出版は2005年である。タイトルに、ナナメ読み日本文化論 とあり、表記が副題になる。さてその名著25冊がどのようなものであるか、アマゾンのストアでKindle版を見るかどうか。コピーによれば、100字要約であるらしい。コメントのレビューが殿堂入りのものとあって、おもしろかったので、それを紹介する。
ここで、見ていくと、アマゾンページには、もう一つの著者の書、その紹介があって、その方は監修で名前を知る、日本文化論の名著入門 (角川選書) Kindle版 大久保 喬樹 となる。それには、2005年刊行書について、>日本文化論の系譜―『武士道』から『「甘え」の構造』まで (中公新書) 大久保 喬樹 と、どうちがうのかを、広告の段階ではっきりさせてほしい。 というカスタマーの声がある。それで、すこし検索して、その取り上げた書名がわかる。どうも、名著25冊の関連も、ここにあるらしいので、さらに見てみよう。
作品名:
日本風景論
武士道
茶の本
遠野物語、山の人生
古代研究
雑器の美、美の法門
風土
「いき」の構造
陰翳礼賛
美しい日本の私
日本文化私観、堕落論
縄文土器ー民族の生命力
日本の思想
「甘え」の構造
角川選書の宣伝ページを見ると、次の内容である。
日本文化論の真髄を名著に探る。やさしくわかる教養入門。
新渡戸稲造の『武士道』、ルース・ベネディクトの『菊と刀』等、明治から戦後の日本文化を論じた内外の名著を精選。日本と日本人の深層に迫った思想の要点を平易に解説した、日本文化理解のための入門書。
〈目次〉
はじめに
1 外からの日本発見
ピエール・ロチ『秋の日本』(一八八九年)
ラフカディオ・ハーン『知られざる日本の面影』(一八九四年)
『こころ』(一八九六年)
2 世界に向けて日本を発信する
新渡戸稲造『武士道』(一九〇〇年)
岡倉天心『東洋の理想』(一九〇三年)『茶の本(一九〇六年)』
3 民俗文化の古層を求めて
柳田国男『山の人生』(一九二五年)ほか
折口信夫『古代研究』(一九二九年─三〇年)ほか
4 日本文化哲学の創造
西田幾多郎『善の研究』(一九一一年)ほか
和辻哲郎『風土』(一九三五年)
九鬼周造『「いき」の構造』(一九三〇年)
5 さまざまな美意識
柳宗悦『雑器の美』(一九二六年)
谷崎潤一郎『陰翳礼讃』(一九三三年)
ブルーノ・タウト『日本美の再発見』(一九三九年)
6 伝統への反逆と革新
坂口安吾『日本文化私観』(一九四三年)
岡本太郎『縄文土器──民俗の生命力』(一九五二年)
7 近代西欧社会モデルか伝統日本文化か
ルース・ベネディクト『菊と力』(一九四六年)
丸山真男『日本の思想』(一九六一年)
土居健郎『「甘え」の構造』(一九七一年)
あとがき
引用文出典および関連書一覧
コメント レビュー
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『日本文化論』関連図書の趣旨・要旨の評論付き解説書.
投稿者LAW人殿堂入りNO1レビュアーベスト50レビュアー2015年4月5日
形式: 単行本
本書はその副題『名著25冊で読み解く日本人のアイデンティティ』から類推できるように、『日本文化論』自体を論じたものではなくて、取り上げたトピックが『名著』であるか否かは別論として、明治から現代までの著名な人物・書籍の大筋を解説しつつ、本書の著者の論評も適宜加えると言う、端的には『日本文化論』に関する著書の“書評”と言って良いと思う。『日本文化論』と題するが、どちらかと言えば、日本民族(民俗)論、社会文化論、思想等、やや幅広いトピックを含んでいる。『日本文化論』というカテゴリにおいて、いわゆる“日本賛美論”を手放しで持ち上げるという趣旨にはなくて、日本人自身(3名ながら造詣の深い外国人も含む)が見つめ向き合った(酸いも甘いもある)日本文化・民族論と言うのが、率直な私の読後感である。トピックは『名著25冊』を対象としているが、別項コラムとして、「外国人が見た明治のニッポン」として5件のトピックがあるので、都合30冊と観ても強ち誤りでもない。恥ずかしながら私自身が読んでいる『名著』は、コラムを入れて3冊程度しかないので、本書のような主旨と時に論評のある形式は(本来の知を得る読書の理想型からは逸脱するが)便利である。私の既読書の記憶から観ると、イラスト・シンボリックな図表などを上手く展開し公正で要旨をよく纏めているように思う。加えてトピック末の「これだけは覚えておこう」と題する、当該著書の趣旨・要旨に関する手短な要約2点が、当該トピックの理解を更に整理する効果があって工夫された構成と評価できる。構成・内容はこのページの「商品の説明」及び「目次を見る」に譲り、以下で個人的に興味を惹いたトピックを紹介したい。
私個人的には、旧“5000円紙幣”で身近?な「新渡戸稲造」(18頁以下)、『武士道』という著書も知っているが読むほどまでには辿り着けない印象をもっていたが、本書の最初のトピックで要点がシンボリックイラストで、抽象的な「武士道」のキーワード、「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」「克己」について分かりやすい解説が展開される。かかる「武士道」の精神を、西洋思想(イギリス憲法)殊にキリスト教義との対比・対抗で書かれていると言うのは、当時の時代性(明治33年ーー日清・日露戦争の中間)を考えると、新渡戸の志向する「武士道」の意義が理解できる(25頁)。民俗学の第一人者で有名な「柳田国男」も取り上げているが、柳田を「民間伝承の採集に尽力」と位置付けた上で、これと対照的に「宮本常一」を「民間伝承にすらならない庶民の生活文化の実態を記録」した人物(73頁)と評して取り上げる。その「記録」にある「夜 這 い」や、「田植え」の話など、確かに「庶民の生活文化の実態」と言いうるような興味深いトピックを取り上げている。一般に知られている、ルース・ベネディクトの『菊と刀』も取り上げているが、(その是非は格別)結構なボリュームの著書を「恥の文化」と「罪の文化」の要点から、(誤解されやすい)「菊」と「刀」の象徴する内実を簡潔に纏めているのが印象的である(173頁)。このほか「芸術は爆発だ」で知られる「岡本太郎」の日本の伝統論(154頁以下)も興味深い。全体に(『名著』の取捨選択の評価は格別)趣旨・要旨を分かりやすく纏めた『日本文化論』関連著書の解説・書評論である。
登録情報
フォーマット: Kindle版
ファイルサイズ: 7517 KB
紙の本の長さ: 163 ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2015/3/26)
>「武士道」から「禅」まで、日本文化論の名著24冊を100字要約&やさしい解説、図解で総ざらい! グローバル社会だからこそ知っておきたい日本人としてのアイデンティティー。外国人に自国のことを尋ねられたときに「恥」をかかないための一冊。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中野/明
ノンフィクション作家。同志社大学非常勤講師。歴史・経済・情報の3分野で執筆する
大久保/喬樹
1946年生まれ。東京女子大学現代教養学部人文学科日本文学専攻教授。東京大学教養学部フランス科、同大学院比較文学修士課程を経て、パリ第3大学に学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
中野 明
略歴
1962年5月17日滋賀県生。
ノンフィクション作家。同志社大学理工学部非常勤講師。
1996年に『日経MAC』誌上に短期連載した記事を『マック企画大全』(日経BP社)として出版後、当初は情報通信関係の書籍を中心に執筆。その後、『ピーター・ドラッカーの「マネジメント論」がわかる本』(秀和システム)、『今日から即使えるビジネス戦略50』『カーネル・サンダースの教え』(朝日新聞出版)など、経済経営関係の書籍を執筆する。
並行して通信の歴史に踏み込んだ『腕木通信──ナポレオンが見たインターネットの夜明け』(朝日選書)を皮切りに、歴史民俗系の書籍を執筆。この関連では『サムライ、ITに遭う──幕末電信事始』(NTT出版)『裸はいつから恥ずかしくなったか』(ちくま文庫)『グローブトロッター──世界漫遊家の歩いた明治ニッポン』(朝日新聞出版)、『幻の五大美術館と明治の実業家たち』(祥伝社新書)などがある。
公式ウェブサイト:http://www.pcatwork.com/
コメント
さまざまな日本論の名著をたどりながら日本文化を何とか言語化せんと試みた本
投稿者滝の水博士2015年9月7日
形式: 単行本
【内容(ネタバレ禁止!)】
さまざまな日本論の名著をたどりながら日本文化を何とか言語化せんと試みた本
【ささった言葉】
『茶の本』岡倉天心
・この虚を愛でる心がいまや忘れられているのが現代なのかもしれません。そういえば私たちは、あれがない、これがないと、いつも嘆いてばかりいます。しかしその不完全さの中に、いかにして心の安楽を見出すのか。これは岡倉が『茶の本』を通じて現代人に発する問いのようにも思います。
『代表的日本人』内村鑑三
・貧困は自らの力で解消するのが尊徳の流儀です。単純な援助は、人間の怠惰を助長するだけだとして、尊徳は勤勉と自助を徹底して推し進めました。内村はこのような二宮尊徳に、ピューリタンの精神を見出しています。
『禅と日本文化』鈴木大拙
・禅の修練法は「身をもって体験することであり、知的作用や体系的な学問に訴えぬということである」。そもそも禅は「不立文字」、つまり言葉に頼りません。言葉は実体を代表するものであって、実体そのものではないからです。
『弓と禅』オイゲン・ヘリゲル
・しかし経験だけが教えうるものを、何ゆえ思想の中で先取りしようとするのであろうか。それはこの不毛の性癖を捨て去る大切な時ではなかったであろうか。
【教訓】
やはり一言で表現しづらい日本文化。が、先人達の偉大なる試みはしっかり引き継いで、自分なりの言葉で日本を、ぜひ海外に後世に伝えていく一助となりたい。
http://www.pcatwork.com/books/25.html
著者のサイトより
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ナナメ読み日本文化論──名著25冊で読み解く日本人のアイデンティティ
2015年3月30日
朝日新聞出版 1400円(Amazonへ)
【はじめにより】
本書『ナナメ読み日本文化論』は、日本や日本人、日本文化について書かれた本(本書ではこれらを総じて日本文化論と考えます)の中から、広く世間で話題になり、かつ一般教養として知っておきたいものを取り上げ、その概要について紹介したものです。
本書では5つのテーマを設け、それぞれのテーマに関連する書籍を集めました。
これらを読むことで日本文化論の全貌がぼんやりとではあるけれど把握できるのではないか、と思います。さらに読みっぱなしではあまりにももったいないですから、そこでさらにもう一歩踏み出すことをお勧めします。その点について解説したのが、「おわりに 〜裏読み日本文化論のススメ〜」です。
【目次】
Chapter1 日本文化を世界に発信した三大名著
『武士道』 新渡戸稲造
『茶の本』 岡倉天心
『代表的日本人』 内村鑑三
Chapter2 日本人のメンタリティを探る
『禅と日本文化』 鈴木大拙
『弓と禅』 オイゲン・ヘリゲル
『地獄の思想』 梅原猛
『遠野物語』 柳田国男
『忘れられた日本人』 宮本常一
『昔話と日本人の心』 河合隼雄
Chapter3 日本的風土の特質とは何か
『日本風景論』 志賀重昂
『風土』 和辻哲郎
『文明の生態史観』 梅棹忠夫
『日本辺境論』 内田樹
Chapter4 日本の美について考えてみた
『「いき」の構造』 九鬼周造
『陰翳礼讃』 谷崎潤一郎
『美しい日本の私』 川端康成
『日本美の再発見』 ブルーノ・タウト
『民藝四十年』 柳宗悦
『日本の伝統』 岡本太郎
『「かわいい」論』 四方田犬彦
Chapter5 日本人と日本社会を成立させるもの
『菊と刀』 ルース・ベネディクト
『日本の思想』 丸山真男
『タテ社会の人間関係』 中根千枝
『日本人とユダヤ人』 イザヤ・ベンダサン
『「甘え」の構造』 土居健郎
コラム 外国人が見た明治のニッポン
『新編日本の面影』ラフカディオ・ハーン
『日本奥地紀行』イザベラ・バード
『明治日本旅行案内』アーネスト・サトウ
『日本人の住まい』エドワード・モース
『日本事物誌』バジル・ホール・チェンバレン
おわりに ~裏読み日本文化論のススメ~