後期高齢者医療制度を廃止させるために
政府与党の姑息な凍結・見直し
後期高齢者医療制度は、2006年6月に医療制度改革関連法案として、一括強行成立させておきながら、その後の参議院選挙で、政府与党が大敗を喫したことから、与党プロジェクトチームで「凍結・見直し」の議論がなされてきました。
そうしたことから、厚労省の方針がいっこうに定まらず、制度開始に向けての準備が遅れに遅れ、当該の高齢者はもとより、すべての医療機関、全国の広域連合をはじめとする保険者、市区町村などにとって、混乱と困難のスタートとなりました。
難解な保険料の仕組み
保険料の年金天引きや、その負担増などの議論が沸騰していますが、現在の年金天引きの保険料は、あくまで平成19年度所得(18年中の収入)に基づく仮徴収であって、20年度所得(19年中の収入)が6月に確定することに伴い、7月に正式に決定されることになっています。
したがって、年金天引き(特別徴収)の4、6、8月は仮徴収で、正式な保険料決定に基づき、10,12,2月の徴収で調整されることとなっています。
そして、次年度の仮徴収額は2月の徴収額を使用し、4,6,8月の仮徴収と、10月からの徴収で調整するという方式がとられることとなっています。
また、普通徴収(年金天引き以外)の人は、7月の保険料決定に基づき、7月から翌年3月までの9回の徴収となっています。
さらなる見直しで混乱が予測される
高齢者に負担増を、当面実感させないように、さまざまな減額減免措置を後期高齢者医療で実施し、また国民健康保険で予定しています。
しかし、そうした措置がとられても、この間のマスメディアの報道にあるように、年金天引きに加え保険料負担増の問題が、クローズアップされてきています。とりわけ、低所得層の負担増が指摘されています。
そうしたことから、またもや政府与党は、保険料負担の見直しをするという方向での議論を始めています。
7月からの普通徴収で、10月からの特別徴収では、高齢者に負担増を実感させない、そのための再度の見直しが予測されます。それは、さらなる減額減免などの救済制度再構築と予想され、広域連合や市区町村での実務は、難渋を極めるものになると思われます。
制度開始時点での混乱と困難が、再現されるのではないかと心配です。
後期高齢者医療制度廃止を!
衆議院に後期高齢者医療制度の廃止法案が、全野党の共同で提出されていますが、審議されずに放置されています。そうしたことから、野党側は参議院に廃止法案を提出しようとしているところです。
また、社保協(社会保障推進協議会)、保団連(保険医団体連合会)などが、国会への制度廃止の請願署名運動を展開しています。
しかし、衆議院の勢力関係などから、今国会で制度の廃止までこぎつけるには、大変な困難があると思われます。
したがって、こうした運動に加えて、全国の広域連合議会に対して、地方自治法99条の規定に基づく、「制度廃止の意見書」を政府と国会に提出を求める署名運動を展開すべきだと考えます。
また、すでに全国の3分の1の地方自治体議会が、見直しや凍結を求める意見書を提出していますが、これをさらに進展させ、すべての地方自治体議会から、「制度廃止の意見書」の提出を求める署名運動などを、展開することが必要だと思います。
そうした全国的な運動、大衆的な運動を展開することによって、制度廃止への展望が開けてくるのではないでしょうか。
国会内でのたたかいだけではなく、広く国民運動を!
国会内の取り組みだけでは、現在の衆議院での勢力関係から、制度廃止を実現するには困難があると思います。
後期高齢者医療制度の問題点を、保険料負担増や年金天引きだけではなく、75歳以上の高齢者だけを一般から切り離すこと、一般の健康保険とは別建ての診療報酬であること、高齢者の医療を受ける権利が制限されようとしていること、などなど、この制度のもつ悪辣な企図を暴露しながら、全国すべての後期高齢者医療広域連合議会、地方自治体議会から、制度の廃止を求める意見書を、政府と国会に提出させる運動が重要だと考えます。
そうした、全国的で全国民的な運動や、かつて経験したデモや集会(高齢者は経験者)などの大衆行動を展開することによって、また、その延長線上の解散総選挙をたたかうことによって、この制度の廃止を実現することができるのではないでしょうか。
2008.5.11 harayosi-2