法律の周辺

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第1貸付け過払金の第2貸付け残債務への充当について

2007-02-13 16:33:33 | Weblog
過払い金:残債務へ充当、例外的に可能 最高裁が初判断 MSN毎日インタラクティブ

 この時間に判決が公開されるとは (@_@) 。異例の早さである。
第1貸付け過払金の第2貸付けに係る債務への充当の如何についての判断は,次のとおり。

 貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し(以下,この過払金を「第1貸付け過払金」という。),その後,同一の貸主と借主との間に第2の貸付けに係る債務が発生したときには,その貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか,その貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り,第1貸付け過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務には充当されないと解するのが相当である。なぜなら,そのような特段の事情のない限り,第2の貸付けの前に,借主が,第1貸付け過払金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定するということは通常は考えられないし,第2の貸付けの以後であっても,第1貸付け過払金の存在を知った借主は,不当利得としてその返還を求めたり,第1貸付け過払金の返還請求権と第2の貸付けに係る債権とを相殺する可能性があるのであり,当然に借主が第1貸付け過払金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定したものと推認することはできないからである。

差戻審では,「貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていた」かどうかがポイントになる。本件の貸付け回数は2回だが・・・。

 過払金の返還債務に付される利息の如何についての判断は,次のとおり。

 商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,民法所定の年5分と解するのが相当である。なぜなら,商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものでなければならないところ,上記過払金についての不当利得返還請求権は,高利を制限して借主を保護する目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって,営利性を考慮すべき債権ではないので,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできないからである。

高裁は,年6分説を採用する理由として,付加的に,「過払金を営業のために使用し,収益を上げているのは明らか」としていた。

判例検索システム 平成19年02月13日 不当利得返還等請求本訴,貸金返還請求反訴事件


民法の関連条文

(法定利率)
第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,年五分とする。

(弁済の充当の指定)
第四百八十八条  債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において,弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは,弁済をする者は,給付の時に,その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
2  弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは,弁済を受領する者は,その受領の時に,その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし,弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは,この限りでない。
3  前二項の場合における弁済の充当の指定は,相手方に対する意思表示によってする。
(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う。

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条  悪意の受益者は,その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において,なお損害があるときは,その賠償の責任を負う。

商法の関連条文

(絶対的商行為)
第五百一条  次に掲げる行為は,商行為とする。
一  利益を得て譲渡する意思をもってする動産,不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
二  他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為
三  取引所においてする取引
四  手形その他の商業証券に関する行為

(営業的商行為)
第五百二条  次に掲げる行為は,営業としてするときは,商行為とする。ただし,専ら賃金を得る目的で物を製造し,又は労務に従事する者の行為は,この限りでない。
一  賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
二  他人のためにする製造又は加工に関する行為
三  電気又はガスの供給に関する行為
四  運送に関する行為
五  作業又は労務の請負
六  出版,印刷又は撮影に関する行為
七  客の来集を目的とする場屋における取引
八  両替その他の銀行取引
九  保険
十  寄託の引受け
十一  仲立ち又は取次ぎに関する行為
十二  商行為の代理の引受け

(附属的商行為)
第五百三条  商人がその営業のためにする行為は,商行為とする。
2  商人の行為は,その営業のためにするものと推定する。

(商事法定利率)
第五百十四条  商行為によって生じた債務に関しては,法定利率は,年六分とする。

利息制限法

(利息の最高限)
第一条  金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は,その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは,その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合          年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合     年一割八分
元本が百万円以上の場合          年一割五分
2  債務者は,前項の超過部分を任意に支払つたときは,同項の規定にかかわらず,その返還を請求することができない。

(利息の天引)
第二条  利息を天引した場合において,天引額が債務者の受領額を元本として前条第一項に規定する利率により計算した金額をこえるときは,その超過部分は,元本の支払に充てたものとみなす。

(みなし利息)
第三条  前二条の規定の適用については,金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は,礼金,割引金,手数料,調査料その他何らの名義をもつてするを問わず,利息とみなす。但し,契約の締結及び債務の弁済の費用は,この限りでない。

(賠償額予定の制限)
第四条  金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は,その賠償額の元本に対する割合が第一条第一項に規定する率の一・四六倍を超えるときは,その超過部分につき無効とする。
2  第一条第二項の規定は,債務者が前項の超過部分を任意に支払つた場合に準用する。
3  前二項の規定の適用については,違約金は,賠償額の予定とみなす。

「貸金業の規制等に関する法律」の関連条文

(受取証書の交付)
第十八条  貸金業者は,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,内閣府令で定めるところにより,次の各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない。
一  貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所
二  契約年月日
三  貸付けの金額(保証契約にあつては,保証に係る貸付けの金額。次条,第二十条及び第二十一条第二項において同じ。)
四  受領金額及びその利息,賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額
五  受領年月日
六  前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項
2  前項の規定は,預金又は貯金の口座に対する払込みその他内閣府令で定める方法により弁済を受ける場合にあつては,当該弁済をした者の請求があつた場合に限り,適用する。

(任意に支払つた場合のみなし弁済)
第四十三条  貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法 (昭和二十九年法律第百号)第三条 の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払つた金銭の額が,同法第一条第一項 に定める利息の制限額を超える場合において,その支払が次の各号に該当するときは,当該超過部分の支払は,同項 の規定にかかわらず,有効な利息の債務の弁済とみなす。
一  第十七条第一項(第二十四条第二項,第二十四条の二第二項,第二十四条の三第二項,第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第一項に規定する書面を交付している場合又は同条第二項から第四項まで(第二十四条第二項,第二十四条の二第二項,第二十四条の三第二項,第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第二項から第四項までに規定するすべての書面を交付している場合におけるその交付をしている者に対する貸付けの契約に基づく支払
二  第十八条第一項(第二十四条第二項,第二十四条の二第二項,第二十四条の三第二項,第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十八条第一項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済に係る支払
2  前項の規定は,次の各号に掲げる支払に係る同項の超過部分の支払については,適用しない。
一  第三十六条の規定による業務の停止の処分に違反して貸付けの契約が締結された場合又は当該処分に違反して締結された貸付けに係る契約について保証契約が締結された場合における当該貸付けの契約又は当該保証契約に基づく支払
二  物価統制令第十二条 の規定に違反して締結された貸付けの契約又は同条 の規定に違反して締結された貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
三  出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条第二項 の規定に違反して締結された貸付けに係る契約又は当該貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
3  前二項の規定は,貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定に基づき,債務者が賠償として任意に支払つた金銭の額が,利息制限法第四条第一項 に定める賠償額の予定の制限額を超える場合において,その支払が第一項各号に該当するときに準用する。

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