goro's 花 Diary

東京の街を彩る花たちを追っかけています。

出藍の誉れ

2009年09月19日 | 09 花たち


今回の花とは先日紹介した「野草の小道」で出会いましたが、一緒には登場させませんでした。

珍しい山野草ということでも無いので、そのうちどこかでいつかは出会うことがあるだろうと、花との関わりが深くなって以来思っていました。
願いが叶って待望の初対面を果たすことが出来ましたのでね、単独で登場願うことにいたしました。

まず花を見ていただきましょうかね。


こちらなんですけどね。

なんだよ、この花なら知ってるよ、「赤まんま」だろうって、そう思われているかた、いらっしゃいませんか?

実際私も、小道をブラブラしていてこちらの花が目に止まったときは、やけに赤っぽいイヌタデだなと思いました。
ここまで赤いものはそう滅多に見られないから、取り敢えずカメラに収めておこうかって、その程度の思いでカメラを向けました。

しゃがみ込んでピント合わせをしようとしたとき、あれ、おかしいぞってね。
イヌタデとは様子が違うことに気が付きました。

葉っぱの形がね、イヌタデとはまったく違っています。
イヌタデの葉はもっと細くて斑点が入っているものが多いんだけど、こちらは幅広だし斑点もありません。

間違いありません。
goro’s 花 Diaryには初登場の、タデ科の新人さんです。

今年はタデ科の新人さんとして、ヒマラヤからやってきた「レッドドラゴン」こと「ペルシカリア ミクロケファラ」を8月の頭に紹介しましたが、それに続く新人さんと出会えるとは、誠に嬉しい限りです。

出会ってしばらくの間は、この新人さんはどなたなんだろうと思いながらシャッターを押していました。
しばらくして、もしかするとあのおかたかな、色々な花サイトでは前から見ていて、いつか出会えるだろうと思っていたあのおかたかな、そうだよあのおかただよ、あのおかたに違いないって、ほぼ確信しました。

確信通りだったタデ科の新人さんを、紹介いたしましょう。


【アイ・藍】タデ科タデ属

藍染めでお馴染みの「アイ・藍」の花です。
日本人なら誰でも知っている藍染めの藍は、可憐なピンクの花を咲かせるんですよ。
(白花もあることは、今回初めて判りました)

「アイ・藍」は「青色」に染める色素をもった様々な植物の総称ですが、狭義というか、単に「アイ」と言うときは、タデ科タデ属の植物を指します。 
タデ科の「アイ」にもいくつかの品種があることも、今回判ったことです。

日本に存在するアイの品種は、「小上粉(こじょうこ) 赤花、白花があり、最も栽培されている」、「小千本(こせんぼん) 青茎、赤茎があり、株が真っ直ぐに育つ」、「百貫(ひゃっかん) 大量に収穫できる事からの名だが、品質は劣ると言われる」などがあるWikipediaより)

30品種以上あるらしいですよ。
今回出会ったアイは、「小上粉(こじょうこ)」と呼ばれる品種でしょうね。
葉っぱも、長いの広いの丸いの卵型など、多様です。
もしかしたら今回のものは、「マルバアイ・丸葉藍」という品種かもしれません。
どちらにしても藍染めに利用されるアイに違いはありませんのでね、「アイ・藍」で差し支えありませんよ。


「アイ・藍」はインドシナや中国南部など東南アジア原産の1年草で、日本には飛鳥時代以前に、染料や薬草として中国経由でやってきました。
染色法も同時に導入されています。

江戸時代には日本各地で栽培されていましたが、阿波(徳島)で藍染めの技術が発達したことで、徳島は一大産地になりました。
明治になって「青」の含有量の多いインドアイが輸入されるようになり、その後は合成染料が一般的になり、アイの栽培は激減しました。
近年、自然素材に対しての評価が高まり、手作りの草木染め愛好者の増加や、環境に配慮したエコブームもあいまって、各地で天然藍の復活が見られるようです。

天然藍の加工は複雑で、微妙な技術と職人の「感」が必要とされています。

春に播種し、夏7月頃に刈り取った藍草の葉を乾燥させ、室に寝かせて水を加えて醗酵させ、これを乾燥しあるいは搗き固めて、藍または玉藍として保存する。
染液を作るには、藍または玉藍を藍甕へ入れ、アルカリ(灰汁または石灰)、水、および醗酵助剤として砂糖などを加え、40℃位に加熱しておくと発酵作用によって液中に還元酵素ができ、この作用で藍の葉に含まれた青藍が白藍となる。
これに布や糸を浸し取出して空気に曝すと白藍が酸化されて青い色が染着する。(新潮世界美術辞典)

植物の「藍」が、面倒なプロセスを経て藍染めの染料として染色されているということが、大まかなところはこの説明で判りますよね。

「アイ・藍」の名前の由来は、藍色染料の材料として栽培されたことから「青色(アヲイロ)」が略されて「アイロ」となり、そこから「アイ」になったとか、単に「青(アヲ)」が転訛したとか、植物の内部に青い汁が「居る」との意味の「青居(アオヰ)」からきているなどの説が言われれています。

「タデアイ・蓼藍」と呼ばれることもあります。


「青は藍よりいでて藍よりも青し」との慣用句は有名ですよね。
荀子による「勧学篇」のなかに書かれている言葉で、弟子(子)が師(親)よりも優れていることの喩えです。
青い色は藍から作り出すが、元の藍よりも鮮やかな青色をしていることに因みます。
出藍の誉れ」とも言われます。 


そう言えば「藍より青く」っていうNHKの朝ドラがありましたよね、真木洋子主演の。
大和田伸也がブレークしたのもこのドラマです。
本田路津子が歌ったドラマの主題歌、「耳をすませてごらん」は大ヒットしました。

♪耳をすませてごらん~~ のフレーズで始まる透明感のある高音が、耳に残っています。

ドラマは天草が舞台だったと記憶していますが、タイトル言うところの「藍より青く」は、「何」が「藍より青」かったんでしたっけ?
天草の海のことでしたっけ?