の民進党と共産党が合同して、安全保障協力法制への反対が明確に示されています。ここで新型弾道ミサイルムスダンの発射実験は非常に重要な意味を持つものでして、第24回参議院選挙公示日に重なったこの実験は、弾頭部分再突入体試験を行った可能性を併せ、重要な意味を持つといえるかもしれません。それは、再突入体は弾頭部分の形状を防護するものに当たりますが、これは非常に重要な意味を持つといえるでしょう。

 安全保障協力法制と今回の北朝鮮弾道ミサイル実験ですが、日米の集団的自衛権強化の路線は、特に大きな部分としまして、弾道ミサイル防衛という部分での集団的自衛権行使の必要性と密接に関係している訳です。アメリカのレーダー情報に基づき日本が迎撃ミサイルを発射する、アメリカは東西冷戦時代から宇宙空間にDSP衛星、一定以上の高度へ上昇する弾道ミサイル等飛翔体を検知するシステムが構築されています、ここと日本は連接している。

 DSP衛星情報、仮にアメリカが核攻撃を受ける場合、どの国が発射したかを即座に把握し反撃できる態勢を構築してきましたので、この技術は非常に先進的であり、我が国のミサイル防衛もこのシステムとの連携を念頭に整備されてきました。防衛省による分析の進展が求められるものですが、再突入体は長射程化し速度が増大する事を受け弾頭部分を保護する上で必要な技術であるとともに、日本の安全保障上、非常に懸念すべき命題に繋がる危険な技術を孕んでいる、といえます。

 弾頭部分を保護、HE弾頭のような従来弾頭ではなく変形から防護しなければならない物体、つまり、核弾頭の運搬手段としての実験の側面が高い訳です。再突入体実験は、ムスダン弾道ミサイル以外にも流用可能な技術であり、例えば北朝鮮が射程から対日戦用に位置付けているノドンミサイルを用いた日本本土への核攻撃へも応用できるものであり、安易にこれまでの弾道ミサイル実験と同列に観る事は出来ません。

 日本は冷戦時代、核攻撃という脅威を正面から受け止めてきませんでした。核シェルターを、スウェーデンやフィンランド、スイスなどの永世中立国のように整備してきたならば、核攻撃を含む恫喝に対してもある程度、国家主権を維持しつつ毅然と核恫喝を撥ねつけ、その上で国民の安全を守る事も出来たでしょう、また、核シェルターが十分整備されていたならば、大規模地震や原発事故に対しても国民を防護できたはずですが、整備されませんでした。

 北朝鮮の核恫喝に対しては選択肢は三つ考えられます。第一に現在の自公連立政権が進めている集団的自衛権強化を更に進め日米の弾道ミサイル防衛を強化し核攻撃を跳ね返すというもの。第二に日米集団的自衛権行使を一歩引き、F-2支援戦闘機の増勢やF/A-18E戦闘攻撃機等対地攻撃能力の高い戦闘機や新たにトマホーク巡航ミサイル等を整備し、核攻撃以前に核ミサイルそのものを無力化するという選択肢もあります。

 第三の選択肢としまして、今更ですが全国民が退避可能な一億総核シェルター退避体制を宣言し公共核シェルターを全国に整備する、というもの。第一の選択肢は自公連立政権が進めています、第二の選択肢として航空打撃力を強化しミサイルを撃破、第三の選択肢として一億総核シェルター退避体制の構築、野党連合は民進党、共産党、社民党、共にこの二つを選ぶものではなく、無為無策を代案としています。

 つまり、核攻撃に対しては一緒に死のう、と突き付けているようなもので、視点としては核攻撃の脅威が現実化しても原爆の火球で蒸発する直前まで何も考えず幸せに過ごすという選択肢は哲学的には成り立つものでしょうが、為政者はこの危険を放置しては務まりません。民進党と共産党は、この視点を抜きに、集団的自衛権行使は憲法違反であるとして、平和主義以外の憲法上の権利、生存権や財産権の視点から、今回の命題に向き合おうとしません。

 もちろん、集団的自衛権行使の視点、安全保障協力法制の全文からは、自衛隊による在外邦人救出を、これまで海外で有事に巻き込まれた場合には邦人は自分で運命を切り拓くほかなかった状況を異常であったと素直に認め、自衛隊が救出できる体制を構築しましたし、国際協力活動では世界中の紛争地の安定化に国連が主体となって進める行動に対し、万一を考えてこなかったこれまでの施策の限界を認め、法整備しました。超法規の可能性を排除したものなのですが、云い方によっては海外で戦争をできる国として、つまり海外でも自国民を守れる国という形に変容している事は否定しません。

 ただ、これが立憲主義の観点から否定されるかは議論の余地があり、日本国憲法は国家に平和主義を求めると同時に国民に平和的生存権を認めています、平和主義は軍事的に国家が何もしない要求ですが、平和的生存権は国が国民を戦争の脅威から守るための行動を求めているもので、共に日本国憲法第九条から求められるものです、日本国憲法第九条において平和主義と平和的生存権が矛盾してしまった故の一つの回答としての安全保障協力法制ですので、安易に与党を憲法違反と批判する野党にも憲法違反を進める施策を提示させている、といえるでしょう。

 民主主義の正統性と正当性は選挙が重要な位置を占めるわけですが、その第24回参議院選挙公示日に弾道ミサイルによる恫喝と云わざるを得ない状況、民主選挙をミサイルで恫喝したのはあたかも中国による台湾総統選挙への恫喝、1995年7月21日から1996年3月23日までの台湾海峡ミサイル危機を思い出させるものですが、為政者を目指す政治家は、問題を無視しいざ有事の際には想定外として責任を選挙民の危険に突き返す無策ではなく、国民の平和的生存権を守る施策を、公約として求めたいものですね。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする