goro's 花 Diary

東京の街を彩る花たちを追っかけています。

百合の女王様

2008年07月31日 | 08 花たち



【ヤマユリ・山百合】ユリ科ユリ属

山にあるユリだから「ヤマユリ・山百合」。
直球ど真ん中の名前です。

「ヨシノユリ・吉野百合」 
「エイザンユリ・叡山百合」 
「ホウライジユリ・鳳来寺百合」 
「トウノミネユリ・多武峰百合」 
「カマクラユリ・鎌倉百合」 
「ハコネユリ・箱根百合」 
「カントウユリ・関東百合」 
「キツネユリ・狐百合」 
「シロユリ・白百合」 
「スジユリ・筋百合」 
「コウユリ・香百合」 
「ニオイユリ・匂い百合」 
「リョウリユリ・料理百合」

いやいや、ありますね色々な呼び名が。
いかに愛されたかの証でしょうね。

ヤマユリの花、自分では見た気になっておりましたが、実際出会ってみて、初めてだということに思い至りました。
写真や映像などで見ておりましたのでね、その気になっていたようです。
ひょっとしたら鉢植えくらいならとも思ってみましたが、少なくともこんな大きなものを見たのは初めてです。

おじさんにとって前回紹介した「オニユリ」の対極にあるのが、こちらの「ヤマユリ」といっていいかもしれません。

山ユリには赤色のものだけじゃなく(オニユリのことを、ときに山ユリと呼んでおりました)、白いものがあるらしいということを、少年時代のいつの日かわかっていました。
テッポウユリのように花壇に植えられている白いユリではなく、山にわけ入ると、自生してる白いユリと出会う光景は、想像するだに心躍ります。
以来、ヤマユリの咲く風景は、あこがれの対象になっておりました。

昨年のオニユリの記事中にも、宇和島には白色系のユリは自生していなかったことは書きましたが、間違いではなかったことが判明いたしました。

ヤマユリは日本特産で、東北から近畿にかけての地域に分布しています。
自生地は意外と狭いですね。
そのなかでは、特に関東地方に多くの自生地があるんだそうです。
ただ近年、自生地での個体数が減ってきているようですね。
里山を初め山林の荒廃などが一因と考えられますが、他の野草たち同様、心ない誰かによる盗掘がいちばんの原因です。

四国には、ヤマユリは自生していないことになりますね。
妙に安心しちゃうのは、何故でしょうか。

ヤマユリは日本の固有種だということはすでに述べています。
山野に自生するユリのなかでは一番の大型で、直径15~20cm、30cmを越えるものもあるようです。
草丈は1~1.5mほどになり、枝分かれすることのない一本の花茎の先端に、1~10個の花を付けます。
20個もの花が確認されたこともあるそうですよ。

細い茎の先端に大きな花をたくさん付けますのでね、写真でもお分かりのように、花の重みで傾いでしまいます。
今回およそ15株ほどのヤマユリと出会ったのですが、すべてが傾いでいました。
花が地面にくっついちゃうんじゃないかと思えるもの、多数ありました。
山肌の斜傾地で咲いていればそれほどでもなかったのでしょうが、平坦地ですのでね、なんだか気の毒な気がしました。

香りが強いのもヤマユリの特徴です。
山中を歩いていると甘い香りが漂ってきて、香りに導かれて藪を進むと、ヤマユリの花に辿り着くといわれるくらいの、濃密な甘い香りがします。

ヤマユリをもとに改良された「カサブランカ」の香りなら、思い当たるかたもいらっしゃるんじゃありませんかね。
香りといい大きさといい花数の多さといい、カサブランカは、ヤマユリの遺伝子をしっかり受け継いでいます。
太い茎で支えられたカサブランカは、花の重みで傾ぐことはありませんけどね。

1883年のウィーン万博でヤマユリなど日本の固有種のユリたちがヨーロッパに紹介されるやいなや、驚嘆は賛嘆にとってかわり、大注目を浴びることになりました。
以来、ユリの球根は外貨獲得に貢献したんだそうですよ。

現在、栽培品種の母体として、ヤマユリならずともカノコユリなども含め、日本のユリたちは新しい品種を産み出すのに、絶大な貢献をしております。
日本のユリがなかったら、ここまでの園芸種は生まれなかっただろうことは、決して大袈裟な話ではありません。

世界中に進出していった日本のユリたちですが、なかでもヤマユリは、「ユリの王様」とも「ユリの女王様」とも讃えられています。


ノッポの百合

2008年07月30日 | 08 花たち


「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」とは美人を形容する慣用句です。
この言葉、いまの若い人には通じないんですってよ。
「芍薬」がわからない人が多いようです。
goro’s 花 Diaryでも、シャクヤクは登場したことありませんね。

まあ、それはともかくとして・・・
今回はユリの話です。

かくほどに昔から美しさを謳われるユリの花ですが、立ち姿こそ美しいのではないかと、前々から思っております。
象徴としての言葉だとは承知しても、どうしても違和感があるんだよね。
同じく動作を示す「立つ」「座る」とは違って、「歩く」には動きがありますからね。

そもそも歩く姿を花に譬えるのは、無理なんじゃないでしょうか。
例えばです、椿のように、梅のように、桃のように、桜のように、薔薇のように、菖蒲のように、朝顔のように、向日葵のように、秋桜のように、菊のように歩く人、周りにいらっしゃいますか?
想像力をフル稼働しても、悲しいかな、歩く姿を喩えるならこれだという花を導き出すことは出来ません。

華やかだし涼やかだし、それでいて気品はあるし、ユリは夏を代表する一花だなとつくづく思います。
今年はすでにユリの花たちを紹介しておりますが、各種園芸種は年毎に新しい品種が作られております。

数あるユリの花のなか、おじさんにとってのユリの花は、鬼百合につきるということを再認識する日々です。
浮気心があったことは否定しませんが、幼少期に馴染んだ花は、やっぱり強いですよね。
結果、落ち着くところに納まった感があります。


【オニユリ・鬼百合】ユリ科ユリ属

思い入れのある花ですので、咲き始めを見かけると、つい反応してしまいます。

オニユリとおじさんの関わりをなど、詳細については昨年の記事、「鬼のいる街」をご参照ください。


花びらをそっくり返し、
折りたたむように包み込む姿は、
なんとも可愛いです。


ムカゴがあるのがオニユリ、
無しがコオニユリです。


田舎にいた頃にも見たことの無いような、立派な株に出会いましたよ。
ほぼ2mほどの高さがありました。
自分の背丈より大きなオニユリを見たのは、初めての経験です。

驚き、感激!


多摩川からのご褒美

2008年07月29日 | 08 花たち


多摩川で出会った花たち、こちらの紹介が最後になります。

なかなか素敵な風景でしょう?
一本樹って何故だか魅力があるものですが、だからといってそれが「絵」になるかどうかは別問題です。
上によりも横に大きく広がっる樹木って、日本ではなかなかお目にかかる機会が少ないんじゃないかって、そう思います。
この木は大きく枝を広げて、土手の斜面に涼しげな日陰を作ってくれています。
夏の河川敷だと、オアシスそのものです。

ところで、この木、何の木だと思いますか?

ネムノキなんです。

待望のネムノキとの出会いをレポートしたとき、もう少し大きな木だったらもっとよかったのにと、本音がでちゃったおじさんでした。

今回このネムノキとの出会いにはね、多摩川が用意してくれたご褒美だと、そう思いました。
蒸し暑い中、自転車を漕いでやってきたおじさんへのね。
ここであなたを待っておりましたよって、そう囁きかけてくれました。

ネムノキの根は、いわばゴボウみたいに地中に伸びていくんだそうです。
枝分かれしない根は、四方八方に伸びて地上部の幹を支えるタイプではないので、樹形がなかなか整わないことが多いらしいですよ。
このくらい美しい樹形になるには、根が太く深く育つ長い時間が必要だったことでしょうね。


【ネムノキ・合歓木】マメ科ネムノキ属

ネムノキは夜咲く花だということを知ったばかりでしたのでね、萎れた花を見てもガッカリすることはありません。
花の命の最終場面ですのでね。これも愛でてやりましょう。

午後2時半の出会いです。

この一輪は伸びたシベが残り、微妙な姿を見ることができました。

蕾の数も残り少なくなっておりましたのでね、ネムノキの花たち、今年はそろそろお終いですかね。

こちらの2枚は、駒場の街角で咲いていました。
1mほどの鉢植えの木です。

一般にネムノキは、ある程度本体が育たないと開花しないそうなので、こんなに細くて低い樹高で花が咲くのは、「一才ネム」という品種だと思われます。
「一才ネム」は幼木から花を多数付け、鉢植えにはもってこいの品種で、流通時には「ネムノキ」と名乗っていることが多いようです。

おじさんが今まで出会って花を撮影してきた鉢植えの「ネムノキ」は、ほぼすべてが「一才ネム」だったのかもしれませんね。


ネムノキの仲間たちを、ここで紹介しておきましょう。


【オジギソウ・お辞儀草】マメ科オジギソウ属

ブラジル原産で、日本へは江戸時代後期にオランダ船によって持ち込まれたといわれている(Wikipediaより)。

葉に触れたり、振動を加えると、瞬く間に葉を閉じてしまい、葉柄までもが垂れるのを、お辞儀をしている様に見立てたのが、「オジギソウ・お辞儀草」の名前の由来です。

「ネムリグサ・眠り草」、「ガンシュウソウ・含羞草」の別名もあります。
 


【ヒネム・緋合歓】マメ科カリアンドラ属

テキサスやカリフォルニアなどアメリカの中南部やメキシコが原産地の、常緑低木です。
ネムノキのような大木にはなりません。
おじさんが見た中では2mほどのものもありましたが、せいぜいが1,5mほどと言われています。

「ヒネム・緋合歓」も、別名の「ベニゴウカン・紅合歓」も、「赤い花の合歓」が名前の由来です。

耐寒性に難があるので、鉢植えで育て、冬場は室内へとの記述が見かけられますが、こちらでは直植えのものをよく見かけますよ。
この冬はさすがに寒かったので見ませんでしたが、年によっては正月明けにも花が咲いていることがあります。


焼肉とのつながり

2008年07月28日 | 08 花たち


この花も多摩川行で出会った花です。

出会ったはいいが、このおかたの正体に辿り着けるかどうか・・・
いささか不安を持っての出会いでした。
花茎の先端で咲いてる総状花序はワスレナグサの仲間を彷彿とさせ、青い小さな花はオオイヌノフグリとそっくりなんです。

「ワスレナグサ」と「オオイヌノフグリ」、ふたつの植物をキーワードにして検索を続けた結果、少々、かなり手間取りはいたしましたが、なんとか辿り着くことが出来ました。


【オオカワヂシャ・大川萵苣】 ゴマノハグサ科クワガタソウ属

ヨーロッパからアジア北部が原産の多年草です。
河川など湿り気の多い場所で生育し、日本各地に帰化しており、06年に「特定外来生物」の適用を受けています。
在来種の「カワヂシャ」(未見です)と生育場所が競合し、勢力を拡大させ、生育場所を奪い、駆逐するにいたり、そのせいで「カワヂシャ」は準絶滅危惧種に指定されるにいたったんだってさ。
外国からやってきた同属の植物に在来種が追いやられるということが、ここにも起きていましたよ。

その上に、カワヂシャとオオカワヂシャとの交雑種の「ホナガカワヂシャ・穂長川萵苣」まで誕生し、在来種の生態系を乱す遺伝的攪乱という、由々しき問題を引き起こしているんだそうです。

1867年に神奈川県相模で採集されたのはわかっておりますが、渡来時期は不明とされています。
黒船とともにやってきたんじゃないかとは、おじさんの推測です。

オオイヌノフグリと花が似ていますでしょう?
それも道理、ゴマノハグサ科クワガタソウ属の仲間たちでした。

在来種の「カワヂシャ」より、全体(花も葉も株も)が大きいので「オオカワヂシャ・大川萵苣」と名付けられました。

「カワヂシャ」とは「川の萵苣(ちしゃ)」、「チシャ・萵苣」とは「レタス」のことです。

チシャは平安時代には栽培されていたとの記録がありますので、日本人にとっては古来より馴染み深い野菜だったんですね。
それが明治になってサラダ菜が、戦後にレタスが導入されたことですっかり身を潜めていたチシャが、高度成長に歩を合わせるように牛肉食が一般化し、いまや国民食ともいえる焼肉の普及とともに、「サンチュ」と改名して復活しました。

そうなんです、焼肉屋でお馴染みの「サンチュ」は、「チシャ」の韓国名です。

サンチュをひろげて辛味噌を塗り、ごはん少々(これ肝腎)、焼肉を乗せて折りたたむように包んで食べると、美味しいんだよね。
キムチを加えるかどうかは、好みになっちゃいますね。
おじさんは、キムチな別に食べる派だな。

そういえば、焼肉食ってねえな。
歳のせいか、牛肉を食べたいと思わなくなったんだよな。


普段レタスと言ってる球状のものは、和名だと「タマヂシャ・玉萵苣」です。

ということで、「オオカワヂシャ・大川萵苣」とは「川に生えているレタスの大きいもの」という意味になります。
こんな意味付け、いりませんけどね。

ただここにも誤解を生じるようなことがあります。
「チシャ」とは名乗っておりますが、「チシャ」はキク科アキノノゲシ属、「カワヂシャ・オオカワヂシャ」はゴマノハグサ科クワガタソウ属と、両者には縁も所縁もありません。

どちらも葉っぱが食用になるのが、共通事項というくらいですかね。


河原者

2008年07月27日 | 08 花たち



【カワラサイコ・川原(河原)柴胡】バラ科キジムシロ属

多摩川で出会った花です。
goro’s 花 Diary、初登場になります。
前回紹介した「マツカサアザミ」とは、「サイコ」で繋がっちゃいました。

ごく最近、カワラサイコの名前がnoodlesさんのブログ上で話題になっていました。
おじさんにとっては2年越しで名称不明の花がありましてね、その花が、カワラサイコに似ているのですよ。
その花は、あとでアップします。

そんなことがあった直後に出会いましたのでね、あまりの間の良さに、ついニタッと笑っちゃいましたよ。

日本(本州、四国、九州)、中国、朝鮮半島、ロシア(アムールウスリー)など、極東アジアに分布する多年草です。
名前からもわかるように、日当たりのいい河原や海岸などの砂地で生育します。

ときに50cmを越えるくらいに枝を伸ばすこともあるようです。
黄色い花は、2cmほどの大きさです。

全国的に減少しているようで、県によっては絶滅危惧種に指定して、保護活動を続けているところもあるようです。


こんな風に細かく分かれたものを、羽状複葉というそうです。

「カワラサイコ・川原柴胡」の名前は、「川原に生育する柴胡に似た植物」という意味になりますかね。

マツカサアザミの別名の「マルバノヒゴタイサイコ・丸葉の平江帯柴胡」は、茎葉がサイコに似ていることから名付けられましたが、ここでいう「サイコに似ている」のは、太い根のことなんだそうです。
生薬の「ミシマサイコ」は黄褐色をした太い根を解熱、鎮痛薬として利用するそうですが、「カワラサイコ」の根も「紅柴胡(こうさいこ)」と呼び、解熱通経薬などとして使用するそうです。

この春にキジムシロの花との出会いがありましたが、それに続く「キジムシロ属」です。
とにかくキジムシロの仲間たちは、花がとてもよく似ています。
花だけだと見分けるのは難しいです。
葉っぱの違いで同定するのがいちばんだそうです。

開花の時期が他のキジムシロ属より遅いのも、カワラサイコの特徴です。


こちらが問題の名称不明花です。

花色、大きさ、姿と、すべてがキジムシロ属やヘビイチゴ属の花に似ているんですよ。

キジムシロやカワラサイコとの決定的な違いは、こちらの葉っぱです。

今回検索を続けているうちに、バラ科キジムシロ属の「アボイキンバイ」という花に辿り着いたのですが、葉っぱは似ているように見えるんだけど、高山植物のようですしね。
まさかね、高山植物だなんてね、ありえないでしょう。
こちらは園芸種っぽいんだよね。

こちらの花のことがわかるかた、いらっしゃいませんでしょうか。