中国では鉄の使用は戦国時代から活発であったが
文字は少なくとも紀元前十四、五世紀には使われていた。
殷の武丁の時代以降、占いに使われいた亀甲や獣骨に
刻まれた文字が、その頃、その都であった殷墟(現在の河南省
安陽)から発掘された。その数は数十万片に及ぶ。
これらの亀甲、獣骨文字と共に優れた青銅器も発掘された。
それら青銅器にも文字が書かれ、金文と呼ばれている。
文字は、もとは絵文字であった。が、これら絵文字は言葉を
表すものではなく、ただ、絵によって事実を知らせるだけのもの
であったから文字とはいえないものであった。
文字と言うためには、一定の形が、一定の意味を表すと共に
一定の音を示すものでなくてはならない。
殷墟の文字は既にそうした条件を備えていたのである。
白川静の著書から