医療制度改革批判と社会保障と憲法

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高額療養費の現物給付スタート

2007年04月05日 | 医療制度

高額療養費の現物給付スタート

 
「入院にかかる医療費負担を、自己負担限度額のみの支払い」で済ませる、高額療養費の現物給付が、2007年4月からスタートすることになりました。  

  現物給付とは 

 
医療費の自己負担分(保険診療の1~3割の一部負担金)を、「証」を提示することによって、それぞれ認定されている「負担限度額」だけを支払う方式を、現物給付と称しています。 
 高額療養費とは、一月当たりの医療費負担が過重にならないように、世帯ごとに負担上限額が定められており、その限度額を超えた負担分について、支給するという健康保険の制度です。 
 病院などで支払いを済ませた後に、その領収証を提示して、払い戻しの申請をするというのが、基本的な手続きの方法です。 
 それを、入院に際しては、「証」を提示することによって、自己負担限度額の支払いで済ませるという、高額療養費の現物給付が、69歳以下の方々にも拡大され、この4月からスタートすることになったのです。  

  認定証の発行
 

 現物給付のための認定証の交付が始まっています。その認定証にもいくつかの種類と区分があります。 
 その1は、「限度額適用認定証」という名称で、適用区分がAもしくはBと表示されています。Aは一定以上所得世帯で、150,000円+(医療費総額-500,000円)×1%の自己負担限度額(月額)の適用であることを示し、Bは一般世帯で80,100円+(医療費総額-267,000円)×1%の適用です。 
 その2は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」です。適用区分はCとなっています。これは非課税世帯に発行されるもので、35,400円の適用で、標準負担額(食事代)を、一食260円を210円に減額するというものです。 そして、長期入院該当に印字・押印があれば、さらに一食160円に減額されます。


  滞納世帯には発行されない

 
国民健康保険では、この認定証が発行されるのは、保険料完納世帯のみとなっています。滞納のある世帯であっても、救済措置として政令で「特別な事情」に該当すれば発行できるとされていますが、そのような煩雑な方法をとらずに、実態的には従来からの方式である「高額療養費の貸付制度」を、利用することになると思われます。
 それは、毎月「負担限度額を認定」し、証明書を発行するという方法です。


多数回該当が表示されない

 
A・B・Cの適用区分の多数回該当(直近1年間で4回目以降)は、それぞれ83,400円、44,400円、24,600円となりますが、そのための表示はありません。したがって、病院はA150,000円+1%、B80,100円+1%、C35,400円を、徴収することになると思われます。
 ただし、長期継続入院患者などで、病院が多数回該当と確認できる場合は、多数回の限度額で処理することも可能とされています。実際の取り扱いは、今後の現場での動向を見極めないと、ハッキリとはしてこないと思います。
 なお、C区分の証「限度額適用・標準負担額減額認定証」にある長期入院該当(直近1年間で90日以上の入院)は、あくまで食事代の減額であり、多数回該当という意味ではありません。(多数回該当の可能性は高いですが…)「標準負担額減額認定証」は、非課税世帯に発行することができますので、滞納世帯であってもこの「減額証」は、発行されます。


   高額療養費の申請

 この現物給付の拡大で、高額療養費の申請(払い戻しの請求)が不要になるとの報道がありました。事実、単発の入院の場合は、事前に認定証を受けておれば、それを示すことによって限度額での支払いになることから、事後の高額療養費の申請は不要となります。
 しかし、上記の多数回該当をはじめ、転院などによる合算処理、同一世帯の合算処理、また、前期高齢者(70歳~75歳未満)との合算などの申請は必要となります。
 単発の入院にかかる申請は減少すると思われますが、難解で複雑な高額療養費の申請と、その事務処理となることが予測されます。


  「証」確認での現物給付が多種多様に


  老人保健法では、高額医療費という名称

 老人医療は1970年代に無料化が進展しましたが、1983年からの老人保健法で、一部負担金が導入され、その後の引き続く改悪で、現在では1~3割の負担となっています。そうした経緯のなかで、一部負担金の限度額が、世帯ごとに定められ、入院などは「高額医療費」の現物給付となっています。
 老人保健法医療受給者証(通称・老健証もしくは老人医療証)を示せば、入院で100万円の治療を受けると、一般世帯の1割負担であれば、10万円の負担であるところを、44,400円の限度額のみの負担となります。
 現役並み所得世帯であれば、3割負担で30万円となるところが、83,400円の限度額負担となります。
 さらに、非課税世帯には「限度額適用・標準負担額減額認定証」が発行され、負担区分の低所得Ⅱは24,600円の限度額と一食210円(長期・160円)となり、低所得Ⅰは15,000円と一食100円となります。


  前期高齢者は老人保健法と同様の取り扱い

 この老人保健法の該当は、従前は70歳からでしたが、小泉医療制度改革で、2002年の10月から、75歳以上とされました。70歳から75歳未満の人たちは、健康保険法の適用とされ、それぞれの健康保険に「丸投げ」されてしまいました。
 費用負担は健康保険としながらも、その取り扱いは、「老人保健法該当者と同様の取り扱いにする」こととされています。
 したがって、老人保健法の医療証に見合うものとして、「高齢受給者証」がそれぞれの健康保険から発行されます。
 さらに、非課税世帯には「限度額適用・標準負担額減額認定証」が発行されています。費用負担者が異なるだけで、それぞれ老人保健法と同様の限度額が適用され、現物給付も同様の取り扱いとなっています。
 ただ、老人保健法該当者と異なる点は、あくまで「高額療養費の給付」であることから、同一世帯の若年者の高額療養費と合算できるという点です。


  老人医療費助成(通称・マル老)


 各自治体の条例に基づく制度で、兵庫県・神戸市を例にとれば、65歳から70歳未満の住民税非課税者を対象とした、老人医療費助成制度があります。
 その該当者には老人医療費受給者証(通称・マル老証)が発行されます。その証には、入院・外来ともに限度額が表示されています。課税世帯は外来12,000円・入院44,400円、非課税世帯の低所得Ⅱは8,000円・24,600円、低所得Ⅰは8,000円・15,000円の表示がなされています。


   福祉医療・公費医療などの証

 このほかに、乳幼児医療証、障害者医療証、母子家庭医療証、高齢障害者医療証、自立支援医療証、特定疾患受給者証、特定疾病受給者証などなど、数え上げればきりがないほどの多くの証があり、それぞれに負担限度額が定められています。
 その証に、限度額が表示されているもの、負担区分が表示されているもの、とりたてての表示がないものがあります。
 そうしたことから、医療機関の窓口での「証」確認が、重要かつ難解な仕事となってきています。
                                                                          2007.4.5 harayosi-2

 


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