法律の周辺

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都立公園の使用許可の取消について

2007-02-27 20:59:03 | Weblog
総連系集会:日比谷音楽堂の使用 都が取り消し指示 MSN毎日インタラクティブ

 集会の自由の制約については,「集会の用に供される公共施設の管理者は当該公共施設の種類に応じ,また,その規模,構造,設備等を勘案し,公共施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであって,これらの点からみて利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらずその利用を拒否し得るのは,利用の希望が競合する場合のほかは,施設をその集会のために利用させることによって,他の基本的人権が侵害され,公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られるものというべきであり,このような場合には,その危険を回避し,防止するために,その施設における集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受けることがあるといわなければならない。そして,右の制限が必要かつ合理的なものとして肯認されるかどうかは,基本的には,基本的人権としての集会の自由の重要性と,当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきである。」と,厳格な審査基準を立てた泉佐野市民会館使用不許可事件最判(H7.3.7)がある。この事案では,危険が具体的に明らかに予見されることを理由としていると認められるなどとして,憲法第21条,地方自治法第244条に違反しないとした。

 他方,ちょっと特殊な事案だが,合同葬の用に供するための公共施設の使用不許可を違法とした事案に上尾市福祉会館事件最判(H8.3.15)がある。こちらは次のように判示した。

 本件会館は,地方自治法二四四条にいう公の施設に当たるから,被上告人は,正当な理由がない限り,これを利用することを拒んではならず(同条二項),また,その利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条三項)。本件条例は,同法二四四条の二第一項に基づき,公の施設である本件会館の設置及び管理について定めるものであり,本件条例六条一項各号は,その利用を拒否するために必要とされる右の正当な理由を具体化したものであると解される。
 そして,同法二四四条に定める普通地方公共団体の公の施設として,本件会館のような集会の用に供する施設が設けられている場合,住民等は,その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので,管理者が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは,憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれがある。したがって,集会の用に供される公の施設の管理者は,当該公の施設の種類に応じ,また,その規模,構造,設備等を勘案し,公の施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきである。
 以上のような視点からすると,本件条例六条一項一号は,「会館の管理上支障があると認められるとき」を本件会館の使用を許可しない事由として規定しているが,右規定は,会館の管理上支障が生ずるとの事態が,許可権者の主観により予測されるだけでなく,客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて,本件会館の使用を許可しないことができることを定めたものと解すべきである。
 2 以上を前提として,本件不許可処分の適否について判断する。
 (一)本件不許可処分は,本件会館を本件合同葬のために利用させた場合には,上告人に反対する者らがこれを妨害するなどして混乱が生ずると懸念されることを一つの理由としてされたものであるというのである。しかしながら,前記の事実関係によれば,b館長が前記の新聞報道によりa部長の殺害事件がいわゆる内ゲバにより引き起こされた可能性が高いと考えることにはやむを得ない面があったとしても,そのこと以上に本件合同葬の際にまで上告人に反対する者らがこれを妨害するなどして混乱が生ずるおそれがあるとは考え難い状況にあったものといわざるを得ない。また,主催者が集会を平穏に行おうとしているのに,その集会の目的や主催者の思想,信条等に反対する者らが,これを実力で阻止し,妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことができるのは,前示のような公の施設の利用関係の性質に照らせば,警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限られるものというべきである。ところが,前記の事実関係によっては,右のような特別な事情があるということはできない。なお,警察の警備等によりその他の施設の利用客に多少の不安が生ずることが会館の管理上支障が生ずるとの事態に当たるものでないことはいうまでもない。


 朝鮮総連の関係団体が集会を行うのは日比谷公園内の大音楽堂で,集会後にはデモ行進も予定されているという。なにがしかの小競り合いはあるかもしれないが,それで直ちに使用許可取消となるのかどうか。拉致問題は分かるが・・・。東京地裁がどのように判断するか,注目したい。


日本国憲法の関連条文

第二十一条  集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2  検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。

地方自治法の関連条文

(公の施設)
第二百四十四条  普通地方公共団体は,住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2  普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は,正当な理由がない限り,住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3  普通地方公共団体は,住民が公の施設を利用することについて,不当な差別的取扱いをしてはならない。

(公の施設の設置,管理及び廃止)
第二百四十四条の二  普通地方公共団体は,法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか,公の施設の設置及びその管理に関する事項は,条例でこれを定めなければならない。
2  普通地方公共団体は,条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて,これを廃止し,又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは,議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。
3  普通地方公共団体は,公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは,条例の定めるところにより,法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に,当該公の施設の管理を行わせることができる。
4  前項の条例には,指定管理者の指定の手続,指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする。
5  指定管理者の指定は,期間を定めて行うものとする。
6  普通地方公共団体は,指定管理者の指定をしようとするときは,あらかじめ,当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
7  指定管理者は,毎年度終了後,その管理する公の施設の管理の業務に関し事業報告書を作成し,当該公の施設を設置する普通地方公共団体に提出しなければならない。
8  普通地方公共団体は,適当と認めるときは,指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。
9  前項の場合における利用料金は,公益上必要があると認める場合を除くほか,条例の定めるところにより,指定管理者が定めるものとする。この場合において,指定管理者は,あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。
10  普通地方公共団体の長又は委員会は,指定管理者の管理する公の施設の管理の適正を期するため,指定管理者に対して,当該管理の業務又は経理の状況に関し報告を求め,実地について調査し,又は必要な指示をすることができる。
11  普通地方公共団体は,指定管理者が前項の指示に従わないときその他当該指定管理者による管理を継続することが適当でないと認めるときは,その指定を取り消し,又は期間を定めて管理の業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。

(公の施設を利用する権利に関する処分についての不服申立て)
第二百四十四条の四  普通地方公共団体の長がした公の施設を利用する権利に関する処分に不服がある者は,都道府県知事がした処分については総務大臣,市町村長がした処分については都道府県知事に審査請求をすることができる。この場合においては,異議申立てをすることもできる。
2  第百三十八条の四第一項に規定する機関がした公の施設を利用する権利に関する処分に不服がある者は,当該普通地方公共団体の長に審査請求をすることができる。
3  普通地方公共団体の長及び前項に規定する機関以外の機関(指定管理者を含む。)がした公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求は,普通地方公共団体の長が処分庁の直近上級行政庁でない場合においても,当該普通地方公共団体の長に対してするものとする。
4  普通地方公共団体の長は,公の施設を利用する権利に関する処分についての異議申立て又は審査請求(第一項に規定する審査請求を除く。)があつたときは,議会に諮問してこれを決定しなければならない。
5  議会は,前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない。
6  公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求(第一項に規定する審査請求を除く。)に対する裁決に不服がある者は,都道府県知事がした裁決については総務大臣,市町村長がした裁決については都道府県知事に再審査請求をすることができる。

東京都立公園条例の関連条文

(使用)
第十八条 有料公園または有料施設を使用しようとする者は,東京都規則の定めるところにより申請し,知事の承認を受けなければならない。
2 知事は,前項の承認に有料公園または有料施設の管理のため必要な範囲内で条件を付することができる。

(監督処分)
第二十四条 知事は,次の各号のいずれかに該当する者に対して,この章の規定によつてした許可若しくは承認(第二十四条の七第二項第二号の規定による承認を含む。以下この項において同じ。)を取り消し,その効力を停止し,若しくはその条件を変更し,又は行為の中止,都市公園を原状に回復すること若しくは都市公園から退去することを命ずることができる。
一 この章の規定又はこの章の規定に基づく処分に違反している者
二 この章の規定による許可又は承認に付した条件に違反している者
三 偽りその他不正な手段によりこの章の規定による許可又は承認を受けた者
2 知事は,次の各号の一に該当する場合においては,この章の規定による許可または承認を受けた者に対し,前項に規定する処分をし,または同項に規定する必要な措置を命ずることができる。
一 都市公園に関する工事のためやむを得ない必要が生じた場合
二 都市公園の保全または都民の都市公園の使用に著しい支障が生じた場合
三 前二号に掲げる場合のほか,都市公園の管理上の理由以外の理由に基く公益上やむを得ない必要が生じた場合

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