医療制度改革批判と社会保障と憲法

9条のみならず、25条も危機的な状況にあります。その現状批判を、硬い文章ですが、発信します。

『職員厚遇問題』のその後

2005年09月25日 | 公務員攻撃
 現在なお、職員厚遇問題は新聞紙上を賑わしていますが、これは名指しされている自治体だけの問題ではなく、全国の自治体に関わる問題として、全面展開されています。       
      
  職員厚遇問題の「その後」

1、マスメディアなどの集中砲火をあびていた、職員厚遇問題の「その後」の状況について報告します。
職員厚遇として報道されていた福利厚生制度は、その多くが廃止・見直しされることとなりました。また、長年の労使交渉で獲得してきた諸手当なども、見直し・減額さらには廃止とされてきています。
それは、名指しされていた自治体だけではなく、全国の自治体で同様の見直しや、制度改悪が進んでいます。なぜなら、地方公務員の福利厚生制度は、地方公務員法42条に基づくものであり、その法に基づいて条例化して、実施していることからして、全国すべての自治体に該当します。
名指しの自治体には、「攻撃しやすい条件」があったのでしょうが、その「部分的な行き過ぎ」を最大限に利用し、市民感覚・世間常識という超法規的な口実をつけ、公務員の福利厚生制度を否定するような攻撃が、全国的に現在進行しています。

2、この職員厚遇問題について、医療保障の充実を求める立場から批判したことをふまえて、その立場から「その後」を報告します。
大阪市健康保険組合の保険料の負担割合が、被保険者と事業主との負担割合、
すなわち、労使の負担割合が1対2であったものを、労増・使減などで、今年度の1,5対2を経過措置とし、1対1とされることになりました。大阪府市町村職員共済組合も、同様の経過措置をふみ、1対1となることになりました。
 健康保険法の改悪の中で、政府管掌健康保険の保険料負担割合は、原則労使折半(例外規定あり)とされましたが、健康保険組合・共済組合などには、従前からの経緯をふまえ、例外規定が設けられています。
それは、一定の範囲内で料率や負担割合また独自の給付などを決めることができるという規定であり、そうしたことを充分承知していながら、マスメディアは、職員厚遇というデマ宣伝を展開し、公務員の医療保障制度の水準を切下げるための攻撃をかけてきたのです。
保険料率・負担割合・付加給付などの見直しが、大阪市・大阪府下の自治体のみならず、全国の自治体で進められているのが現状です。

3、さらに、注意をしておかなければならないことは、マスメディアのデマ宣伝のその口実は、健康保険に「公費が3分の2も投入されている」という攻撃であって、労使負担割合が「折半になっていない」ということではない、ということです。当然の事業主負担を、公費を投入しているとして、批判・攻撃しているのです。新聞報道などを注意深く読み返してみても、労使折半になっていないからではなく、公費投入がけしからんとなっています。これは、次なる攻撃をかけるための、伏線とみることができます。

4、社会保障の一体的改革構想の中で、医療、年金、介護、雇用、児童関連などの社会保障諸制度を、『国民保険』なるものに一元化するという、国民保険構想が示されています。多くの問題点を含んでいますが、その中の特徴的なもののひとつが、事業主負担の廃止です。
 民間労働者の社会保険など、その労使負担割合を1対1とさせたこと、そうした改悪実態をテコに、歴史的経緯や法や条例などで守られている公務員労働者に対して、市民感覚・世間常識などという、超法規的な口実でもって、改悪を迫ってきたのです。
 その攻撃の中で、あえて『労使折半』という言葉を使わないのは、国民保険構想でも示されているように、事業主負担を限りなく減少させるための、さらなる攻撃の企図を持っているからだと、看破しておかなければなりません。

5、福利厚生制度の切り捨てが、民間企業のなかで進んできています。例えば、社宅や社員食堂の廃止や外社化・外部委託など、企業内の福利厚生制度の廃止や見直しがさまざまな形で進行してきています。そうした企業の雇用経費負担軽減の攻撃、その全面化・全体化の攻撃として、公務員職場の福利厚生制度を切り下げるために、「職員厚遇問題」キャンペーンがあったといえます。
市職員互助組合は、労使折半で費用負担し、さまざまな福利厚生事業を進めてきました。しかし、『赤字の自治体が職員の福利厚生に税金を支出するのは、市民感情を考えると如何なものか』という議論や、『互助組合であれば職員だけの掛金で運営するべきだ』として、事業主負担は廃止となりました。
これも、全国的に波及するのではないでしょうか。

6、また、憲法改悪に反対する立場からも批判してきましたが、労働者の基本的権利を蹂躙し、労働者への福利厚生制度を否定し、雇用主としての責任、企業の社会的責任、政府の責任を放棄するなど、福祉国家憲法を根底から否定する具体的事実が、現実として進行していること、その一部分を「職員厚遇問題」で見ただけですが、この報告で充分だと思います。
2005・08・23 harayosi-2

コメントを投稿