医療制度改革批判と社会保障と憲法

9条のみならず、25条も危機的な状況にあります。その現状批判を、硬い文章ですが、発信します。

マスメディアが報道したことだけが見直された

2008年08月09日 | 後期高齢者医療制度

      <後期高齢者医療>

 マスメディアが報道したことだけが見直された

 与党プロジェクトチームの見直し 
 たびかさなる与党プロジェクトチーム(PT)の見直しにより、後期高齢者医療の実務処理にあたる、全国の広域連合事務局をはじめ、市区町村の事務処理は難渋を極めています。
 市区町村窓口には、春から現在に至るまで引きも切らず、多数の高齢者や市民の問い合わせや来庁への対応に追われています。
 この後期高齢者医療の根拠法である高齢者医療確保法は、2006年6月の会期末に、審議らしい審議もなく、小泉政権2度目の医療制度改革関連法案として、一括強行成立させられました。
 しかし、2007年7月の参議院選挙での与党大敗を受けて、新高齢者医療の見直しが与党PTで始まりました。
 マスメディアで報道されたその内容は、新たに負担が生じる被用者保険の被扶養者の問題や新制度移行による負担増というものでした。
 総選挙を前にして、「当面は高齢者に負担増を感じさせない」ことを企図して、新たに負担が生じる方々への9割5分の軽減策をはじめ、国保と後期との両制度に世帯がまたがる場合の救済・軽減などの、救済・経過措置が2007年秋にようやく与党PTで決定しました。
 与党PTの見直し内容がなかなか確定しないことから、厚労省の方針が固まらず、全国の広域連合や市区町村は、準備作業の遅れにやきもきしていましたが、2007年末からやっと新制度への移行に向けての諸準備が進められることになりました。

  マスメディアが後期高齢者医療を取りあげる
 そうした状況から、きわめて短期間での新制度開始に向けての諸準備が進められ、2月には保険料の見込み額の通知が発送され、3月には新保険証の送付などが進められました。
 そうした動きをうけて、マスメディアは制度の説明やPRが不足しているとか、保険証の文字が小さい、保険証が届かないなど、連日の報道がなされましたが、瑣末な問題を取り上げての報道でした。
 内容はともかく連日の報道でしたから、ほとんど知られていなかった後期高齢者医療が、一定程度注目を集めることとなりました。
 そして、4月15日の年金からの保険料天引きについては、高齢者の怒りの声を取り上げ、大々的な報道になりました。こうしたマスメディアの動向に対して、この後期高齢者医療の問題点や本質、その背景などを理解していただくために、
「長寿阻止医療制度」スタートhttp://blog.goo.ne.jp/harayosi-2/e/484050b6270755d34e4f597dd874d297 
後期高齢者医療制度を廃止させるためにhttp://blog.goo.ne.jp/harayosi-2/e/09d8e07217a83813d8341cbc9acd76e7
という記事をエントリーしました。

 各紙一斉に「低所得者に負担増」という記事
 
6月5日、新聞各紙一斉に「低所得者に負担増」という記事が掲載されました。
 それは、後期高齢者医療の保険料は「従前の国保料と比較して低所得者は負担が軽減され、高所得者は負担が増える。全体として7割の方々が負担減となる。」と発表した厚労省に対して、「大都市では低所得者の8割が負担増となっている」という報道がなされたのです。
 「厚労省の発表」も「マスメディアの報道」も、どちらも同じ厚労省の推計資料に基づいたものであり、どちらも間違いというわけではありません。
 しかし、部分的な事例、すなわち大都市の国保料算定基準の違いから起こる事例を、制度全体や全国的なことと誤解させるような記事に疑問を感じました。また、報道の傾向が保険料負担のことに偏りすぎていると感じたことから、
保険料負担だけが、問題点ではない!http://blog.goo.ne.jp/harayosi-2/e/f611215837eb8bb8af4c946f9bfe25d8 
という記事をエントリーしました。

 さらなる与党PTの見直しが6月下旬に確定
 
さらなる与党PTの見直しが、ようやく6月下旬に確定しました。
 その内容は、①保険料の法定減額7割を、9割減額とする。今年は事務処理上、8割5分減額となる。②年金211万円以下の人は、その所得割を5割軽減する。③年金天引き(特別徴収)を、希望により口座振替(普通徴収)とすることを可能とする。という決定でした。
 少し補足すれば、①年金天引きをストップさせるには、事務処理上10月分からとなることから、結果として8割5分減額となります。②211万円以下の控除対象配偶者などのある年金世帯は非課税で、大都市の国保料では所得割はゼロです。③所得のある配偶者や世帯主の口座からの振替も可能となり、社会保険料控除が受けられることとなります。
 7月中旬に、後期高齢者医療の保険料決定通知が送付されていますが、この与党PTの見直しは、時間的な制約から反映していません。
  したがって、変更となる①と②の軽減該当者には、再度8月中旬に決定通知を送付することとなります。また③の口座振替の希望者については、市区町村窓口で受付をしているところです。
 そうしたことから、現在なお市区町村窓口では、問い合わせや来庁者が、引きも切らないという状況が続いているのです。

 公明党の宣伝物を目にする機会がありました
 与党の一員である公明党の宣伝物を、たまたま目にする機会がありました。
 それには、長寿医療制度の必要性を強調しながら、その問題点を見直しすることによって、①約8割の人の保険料負担が下がるか、ほぼ変わりがないこと。②新たに負担が生じる人達(被用者保険の被扶養者)も、わずかな負担とさせたこと。③基礎年金だけの人には9割減額を、210万円程度以下の年金生活者には所得割を50%軽減させたこと。④年金天引きについても、世帯主や配偶者の肩代わりの口座振替も可能にしたこと。などが報告されていました。
 この公明党の宣伝物を見て、この間のマスメディアの不可解な報道、部分的な問題をことさら大きく報道してきた理由について、合点しました。
 高齢者の負担が軽減されることは、大いに歓迎するところですが、このような手法での負担軽減はいかがなものかと感じます。
 いくら支持層からの要望が強い事項であったとしても、マスメディアをして保険料などの部分的な問題を、制度全体的な課題であるかのような報道をさせ、その報道を梃子に与党PTで見直しを決定したとするならば、その手法は非難されるのではないでしょうか。
 経過を振り返ってみれば、マスメディアが大きく取り上げ報道されたことだけが、見直しされたのではないでしょうか。
 マスメディアでは報道されなかった、多大な負担増となっている大都市の障害者などへの手立てはなされていませんし、差別医療といわれる高齢者への医療の制限など、制度の本質的な問題点も見直しされたとはいえません。
 与党PTの合意は、総選挙対策として当面高齢者に負担増を感じさせないための、一時しのぎの上塗りなのであり、近い将来に予測される負担増や、高齢者への医療の制限に、歯止めがかかったとは到底いえません。
 このような総選挙目当ての、小手先の見直しに惑わされること無く、後期高齢者医療の廃止を求めての取り組みを、さらに強めてゆくことが重要であり、かつ必要だと考えます。         

                                                 2008、08、09 harayosi-2

 


2 コメント

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やっぱり・・ (ココロ)
2008-08-10 17:58:35
お久しぶりです!^^
やっぱり、「風」が必要ですね。マスコミの力は凄いですね。ブログの何万倍の力をもっています。でも、塵のようなブログでも集まれば大きな力になる‥ことを信じて書き続けましょう。
それにしても、お年寄りにどれだけの労力をかせたら気が済むんでしょう。バカにするのもほどがありますね。
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テレビ朝日 (新澪)
2008-08-11 10:44:29
後期高齢者医療についてテレビ朝日の司会者が出演者にしつこく、国民は廃止でなく修正を求めていると意見を押し付けている場面をしばしば目にしました。 私の知る限りの方たちは全て廃止すべきと言う意見でした、どこか詐欺まがいの行為をしているように思えます。 詐欺の手法は90%の真実と10%の虚偽でしょうね、うそだけでは人はだませませんから。
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