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言志耋録三一 から 三七まで

2017-06-21 | 本を読みます
言志耋録三一 から 三七まで

(艱苦と安逸)
困心衡慮は知恵を発揮し、暖飽安逸は思慮を埋没す。
猶お之れ苦難は薬を成し、甘品は毒を成すがごとし。

(得意と失意)
得意の物件は懼る可くして喜ぶ可からず。
失意の物件は慎む可くして驚く可からず。

得意の事多く、失意の事少なければ、其の人知慮を減ず。
不幸という可し。
得意の事少なく、失意の事多ければ、其の人知慮を長ず。
幸と謂う可し。

(苦・楽にも真仮)
楽の字に真仮有り、苦の字にも亦真借有り。

(楽しみ)
吾が輩、筆硯の精良を以て娯と為し、山水の遊適を以て娯と為す。
之を常人の楽しむ所に比すれば、高きこと一著なりと謂う可し。
然れども之を孔子や顔回の楽しむ処に方ぶれば、翅に数等を下るのみならず。
吾人、蓋ぞ反省せざらんや。

(学問の方法 一)
学を為すには、自然有り工夫有り、自然は是れ順数にして、源よりして流る。
工夫は是れ逆数にして、麓よりして顛す。頂は則ち源の在る所、麓は則ち流れの帰する所、難易有りと雖も、其の究は一なり。

(学問の方法 二)
学を為すには、人の之を強うるを俟たず。必ずや心に感興する所有って之を為し、身に持循する所有って之を執り、心に和楽する所有って之を為す。「詩に興り、礼に立ち、楽に成る」とは、之を謂うなり。

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