オルセー美術館展・・・・笛を吹く少年

2014-10-11 18:43:37 | 雑記

遅ればせながら、新国立美術館で行われている

”オルセー美術館”展へ行ってきました。

19世紀の印象派の絵画がメインの

絵画展ですが、深く強く印象に残った絵も

数多く展示され、久々に視覚神経が

目覚めた感じです。

中でも、今回の一押しは、

マネ作『笛を吹く少年』だと感じました。

絵の原寸が大きいせいもありますが、少年の姿が

額縁からビビッドに浮き上がって見えるのが、

とても印象的でした。

近づいてじっと見ていますと、

人物などの影を意図的(?)に抑えて

いました。人の影、ズボンのしわの影が

とても小さく描かれているのです。

光と影の対照という絵画ではなく、

笛を吹き、見る側を見つけ返す

少年の姿自体を際立たせている。

そんなマネの技法に驚きました。

おそらく意図されたものでしょう。

屋外ではなく、屋内設定だからこそ、

余分なものを一切排除して、背景も

シンプルにし、人物描写だけで

勝負している絵なのです。

本物は無駄をそぎ落とし、

シンプルだというのをまさに

体現している絵だと感じました。

そんなことを感じた先に、

見つけたこととは・・・・?

少年の姿は、赤、黒、白という

3原色で描かれています。

しかも、彼の輪郭をしっかりくっきり

締めているのは、黒なのです。

ズボンのサイドには、太い黒の縦すじ

が右と左に1本ずつ。これで輪郭が

くっきりし、人物勝負を決めています。

しかも、右脚ズボンには、1か所

”はずし”があります。

それは、左脚が太い黒のすじが

裾まで1本通っているのに、

右脚では、最下部のところだけ

しわに隠されているかのように

黒が抜けています。これも意図して

欠落の効果を狙ったものでは?

この細やかな演出で、影を過度に

使わなくても余計に立体感が

出てきます。憎らしい演出です。

そんな演出には、お構いなしかの

ように、笑顔で笛を吹く少年。

見る者をくぎ付けにしてしまうのも

納得です。

自然光を巧みに使った他の印象派の

絵描きとは異にする技巧に

新鮮な感動を覚えました。

新たな発見ができて、嬉しくなりました。

マネという画家の底力を

見た思いです。

他には、モネ、ルノアール、セザンヌ、

シスレー、そしてバルビゾン派と呼ばれる

ミレーの絵など有名な絵画が展示されていましたが、

この『笛を吹く少年』は趣を異にします。

新たな感動を有難うございました。