【ヤマユリ・山百合】ユリ科ユリ属
山にあるユリだから「ヤマユリ・山百合」。
直球ど真ん中の名前です。
「ヨシノユリ・吉野百合」
「エイザンユリ・叡山百合」
「ホウライジユリ・鳳来寺百合」
「トウノミネユリ・多武峰百合」
「カマクラユリ・鎌倉百合」
「ハコネユリ・箱根百合」
「カントウユリ・関東百合」
「キツネユリ・狐百合」
「シロユリ・白百合」
「スジユリ・筋百合」
「コウユリ・香百合」
「ニオイユリ・匂い百合」
「リョウリユリ・料理百合」
いやいや、ありますね色々な呼び名が。
いかに愛されたかの証でしょうね。
ヤマユリの花、自分では見た気になっておりましたが、実際出会ってみて、初めてだということに思い至りました。
写真や映像などで見ておりましたのでね、その気になっていたようです。
ひょっとしたら鉢植えくらいならとも思ってみましたが、少なくともこんな大きなものを見たのは初めてです。
おじさんにとって前回紹介した「オニユリ」の対極にあるのが、こちらの「ヤマユリ」といっていいかもしれません。
山ユリには赤色のものだけじゃなく(オニユリのことを、ときに山ユリと呼んでおりました)、白いものがあるらしいということを、少年時代のいつの日かわかっていました。
テッポウユリのように花壇に植えられている白いユリではなく、山にわけ入ると、自生してる白いユリと出会う光景は、想像するだに心躍ります。
以来、ヤマユリの咲く風景は、あこがれの対象になっておりました。
昨年のオニユリの記事中にも、宇和島には白色系のユリは自生していなかったことは書きましたが、間違いではなかったことが判明いたしました。
ヤマユリは日本特産で、東北から近畿にかけての地域に分布しています。
自生地は意外と狭いですね。
そのなかでは、特に関東地方に多くの自生地があるんだそうです。
ただ近年、自生地での個体数が減ってきているようですね。
里山を初め山林の荒廃などが一因と考えられますが、他の野草たち同様、心ない誰かによる盗掘がいちばんの原因です。
四国には、ヤマユリは自生していないことになりますね。
妙に安心しちゃうのは、何故でしょうか。
ヤマユリは日本の固有種だということはすでに述べています。
山野に自生するユリのなかでは一番の大型で、直径15~20cm、30cmを越えるものもあるようです。
草丈は1~1.5mほどになり、枝分かれすることのない一本の花茎の先端に、1~10個の花を付けます。
20個もの花が確認されたこともあるそうですよ。
細い茎の先端に大きな花をたくさん付けますのでね、写真でもお分かりのように、花の重みで傾いでしまいます。
今回およそ15株ほどのヤマユリと出会ったのですが、すべてが傾いでいました。
花が地面にくっついちゃうんじゃないかと思えるもの、多数ありました。
山肌の斜傾地で咲いていればそれほどでもなかったのでしょうが、平坦地ですのでね、なんだか気の毒な気がしました。
香りが強いのもヤマユリの特徴です。
山中を歩いていると甘い香りが漂ってきて、香りに導かれて藪を進むと、ヤマユリの花に辿り着くといわれるくらいの、濃密な甘い香りがします。
ヤマユリをもとに改良された「カサブランカ」の香りなら、思い当たるかたもいらっしゃるんじゃありませんかね。
香りといい大きさといい花数の多さといい、カサブランカは、ヤマユリの遺伝子をしっかり受け継いでいます。
太い茎で支えられたカサブランカは、花の重みで傾ぐことはありませんけどね。
1883年のウィーン万博でヤマユリなど日本の固有種のユリたちがヨーロッパに紹介されるやいなや、驚嘆は賛嘆にとってかわり、大注目を浴びることになりました。
以来、ユリの球根は外貨獲得に貢献したんだそうですよ。
現在、栽培品種の母体として、ヤマユリならずともカノコユリなども含め、日本のユリたちは新しい品種を産み出すのに、絶大な貢献をしております。
日本のユリがなかったら、ここまでの園芸種は生まれなかっただろうことは、決して大袈裟な話ではありません。
世界中に進出していった日本のユリたちですが、なかでもヤマユリは、「ユリの王様」とも「ユリの女王様」とも讃えられています。