北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

尖閣諸島接続水域へ中国海軍ミサイルフリゲイトが侵入、東シナ海での中国海軍行動が活性化

2016-06-09 23:00:00 | 防衛・安全保障
■中ロ艦接近!緊張の沖縄県
 アシガラさんのインパクトある画像とともに北大路機関広報、来週14日0000時から1200時まで12時間、Weblog北大路機関はgooブログメンテナンスにより全て閲覧できなくなります、FC2ブログ第二北大路機関は閲覧できますのでそちらをご覧ください。

 中国海軍のミサイルフリゲイトによる沖縄県尖閣諸島領海の接続水域に初めての航行事案が発生しました、警戒中の護衛艦護衛艦せとぎり、が監視している中、中国海軍の江凱1型ミサイルフリゲイト1隻が9日0050時頃尖閣諸島の久場島の北東接続水域へ進入しました。尖閣諸島近海では事案発生以前の8日2150時頃、ロシア海軍のウダロイ級駆逐艦や補給艦など艦艇3隻が5時間に渡り当該海域周辺を航行しており、中国海軍は続いて接続水域へ浸透、その後0310時頃、久場島の東にある大正島の北北西で接続水域を北上し離脱しました。

 東シナ海での中国による不法行為ですが、尖閣諸島近海において我が国民主党政権時代に顕著化していました。しかし、海上自衛隊の毅然たる行動、海上保安庁による法執行活動強化が進むにつれ、中国の行動は一定以上の、云わば一線を越える事は無く、海警局所属の公船による領海侵犯の常態化へ留まります。その後中国の海洋における不法行為はこの二年間、東シナ海から南シナ海へ移り、ヴェトナム海洋開発への実力妨害、1970年代に軍事力でヴェトナムから奪取した西沙諸島の軍事基地化、1990年代にフィリピンから不法奪取した南沙諸島環礁の埋め立て飛行場化など、継続してきましたのは既報の通り。

 しかし、南シナ海から東シナ海へ中国の行動が転換する軍事的徴候は再発し始めました。アメリカ国防総省報道官は6月7日、中国空軍のJ-7戦闘機2機がアメリカ空軍のRC-135電子偵察機に対し意図的な異常接近行動鵜を実施しています。RC-135は沖縄県の嘉手納基地を基点として周辺地域での電子情報収集を実施、これは公海上へ漏洩する電波情報を収集する任務に当たる事を意味しますが、このRC-135に対しJ-7戦闘機が異常接近、危険な状態であったと抗議する事案が発生したばかりであり、この異常接近事案が中国軍の軍事行動が南シナ海から東シナ海へ転進する徴候ではないかとの危惧を呈じたばかりの時でした。

 今朝未明の江凱1型ミサイルフリゲイトの接続水域浸透ですが、これは中国海軍がこれまで尖閣諸島近海での海軍艦艇行動を控え、海洋法執行機関である海警局所属の公船による領海侵犯などを実施するにとどめてきたためです。その背景には、我が国では国境警備活動を担う海洋法執行機関である国土交通省海上保安庁と、国土防衛に当たる防衛省海上自衛隊との任務区分があり、海警局所属の公船に対しては海上保安庁が対応しますが、海軍艦艇が展開した場合には海上自衛隊が対応するという原則において行動していた為です。

 海軍艦艇の行動は海上自衛隊及び米海軍、航空自衛隊や米空軍と協同しその我が国周辺における行動は長期的に警戒が継続されており、仮に尖閣諸島付近で無い場合でも我が国領域へ接近する事があれば即座の対応を採る体制が継続されています、こういいますのも我が国には世界第二位の航空機数を誇る哨戒機部隊、世界第二位の規模を誇る大型水上戦闘艦部隊が維持されており、中型小型艦艇の規模では中国海軍の後塵を拝するもののその任務対応能力では充分な能力を維持している為です、仮に同様の状況が再発したとしても確実に対応できるでしょう。

 無害通航権、海軍艦艇でも他国の海域に対しては無害通航権を有しています。しかし、無害通航権は必要が求められる場合に艦艇が旗国を明示し通過する場合に限られ、例えば蛇行する場合や停戦する場合には国際法上の国連海洋法条約に基づく無害通行権を主張する事は出来ません。仮に当該艦船が無害通航権を行使できない行動をとった場合、領海侵犯となり自衛隊法に基づく海上警備行動命令が発令されていたでしょう。ただ、海上警備行動命令は今回中国海軍艦艇による接近が接続水域へ留められていた為発令されていません。

 こうした中国海軍の行動に対しては多国間で連携するほかありません、多国間での連携については元来、我がくにでゃ憲法上の制約から他の国々との平和維持への連携を自ら強く制約してきましたが、安全和尚協力法制整備により、限定的ではありますが、平和秩序の維持に対する価値観を共有する諸国との間での防衛協力へ道を開くことが出来ました。平和への多国間での防衛協力は我が国でも少なくない野党が反対していますが、中国との軍事対立へ一国主義を掲げてきた我が国は安全保障協力法制により多国間協調主義へ転換する大きな転換点となりました。

 多国間協調への転換を背景に、海上自衛隊は7日、環太平洋合同演習リムパックへ護衛艦ひゅうが、ちょうかい、哨戒機部隊を派遣しました、部隊は8月まで太平洋地域において多国間での訓練を実施します。このリムパック2016には中国海軍も参加する事となっていますが、海洋自由原則を基調とする価値観の協同諸国が主催する多国間共同訓練です、この枠組みに中国海軍が参加する事は一つの機会でもあり、海洋自由原則の枠組への内部化を図る一つの機会とする事も期待すべきですし、環太平洋諸国が一致して中国へルールを理解できるまで叩き込む機会として我が国も環太平洋諸国の一員としての努力すべきかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (13)
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