医療制度改革批判と社会保障と憲法

9条のみならず、25条も危機的な状況にあります。その現状批判を、硬い文章ですが、発信します。

収入が最低生活費以下の人に課税するのは憲法違反じゃないですか

2008年06月22日 | 税・公租公課


 収入が最低生活費以下の人に、

      課税するのは憲法違反じゃないですか。

 収入が最低生活費以下の人への公租公課の賦課は、憲法の要請(応能負担の原則・最低生活費非課税の原則)に、反しています。

 介護保険制度創設には、数え切れないほどの問題点や、社会福祉・社会保障の理念を根本的に覆す企図があると指摘してきました。
 そうした視点のひとつとして、介護保険の低所得者への保険料賦課の問題や、現在、クローズアップされている後期高齢者医療の保険料問題について、整理してみたいと思います。
 最低生活費に対して、本来、公租公課の賦課は予定されていません。したがって、この間の「税制改悪」で、かなり引き下げられてはいますが、地方税(住民税)を例にとれば、単身の給与生活者100万円、年金生活者105万円、65歳以上の年金生活者155万円、扶養親族が一人あれば、給与生活者156万円、年金生活者161万円、65歳以上の年金生活者211万円と、最低生活費としての非課税限度額が設定されています。
 しかし、介護保険については、その第1段階、生活保護を受けている人、家族全員が非課税で老齢福祉年金を受けている人、また、第2段階、家族全員が非課税で年金収入が80万円以下の人、このどちらも年間28,164円(神戸市の例)の介護保険料が賦課されています。
 さらに、本人は非課税であっても、家族に課税されている人がいれば、第4段階として56,327円(神戸市の例)が賦課されています。
 このように、介護保険制度では、無収入や収入が低く最低生活費以下の人であっても、保険料は課せられています。
 この介護保険での、個人単位での保険制度、保険料の年金天引きとともに、惨い低所得者への負担増などが、後期高齢者医療制度にも引き継がれているのです。こうしたことから、後期高齢者医療の保険料問題がクローズアップされることとなっています。

 大都市の国民健康保険料は、住民税額を算定基準としています。
 
 厚生労働省は、後期高齢者医療の保険料は、高所得者には負担が増し、低所得者には負担が減し、従前の国民健康保険税(料)と比較すれば7割以上の方々が、負担減となっていると発表しています。
 制度が異なり、物差しが違うわけですから、従前に比して負担増になる人も、負担減となる人もあります。
 新たに負担が発生する被用者保険の被扶養者を除けば、全体的な傾向としては、多くの人たちの保険料はわずかですが下がっています。それは、後期高齢者医療の均等割(国保の均等割+平等割に相当)を比較すれば少額ですし、所得割の旧但し書き所得の8%(国保は9%程度)も、料率が下がっているからです。
 にもかかわらずマスメディアは「低所得者に負担増」と報道しています。このことを正確に表現・説明するとすれば、「中小の市町村の国民健康保険税の算定基準が、後期高齢者医療と同じ旧但し書き所得であるのに、大都市では住民税額を基準としていることから、このような事例が生じている。」ということではないでしょうか。
 厚労省推計調査の発表をふまえて、低所得世帯「世帯主177万円以下の年金収入で扶養家族あり」、このモデルで大都市では78%が負担増になると報道されています。
 この低所得世帯を例にとっての報道は、厚労省の発表が間違っていないのと同様に、間違ってはいませんし極めて正当です。
 モデルは211万円以下の年金収入ですから、住民税は非課税です。住民税非課税であれば大都市方式では所得割はかかりません。しかし、旧但し書き所得は(モデルの年金収入177万円-公的年金控除120万円-基礎控除33万円)24万円となり、これに料率をかけたものが後期高齢者医療では、所得割として賦課されます
 大都市では、一般的な夫婦2人世帯で211万円以下は、すべて同様の負担増という結果になります。それは、旧但し書き所得には、扶養家族控除をはじめとするさまざまの控除が、全く反映しないからです。
 この物差しの違いで、極端な負担増になるケースとして、一定の年金収入のある障害者世帯、とりわけ、夫婦ともに障害者という例があります。
 従前の国民健康保険料は、障害者非課税措置により非課税で所得割は賦課されていない、しかし、障害者控除や同居特別障害者控除などの大きな控除額が、旧但し書き所得には反映せず、後期高齢者医療では多額の所得割保険料が賦課されることになり、大変な負担増になっています。

 真正面からの問題提起を、発信してゆくことが必要です。

 厚労省が発表した推計調査で、後期高齢者医療の保険料は「7割が軽減される」を強調したことに対して、マスメディアが、大都市では「低所得者に負担増」などと、部分的なところをとらえて、煽るだけでは不十分だと思います。
 制度が異なり物差しが違うことによって、負担増になる人たちへの救済は、もっと丁寧に取材して、具体的な報道をするべきです。
 マスメディが報道すべきは、応能負担の原則・最低生活費非課税の原則をふまえて、無収入・低収入などの最低生活費以下の収入の人たちには、後期高齢者医療の、介護保険の、国民健康保険の、保険料(税)を賦課するべきではないという、真正面からの問題提起をし、論陣を張るべきだと思います。
 後期高齢者医療、介護保険、国民健康保険の保険料も、憲法上はすべて税にあたります。応能負担の原則・最低生活費非課税の原則をふまえて、最低生活費以下の収入の人たちに課税することは、憲法の要請に反していると、マスメディアが真正面からの報道ができないのであれば、私たちがそれを発信してゆくことが必要だと思います。
 
 第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

   過去記事で、65歳以上の年金生活者 負担増-4 税と憲法
 http://blog.goo.ne.jp/harayosi-2/e/aea1a9f4fa786d47520e420d76fc90c7
というエントリーもあります。これも覗いてみてください。
                                 2008.06.22 harayosi-2


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