![]() | 冥土めぐり |
鹿島田真希 | |
河出書房新社 |
単なる読者にすぎないけれども勝手に師匠と慕っている内田樹さんの「街場の共同体論」(潮出版社)で紹介されていた本です。母親の娘に対する強大な支配力が主題になっている本だそうです。
私もその主題に苦しんでいた娘のひとりです。読んだ後味が重たかった。かせになっている家族の内容は違うけれど、精神に重くのしかかってくる感じは私の家族にあったそれと同じ。父親が不在か存在感が希薄なのも同じ。
これは普遍的なテーマであったんだなあ。
古くはテネシー・ウィリアムズの「ガラスの動物園」、コレット・ダウリングの「シンデレラ・コンプレックス」、柴門ふみの「あすなろ白書」。これは息子だったけど、母親の支配で私の記憶を呼び覚ましてしまった。
この物語の主人公も結婚して、その夫である人のこだわりのない様子から、内面の苦しみをまったく理解されないながらも、そこから離れつつあるのを感じました。小説は終わりを迎えましたが、主人公の苦しみは続くはずだけれども、距離が遠くなりつつあるのがかすかな救いです。
私自身の物語はまだ書けないです。けれども、私も今は、母の影響力の外に、だいぶ外に居れるようになった気がします。