ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書 (中公新書 (252)) | |
中央公論新社 |
この本は、秘書をされている友人から紹介された本です。友人もその上司から、紹介されたそうです。その時もいつか読みたいと思いましたが、そのときは手が出ず。
別のところでまたこの本に触れることがあり、2度も目にしたからには読まねばとようやく手に取りました。
この本、文語体なのです。現代文であれば、行間からにじみ出る文章の著者の息吹を感じられると自負していますが、文語体だとてんでさっぱり。
もっと古文に親しんでいれば良かったと思います。
それでもなお、勢いのある強い文章だと感じました。
触りの、あまりに凄まじい体験のところだけ、ようやく読みました。
江戸時代や、サムライジャパンなどと言って、武士を見直す風潮があると感じていますが、平和ボケしている私のような現代人とは思いもよらない、強い精神力があったのではないかとつくづく思います。その力強さを作っていた何かを感じられるような本と言えます。
柴五郎という人は、会津藩士の子として生まれます。会津若松城落城した時に、退去を拒んだ祖母、母、兄嫁、姉妹の全てを失います。それも自刃によって。
男子は家名を雪げと、戦に役に立たぬ女子は兵糧無駄にするなかれと自ら死ぬというのは、どういう世界観でしょう。
明治元年は1868年なのですね。150年前までは、武士であれば当たり前な世界観の中で、その一族の女性達の死を背負って生きた人の記録の本、読み応えがあります。