医療制度改革批判と社会保障と憲法

9条のみならず、25条も危機的な状況にあります。その現状批判を、硬い文章ですが、発信します。

保険料負担だけが、問題点ではない!

2008年06月08日 | 後期高齢者医療制度

       <後期高齢者医療制度>

   保険料負担だけが、問題点ではない!

 当面、負担増を感じさせない救済措置・経過措置

 後期高齢者医療制度の開始にあたって、政府与党は、昨年の参議院選挙の反省から、当面は「高齢者が負担増を実感しない」ように、減額減免や救済措置・経過措置などを講じてきました。
 しかし、4月15日の年金天引き実施をうけてのマスメディアの報道は、高齢者の年金天引きへの反発や、低所得者への負担増というものでした。そして、その後もひきつづき保険料問題が取り上げられてきています。
 そうしたことから、与党PTは、7割減額を85%減額とするなどの、さらなる低所得者への負担軽減策を発表し、さらに、希望者には年金天引きをやめて、世帯主や配偶者の口座振替に、また、本人の口座振替にも変更することが可能とする方向で、取りまとめがなされると伝えられています。
 昨年の参議院選挙の大敗の原因は、小泉構造改革の結果としての負担増が、幾重にも高齢者に襲い掛かり、猛烈な痛みが実感されたことにあると、政府与党は認識しています。したがって、総選挙を控えていることから、さらなる救済措置・経過措置を上塗りしているのです。

  保険料負担は、近い将来に増大することは必至
 
 
 後期高齢者医療制度の創設により、世帯単位から個人単位での保険料負担となります。
 制度が異なり物差しが違うわけですから、保険料が従前と比較して、増える人もあれば減る人もありますが、全体的には、当面は負担増を感じないように「手立て」がなされています。
 また、新たに保険料負担が発生する被用者保険(政管健保・組合健保など)の被扶養者200万人にとっては、当然のこととして負担が強要されるわけですが、今年の保険料は年間で2,000円程度に抑えられています。
 にもかかわらず、マスメディアの報道は保険料問題を取り上げ、とりわけ低所得者の負担増に、議論を集中させているように思われます。この間のマスメディアの報道は、制度開始にあたって説明が不足であるとか、保険証が届かないなど、瑣末な問題を大きく取り上げ、そして最近の保険料問題の報道も的が外れています。
 保険料の問題を取り上げるなら、経過措置・救済措置によって当面は低く抑えられていても、その措置が終了すれば大きな負担になることを問題にするべきです。
 一例をあげれば、新たに保険料負担が発生する200万人は、今年(08年)は年間2,000円(95%減額)ですが、来年(09年)は20,000円(50%減額)となり、再来年(10年)は40,000円(本来の均等割額)+見直しによる増加額となります。
 そして、この見直しによる増額は、介護保険で経験した通りの引き上げに次ぐ引き上げになることは明らかです。
 それは高齢者のみならず、社会連帯的な保険料として4割相当を負担する若年者も同様です。そうしたことから、「もうこれ以上の負担増には耐えられない」という声を引き出し、高齢者の医療の制限へと誘導が仕組まれています。
 このことの行き着く先として、高齢者にも「さらなる負担増」か「医療の制限」かの選択を迫ることとなり、その選択の結果としての、「医療の制限」が準備されているのです。

 高齢者の医療を受ける権利が制限される

 この後期高齢者医療制度の最大の問題点は、75歳以上の高齢者を一般の健康保険制度から切り離すことにあります。75歳以上の高齢者だけを組織する健康保険が、保険として成り立たないことは、火を見るよりも明らかです。
 保険料引き上げにも限度がありますし、若年者からの不満や反発が出るように仕掛けもあります。そして、その保険料負担増を抑制するためとして、周到に準備されているのが「高齢者への医療の制限」です。
 一般の健康保険とは別建ての診療報酬体系、総合医による主治医制度、後期高齢者診療料、包括診療報酬制など、「高齢者への医療の制限」のための準備がなされています。そして、その制限を超えた医療は自費診療とされ、「混合診療の解禁」が用意されているのです。
 そうした準備は整っていますが、制度批判が強いことから、当面は幌をかぶせて目立たぬようにして、その発動は先送りにすることとしているのです、
  予定されている攻撃の対象は、高齢者にとどまらず、その高齢者への医療給付水準切り下げの攻撃が襲いかかった後には、次なる改悪の矛先が若年者の健康保険(公的医療保険)に向かい、私的健康保険(民間の療養給付型医療保険)に加入しなければ、十分な医療が受けられないという改悪が、襲い掛かってくることもまた、当然のこととして準備されています。
  カタカナ医療保険(多国籍保険金融資本)が、それをビジネスチャンスとして、虎視眈々と狙っているのです。さらに、もう少し正確にいえば、アメリカを根拠地とする多国籍保険金融資本が、米国政府の要望として突きつけ、日本政府をしてそれを実行させようとしているのです。

  高齢者の怒りとマスメディアの報道

 高齢者は怒っています。それは後期高齢者医療の保険料が負担増になったからではありません。マスメディアは負担増と煽っていますが、そのような増減を測る正確な物差しは、高齢者のだれも持っていません。
 老年者控除の廃止、老年者非課税措置の廃止、年金控除の減額、介護保険料の負担増、などなどで猛烈な負担増が襲い掛かり、さらにその上に、後期高齢者医療での保険料が、年金天引きされたことに腹を立てているのです。
 それが従前の保険料と比較して、高いのか安いのか、そのようなことは論外です。なけなしの年金から、さらなる天引きをされたことに憤慨しているのです。この間の負担増への怒りや積年の恨みを、持って行き場のない不満や怒りを、後期高齢者という言い草はケシカラン、年金天引きはケシカランと、息巻いているのです。 
 マスメディアの記者も編集者も、事の本質やその背景は、知っているのだと思っています。
 そのマスメディアが触れない、小泉構造改革のテキストである、「年次改革要望書」は、在日アメリカ大使館のホームページで、今年の分も公表されています。日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書 http://tokyo.usembassy.gov/pdfs/wwwfj-20071018-regref.pdf
 この公然の事実を、追及した政治家は刺客を送りこまれ落選させられる、評論家はマスメディアからシャットアウトされる、記者は訴訟攻撃などにあう、といった事実経過がありました。
 そうしたことから、問題意識を持ちながらも、本質に迫ることは書かずに、当たり障りのない表層的な批判を書きながら、「教唆煽動」をしているのだと思いたいのです。

 今後の報道内容や傾向に、細心の注意をしましょう!

 今週は、参議院での野党共同提案の「後期高齢者医療制度の廃止」法案が可決され、また、与党PTの検討の結果としての、政府与党の「補強・修正案」が発表されることとなります。
 これらをめぐっての報道が、どのように展開されるか注視をする必要があります。自らは書けない・書かないという状況であっても、事の本質を言い表した「姥捨医療制度」などの投稿を、読者の投書欄・意見欄を活用し、事の本質に迫る発言を数多く掲載しています。
 いつまでも、広告主・スポンサーであるカタカナ医療保険(多国籍保険金融資本)に遠慮しての、実態のない「保険料負担の増」という、当たり障りのない報道記事ではなく、事の本質に迫る報道がなされることを、期待しているところです。
  私たちの任務としては、マスメディアが報道しない・できない、記者や編集者がしない・できない発信を、こうしたブログを通じて発信してゆくことが、重要なのではないでしょうか。
 また、そうしたマスメディの動向を監視・注視してゆくことが大切であり、ささやかでも発信を続けてゆく、それ以外に術はない、のではないでしょうか。

                                 2008.06.08 harayosi-2


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