読書など徒然に

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キプロス危機とは何か、あなたの疑問に答えます

2013-03-24 09:12:52 | 経済
wsj日本版から
by GABRIELE STEINHAUSER

バンク・オブ・キプロスのATM(16日、ニコシア)
 キプロス議会がユーロ圏などによる金融支援の見返りとなる銀行預金への課税案を否決、同国の危機は混迷の度を深めている。なぜ預金課税が提案されたのか、その背景を一問一答形式で紹介する。

 ―なぜ銀行預金への課税が現実的な解決策とみなされたのか

 預金者に負担を掛けずに金融機関を救済すると、キプロスに対する金融支援は約175億ユーロ(2兆1700億円)と、同国の年間国内総生産(GDP)に匹敵する規模になる。それでは、ユーロ圏諸国も国際通貨基金(IMF)も融資を返済してもらうことは不可能だろう。比較的低利の預金課税は、IMFが提示した代替策に比べると厳しくなくリスクも小さいとみられた。IMF案では優先債保有者も負担を負い、預金保険を発動するというキプロスの2大銀行にとっては厳しいものだった。その場合は、10万ユーロ以上の預金者は30―40%の損失を被ることになっただろう。

 ―なぜ大口預金者に加え小口預金者も標的になったのか


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Emotions ran high as Cypriot bank workers gathered outside of Parliament in Nicosia on Thursday, fearful for their jobs and savings. WSJ's Matina Stevis reports via #WorldStream.

 キプロス政府当局者によれば、同国中央銀行は10万ユーロ以下の小口預金者を分けて示すことができなかった。このため、小口預金者を対象外とした場合のコストを試算できなかった。加えて、一部の大口預金者はすでにいくつかの口座に預金を分けてしまっており、小口預金を除外した場合にはこれら大口預金者が課税を逃れてしまう恐れがあった。

 ―キプロスはどうして「特例」なのか

 キプロスの銀行の資産は同国のGDPの8倍に、預金残高は4倍に達している。金融機関は巨大になりすぎた。また、キプロスはタックスヘイブン(租税回避地)となっており、高税率のドイツを味方につけることができなかった。加えて、マネーロンダリング(資金洗浄)が横行しているといわれ、ドイツやフィンランドの議会からもなかなか同情の声が挙がらない。

 ―どのような代替策が検討されたのか

 ユーロ圏はもっと大規模な救済策を提示できたが、ドイツやフィンランドが反対した。IMFは2大銀行の秩序立った再編を提案した。10万ユーロ以下の小口預金者を保護するというものだったが、リスクが高すぎるとみられた。アナスタシアディス大統領が預金課税案を拒否しようとした際には、金融支援交渉は決裂する恐れがあった。そうなっていれば、2大銀行は無秩序なデフォルト(債務不履行)に陥り、キプロスはユーロ圏から離脱していただろう。

 ―どうしていればキプロス危機を回避できていたのだろう

 キプロスの銀行監督当局や政治家だけでなく、欧州中央銀行(ECB)や欧州連合(EU)の銀行監督機関は、同国の金融機関が不釣り合いなほど拡大するのを阻止することができただろう。ただ、2014年にECBがユーロ圏の金融機関を統一的に監督するようになれば、こうしたリスクは早めに察知され封じ込められると期待できる。また、キプロスの銀行はギリシャ国債を大量に購入していた。ギリシャが昨年債務再編に追い込まれていなかったならば、キプロスの金融機関の問題はこれほど深刻にはならなかっただろう。


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