少々の雨でも週に一度は行くすくすくの森。三歳の時、バスを降りて森に差し掛かるだけで圧倒されて泣いていた子どもや、坂道が恐い、大きな木が恐いといって泣いていた子どもも、回を重ねる毎に幼稚園のどの場所よりもすくすくの森が大好きになっていきます。
この森で、子どもたちは何を育んでいくのでしょうか。
1 心身を鍛え、育む
若草幼稚園 岡林道生
(5)遊びの中で
森は楽しいところです。けれども、森で楽しく遊ぶのはそう容易なことではありません。 森には、平坦な場所が無く、むしろ油断すると大ケガに繋がりかねない所ばかりです。もちろん、座ってボタンを操作するだけで長時間遊べるような場所でもありません。
しかし、子どもたちは遊びの天才です。かくれんぼやヒーローごっこをして遊びます。走ったり、立ち止まったり、飛んだり、跳ねたり、屈んだり伸びたりして遊びます。 森での遊びは、多様な動きが要求されると共に、しっかり掴む力、踏ん張る力が要求され、身体のバランス力もバネも必要です。また見通しも必要です。周囲の状況を見てどうするかを決めなければならないからです。 また森の中では、子どもたちのニーズに合わせた材料や道具が揃っているわけではありません。その分、想像力や創造力を駆使して遊びます。
落ち葉を集めて雪に見立てたり紙吹雪に見立てて遊びます。赤や黄、茶色の木の葉を小枝に突き刺してバーベキューや焼き鳥を作ります。どんぐりに木の葉をまぜてお寿司もできます。できた物を岩のテーブルに並べてお店やさんごっこも始まります。大きな葉っぱに穴を開けてお面も作ります。桑の茎でゲームをしたり、コケの葉を耳元で二つに折ってパチンという音を楽しんだりします。
基地作りは大変ですが、意気投合した子どもたちは、役割分担して木を集めたり、家を組み立てたりしてせっせっと働きます。困った時には、どこからともなく誰かが現れて、括るには藤の桂がよいとか、桂を切るにはこの石を使えなどといいます。 子どもたちは知恵を出し合い、工夫しながら遊びます。森で楽しく遊ぶためには、頭のてっぺんから手足の先までを使わなければなりません。使ってこそ楽しい森の中の遊びは、心身を鍛え、育んでいきます。 (文中の画像は、若草幼稚園より提供していただいたものを中心に、編集者が選んで挿入したものです) 〔『保育の実践と研究』(第15巻第2号)より転載〕 第1回の連載ほか、 「かしこくて、たくましい子どもに育てる」コーナーを作成しました。 HN:ちるどれん ◎かしこくて、たくましい子どもに育てる(高知市・若草幼稚園の実践) 若草幼稚園 「すくすくの森」と子どもたち に関する記事