ゴルゴ13総合研究所『俺の背後に立つな!』

ゴルゴ13の全ストーリーを解説

ゴルゴ13第92巻-2神の領域

2007-08-27 23:55:48 | 第091巻~第095巻

■神の領域(第312話) 発表1990年7月

評価   ★★★

依頼人   CIAルーニー

ターゲット テキサス心臓研究所マシューズ医師

報酬    不明

今回弾丸発射数       1/ 通算弾丸発射数 1,720

今回殺害人数         1/ 通算殺害人数   3,872

今回まぐわい回数     0/  通算まぐわい回数    95

<ストーリー>
KGBの”スリーパー”が心臓病に。KGBは手段を選ばず、スリーパーに臓器提供がなされるように仕向けるが・・・

<この一言>
民間人に対するせめてもの良心・・・のつもりか、ルーニー・・・?

<解説>
KGBのアメリカ在住スリーパーが心臓病を患い、心臓移植を待つ身になる。KGBは陳情・買収工作で臓器移植手術を受けようとするが、テキサス心臓研究所の臓器移植患者決定会議の方針にそぐわず、移植手術の機会を得られずにいた。

テキサス心臓研究所の臓器移植患者決定会議は、「スミス所長」と「マシューズ医師」の合議制を採っていたが、実際にはスミス所長の恣意的な判断により移植患者が決定されていた。患者の生死を左右する臓器移植の決定は、臓器移植の相性を優先に考慮してなされるべきであると考えるマシューズはスミス所長の方針に反発する。

スミス所長の方針を快く思わないのはKGBも同様で、いつまでたってもスリーパーに臓器移植の機会が回ってこないとに焦りを感じたKGBは、スミス所長を殺害。マシューズと複数の選定委員による新たな臓器移植患者決定会議で、KGBに買収された選定委員がスリーパーへの移植を決定する。

CIAはKGBの動きを察知し、マシューズにスリーパーに対する手術を失敗するよう脅迫する。ベトナム戦争の徴兵回避をネタに強請られたマシューズは、手術を失敗しスリーパーを死亡させる。自責の念にかられたマシューは教会で懺悔するが、懺悔室で待ち構えていたのはゴルゴであった。CIAのルーニーはゴルゴにマシューズの殺害を依頼していたのである。

臓器移植については、公平性と倫理という問題がつきまとう。カネで命が買えるという状況は好ましくなく、本作が提示している公平性とは何かという命題は簡単には解決できない『神の領域』なのだろう。臓器移植に関する問題は一橋文哉『ドナービジネス』に明るい。臓器が売買の対象とされている現実に戦慄する。恋人マシューズの死亡後も、マシューズの提供臓器を活かそうとする女医マリアの気丈で気高い振る舞いに、公平性や倫理といった難題を解決する光明を見ることができる。

ズキューン

ゴルゴ13 (92)巻掲載
ゴルゴ13 145巻(最新刊)
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
賛美歌13番さんこんにちわ。 (ペロ)
2007-08-28 14:58:42
賛美歌13番さんこんにちわ。
臓器移植は、比較的進んでいるアメリカでも、未だに大きな問題を抱えているのでしょう。制度的な問題はもちろん、提供を受けるためには誰かの死を待たなければならないのは、つらいものです。
本日の一句「死してなお、働き続ける、臓器かな」
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ペロさん、こんばんは。 (賛美歌13番)
2007-08-28 21:26:17
ペロさん、こんばんは。
>誰かの死を待たなければならない
臓器移植を待つ人にとっては複雑ですね。本文中で紹介した『ドナービジネス』は臓器移植に潜む負の側面を著した本です。2つある腎臓のうち一つを貧しさのために売却するアジアの事例や、死刑執行後の死体から臓器を取り出して商売する中国の事例などが記されており、いたたまれない気持ちになります。
返信する
マルテンサイト千年グローバル (サムライ鉄の道リスペクト)
2024-09-19 04:15:38
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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