■神の領域(第312話) 発表1990年7月
評価 ★★★
依頼人 CIAルーニー
ターゲット テキサス心臓研究所マシューズ医師
報酬 不明
今回弾丸発射数 1/ 通算弾丸発射数 1,720
今回殺害人数 1/ 通算殺害人数 3,872
今回まぐわい回数 0/ 通算まぐわい回数 95
<ストーリー>
KGBの”スリーパー”が心臓病に。KGBは手段を選ばず、スリーパーに臓器提供がなされるように仕向けるが・・・
<この一言>
民間人に対するせめてもの良心・・・のつもりか、ルーニー・・・?
<解説>
KGBのアメリカ在住スリーパーが心臓病を患い、心臓移植を待つ身になる。KGBは陳情・買収工作で臓器移植手術を受けようとするが、テキサス心臓研究所の臓器移植患者決定会議の方針にそぐわず、移植手術の機会を得られずにいた。
テキサス心臓研究所の臓器移植患者決定会議は、「スミス所長」と「マシューズ医師」の合議制を採っていたが、実際にはスミス所長の恣意的な判断により移植患者が決定されていた。患者の生死を左右する臓器移植の決定は、臓器移植の相性を優先に考慮してなされるべきであると考えるマシューズはスミス所長の方針に反発する。
スミス所長の方針を快く思わないのはKGBも同様で、いつまでたってもスリーパーに臓器移植の機会が回ってこないとに焦りを感じたKGBは、スミス所長を殺害。マシューズと複数の選定委員による新たな臓器移植患者決定会議で、KGBに買収された選定委員がスリーパーへの移植を決定する。
CIAはKGBの動きを察知し、マシューズにスリーパーに対する手術を失敗するよう脅迫する。ベトナム戦争の徴兵回避をネタに強請られたマシューズは、手術を失敗しスリーパーを死亡させる。自責の念にかられたマシューは教会で懺悔するが、懺悔室で待ち構えていたのはゴルゴであった。CIAのルーニーはゴルゴにマシューズの殺害を依頼していたのである。
臓器移植については、公平性と倫理という問題がつきまとう。カネで命が買えるという状況は好ましくなく、本作が提示している公平性とは何かという命題は簡単には解決できない『神の領域』なのだろう。臓器移植に関する問題は一橋文哉『ドナービジネス』に明るい。臓器が売買の対象とされている現実に戦慄する。恋人マシューズの死亡後も、マシューズの提供臓器を活かそうとする女医マリアの気丈で気高い振る舞いに、公平性や倫理といった難題を解決する光明を見ることができる。
ズキューン
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臓器移植は、比較的進んでいるアメリカでも、未だに大きな問題を抱えているのでしょう。制度的な問題はもちろん、提供を受けるためには誰かの死を待たなければならないのは、つらいものです。
本日の一句「死してなお、働き続ける、臓器かな」
>誰かの死を待たなければならない
臓器移植を待つ人にとっては複雑ですね。本文中で紹介した『ドナービジネス』は臓器移植に潜む負の側面を著した本です。2つある腎臓のうち一つを貧しさのために売却するアジアの事例や、死刑執行後の死体から臓器を取り出して商売する中国の事例などが記されており、いたたまれない気持ちになります。