法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

裁判書の誤記について

2006-08-07 18:18:32 | Weblog
実刑1年2月→「1年6月」…判決書誤記で確定 YOMIURI ONLINE

 刑の執行を書面で指揮する際は,裁判書の謄本等の添付を要する(刑訴法第473条)。結局のところ,刑の執行は裁判書の記載に基づきおこなわれることとなる。
裁判書は裁判そのものではない。しかし,上記の事情に鑑みれば,誤記を放置するわけにはいかない。


刑事訴訟法の関連条文

第四百五十四条  検事総長は,判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは,最高裁判所に非常上告をすることができる。

第四百五十五条  非常上告をするには,その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。

第四百五十六条  公判期日には,検察官は,申立書に基いて陳述をしなければならない。

第四百五十八条  非常上告が理由のあるときは,左の区別に従い,判決をしなければならない。
一  原判決が法令に違反したときは,その違反した部分を破棄する。但し,原判決が被告人のため不利益であるときは,これを破棄して,被告事件について更に判決をする。
二  訴訟手続が法令に違反したときは,その違反した手続を破棄する。

第四百五十九条  非常上告の判決は,前条第一号但書の規定によりされたものを除いては,その効力を被告人に及ぼさない。

第四百六十条  裁判所は,申立書に包含された事項に限り,調査をしなければならない。
2  裁判所は,裁判所の管轄,公訴の受理及び訴訟手続に関しては,事実の取調をすることができる。この場合には,第三百九十三条第三項の規定を準用する。

第四百七十三条  裁判の執行の指揮は,書面でこれをし,これに裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本を添えなければならない。但し,刑の執行を指揮する場合を除いては,裁判書の原本,謄本若しくは抄本又は裁判を記載した調書の謄本若しくは抄本に認印して,これをすることができる。

刑事訴訟規則の関連条文

(裁判書の作成)
第五十三条 裁判をするときは,裁判書を作らなければならない。但し,決定又は命令を宣告する場合には,裁判書を作らないで,これを調書に記載させることができる。

(裁判書の作成者)
第五十四条 裁判書は,裁判官がこれを作らなければならない。

(裁判書の署名押印)
第五十五条 裁判書には,裁判をした裁判官が,署名押印しなければならない。裁判長が署名押印することができないときは,他の裁判官の一人が,その事由を附記して署名押印し,他の裁判官が署名押印することができないときは,裁判長が,その事由を附記して署名押印しなければならない。

(裁判書の記載要件)
第五十六条 裁判書には,特別の定のある場合を除いては,裁判を受ける者の氏名,年齢,職業及び住居を記載しなければならない。裁判を受ける者が法人(法人でない社団,財団又は団体を含む。以下同じ。)であるときは,その名称及び事務所を記載しなければならない。
2 判決書には,前項に規定する事項の外,公判期日に出席した検察官の官氏名を記載しなければならない。

(裁判書等の謄本,抄本)
第五十七条 裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本は,原本又は謄本によりこれを作らなければならない。
2 判決書又は判決を記載した調書の抄本は,裁判の執行をすべき場合において急速を要するときは,前項の規定にかかわらず,被告人の氏名,年齢,職業,住居及び本籍,罪名,主文,適用した罰条,宣告をした年月日,裁判所並びに裁判官の氏名を記載してこれを作ることができる。
3 前項の抄本は,判決をした裁判官がその記載が相違ないことを証明する旨を附記して認印したものに限り,その効力を有する。
4 前項の場合には,第五十五条後段の規定を準用する。ただし,署名押印に代えて認印することができる。
5 判決書に起訴状その他の書面に記載された事実が引用された場合には,その判決書の謄本又は抄本には,その起訴状その他の書面に記載された事実をも記載しなければならない。但し,抄本について当該部分を記載することを要しない場合は,この限りでない。
6 判決書に公判調書に記載された証拠の標目が引用された場合において,訴訟関係人の請求があるときは,その判決書の謄本又は抄本には,その公判調書に記載された証拠の標目をも記載しなければならない。

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振り込め詐欺の被害金返還に係る議員立法について

2006-08-07 14:04:14 | Weblog
asahi.com 振り込め詐欺,被害金返還へ議員立法 自民が検討

asahi.com 戻らない凍結口座の金 振り込め詐欺

 被害者のお金が加害者名義の口座に「混入している」と考えれば,取り戻しは簡単そう。
しかし,振り込め詐欺は典型的な誤振込とも事情が異なる。「預金として成立した」と考えた場合,取り戻しにあたっては困難な問題に直面する。
預金契約の法的性質は消費寄託契約(民法第666条) → 受寄者たる金融機関は保管につき善管注意義務を負う(商法第593条,同第4条第1項) → 二重支払を回避したい金融機関としては預金の名義人以外の者からの支払請求には慎重にならざるを得ない(民法第478条参照),からである。

 簡易な被害者救済という意味で記事にある議員立法,要注目である。特に,どのような理屈で被害者への返還をはかるのかには注意したい。

 なお,債権者代位訴訟は,いわゆる法定訴訟担当。民法第423条に基づく債権者代位権は,債権者に対して責任財産保全のために債務者の財産に対する実体法上の管理権を付与するもので,第三債務者に対して債権者自身に給付を求める権能もこれに含まれる。債権者は直接給付を受けることにより事実上優先弁済を受け得ることになる。


民法の関連条文

(債権者代位権)
第四百二十三条  債権者は,自己の債権を保全するため,債務者に属する権利を行使することができる。ただし,債務者の一身に専属する権利は,この限りでない。
2  債権者は,その債権の期限が到来しない間は,裁判上の代位によらなければ,前項の権利を行使することができない。ただし,保存行為は,この限りでない。

(債権の準占有者に対する弁済)
第四百七十八条  債権の準占有者に対してした弁済は,その弁済をした者が善意であり,かつ,過失がなかったときに限り,その効力を有する。

(受領する権限のない者に対する弁済)
第四百七十九条  前条の場合を除き,弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は,債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ,その効力を有する。

(受取証書の持参人に対する弁済)
第四百八十条  受取証書の持参人は,弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし,弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき,又は過失によって知らなかったときは,この限りでない。

(支払の差止めを受けた第三債務者の弁済)
第四百八十一条  支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは,差押債権者は,その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
2  前項の規定は,第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。

(寄託)
第六百五十七条  寄託は,当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって,その効力を生ずる。

(受寄者の通知義務)
第六百六十条  寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し,又は差押え,仮差押え若しくは仮処分をしたときは,受寄者は,遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。

(消費寄託)
第六百六十六条  第五節(消費貸借)の規定は,受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合について準用する。
2  前項において準用する第五百九十一条第一項の規定にかかわらず,前項の契約に返還の時期を定めなかったときは,寄託者は,いつでも返還を請求することができる。

民事訴訟法の関連条文

(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条  確定判決は,次に掲げる者に対してその効力を有する。
一  当事者
二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2  前項の規定は,仮執行の宣言について準用する。

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