GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

<安倍首相の所信表明を読んで>

2013年01月30日 | Weblog

 安倍首相の所信表明は、第一次安倍内閣時とはかなりの違いをみせた。「美しい国、日本」という自らの主義主張を優先したものではなく、明らかに世論を反映したものとなっていたからだ。経済再生を最優先とし、「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という『3本の矢』を推し進める」というものだった。第一次安倍内閣の所信表明を語った「戦後レジームからの脱却」という米国が目を瞠るようなニュアンスの言葉はどこからも探し出せなかった。それは自らの短命内閣に終わった反省と、その後、党首交代を繰り返した民主党政権を間近に観てきたことに起因する。そして、中国の経済躍進と軍事力増大を意識した新たな日米同盟構築の必要性を強く感じているに他ならない。

 私は以前から自衛隊を軍隊だと認めている。過去の大戦が帝国主義に基づく侵略戦争だったことも認めているし、米国の軍隊が、いまだに自国内にいくつもの基地を持ち、駐留していることも苦々しく思っている。かといって、中国やインドのように核を持ち、日米同盟破棄を主張したいと思っているわけではない。仮に日本が核を持とうすれば、米国や中国、周辺のアジア諸国からも単なる威嚇ではなく帝国主義の復活として受け止められ、北朝鮮以上に集中攻撃を受けるに違いない。幕末に不平等な日米修好通商条約を交わしながらも、その後、日本は世界には類を見ないイノベーション能力を身に付け、坂本龍馬が夢見た国際貿易によって大きな発展を遂げてきた国家だ。このことを決して忘れてはならないと思っている。今後もこのスタンスを堅持する以外に国家が生き延びる手だてはないからだ。

 気になっていた安倍首相の外交姿勢については、最初に「日米同盟を一層強化して、日米の絆を取り戻さなければなりません」と云った上で、本年が「東南アジア諸国連合友好40周年」という言葉を用いて、東南アジア全体で(米国・中国に)対処していくことが、地域の平和と繁栄に不可欠であり、日本の国益でもあると述べ、大いに好感が持てた。
 政権交代以降、株価がついに一時11,000円を越えるに至ったことは、新安倍政権にとって大きな追い風となている。2月下旬に渡米して日米首脳会談に向かう安倍首相は、手みやげとして2月1日から米牛肉輸入緩和を早々に実施することを表明し、社会保障費10%増、公共事業費16%増(農林水産省400億、学校耐震化200億)、を閣議決定して、2月下旬に今国会に提出する。削減する項目は7月からの地方公務員給与2,000億円、生活保護費の670億円とした。ロケットスタートを意識していた安倍首相にとって、新たなアベノミクスを打ち出す土壌が出来上がったと云える。

        

 決して順風満帆の安倍政権に水を差すつもりはないが、今日の朝日新聞のオピニオン記事で、米国在住の作家冷泉彰彦氏が興味深い自国分析をしていたので報告したいと思う。
 「明治維新以降の日本では、東洋の道徳と西洋の技術を持って文明開化をする『和魂洋才』だと云っていた。(大河ドラマ「八重の桜」での佐久間象山の言葉「夷を以て夷を制す」、これは私の共感部分)その感覚は今も続いており、日本の政財界のトップ層には、アングロサクソンの道徳観には屈したくないという悪い意味での反骨心があるようです。中国は今は共通ルールを守っていないように見えますが、国際的な価値観の共有という点で先を越されたら、日本は孤立してしまいます」
最後に私と同意見のことをおっしゃっていたので、これも記しておきます。
「産業構造上、日本は決して孤立できない国です。米国だろうが中国だろうがイスラム圏であろうが、それこそアルジェリアでも、全世界全方位外交、経済中心の国際協調で生きていかなくてはいけない」

 冷泉氏が述べる<国際的な価値観の共有>とは何か。それはトヨタやユニクロが世界に先駆けて推進してきた企業スタンス<共存・共栄の精神>だと私は解する。3.11以降日本は大きな方向変換が必要だと語ったことがある。英語力をもっと身に付けて、国際的な価値観を学び、世界を相手に貿易(坂本龍馬の念願)し、日本の技術や能力を披露して欲しいと。円高の流れは一人勝ちし過ぎたことが背景にあった。トヨタやユニクロは先んじて海外に生産拠点を移すことで円高の流れを逆にフォローの風としてきた。現地での雇用拡大や技術の輸出は、まさに共存・共栄を意味している。出来上がる高品質な製品は国際的な価値を有しているのだ。
 私は60歳を間近に迎えた老輩だが、人生の先輩として改めて未来ある若者たちに叫びたい。もっと英語力を含む豊かな語学力を身に付け、国際的な価値観を理解し、全世界に羽ばたけと。昭和の初め、資源を求め世界を駆けめぐった勇気ある商社マンたちのように。そして、理工系を目指す人たちには、日本の真の人的エネルギーになることを意識して、更なるイノベーションを目指せと。

     

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg7537.html?t=57&a=1