<作文集>
遅 刻
(S・H)
遅刻! 遅刻! 僕はあわてる。
床にまだ入っている兄たちがうらやましい。僕は眠い目をこすりながら、飛び起きる。
兄は僕のあわてる姿を見ながら、ゲラゲラ笑っている。僕は少しシャクにさわるが、今は、そんなことをあらそっているひまがないのだ。
僕はだまって歯をみがき、わき目もふらず食事をすまして、何か物足りない様な気で家を飛び出す。
その後から、「綿羊いいのか!」と父がどなる様にして窓を開ける。僕は少し反抗して「いい!」とどなりかえすが、窓が閉るまると、こっそり羊小屋に行く。そうしている間にも始まる時間が近づいて来るのだ。
僕は走ったが、なかなか学校へはつかない。学校の校門の見える所まで来た時、全神経を校門に集める。だれの姿も見えない。がっかりした。今まで走っていたつかれが一度にどっとぬける。今はもう何も考える元気がない。ただ自分の足音がいやに大きく聞こえ、あたりも急に静かになった様な気がする。
僕は教室に入っていくのがいやになった。教室の中をのぞいたら、先生は何かの用でいなかった。ただ、何の話か知らないが、面白そうに笑ったり、立って歩いたりしている友達もいる。僕の今まで真剣に走って来たのも知らないで!
僕は、二度とおくれてはなるまいと心から思った。
☆ ☆
私たちが子供のころは、日本がまだ貧しかった時代。子供といえども家の手伝いをするのは、ごく当たり前だった。農家の子供は牛、羊、馬、豚などの世話をしていた。
私は、農家ではなかったが、自家用の畑があって、じゃがいも、とうもろこし、かぼちゃ、きゅうり、トマトなどを作っていたので、種まきや収穫などの時期には手伝っていた。燃料は薪だったので「薪割り」なども担当していた。
先日のクラス会では、「俺、あまり学校へ行かなかったからな~」という会話が交わされていたが、今考えると、そうした生活環境の中で、「命を育むこと」や「動物愛護」ということを自然に学んでいたのだと思う。何事も、体で覚えることが大事だと、つくづく思う。