出典:木の話いろいろ 光合成を行う植物にとって太陽光は不可欠である。誰よりも早く背を高くする必要がある。背伸びに時間が掛かり、他の木に先を越されれば、回復のチャンスは無くなってしまう。
「背は高く、幹は太く丈夫にしたい、でも栄養は限られている」とすれば、生きるために必要なエネルギー・コストを最小にしなければならない。
そこで、生かしておくのは重要な機能的性能を発揮してくれる細胞、すなわち、個体維持・成長・生殖のための細胞だけに留め、一方、体を支える構造部分の細胞には死んでもらうことが得策となる。
養分や水分を送る維管束を備えた形成層は木の皮の少し内側にある。
形成層の外側に作られる細胞はコルク層となり、数年後には形を変えて皮になる。
表皮は生きて居らず、死んで保護・防御の役に回る。形成層の内側で作り出される細胞の寿命は、新しい細胞が作り出される次の年までである。
ここでは、細胞壁は硬く、死んでも、古くなっても壊れずに、蓄積されて木質部になる。
杉や桧を思い出して欲しい。年輪の見える木の断面は、皮-形成層-白い木質部(辺材)-褐色の木質部(心材)になっている。
辺材部分では、僅かな監視細胞だけが生き残り、外敵に対する防御をしている。
心材部分は防腐剤が残され腐食に備えている。
樹木は最小限の労力で、最大限の効果で、外敵を防ぎ、エネルギーの消費を押さえ、背を高くして生き延びることに専念しているのである。
動物の寿命は長くても100年である。樹齢1000年を優に越える巨大な樹木があるのもこのような節約の仕組みがあるからである。
注)なお、この文章はimidas2004に寄稿したものが基本になっている。
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