極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

沸騰大変動時代(二十一)

2024年04月27日 | ネオコンバーテック


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦
国時代の軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編のこと)
と兜(かぶと)を合体させて生まれたキラクタ「ひこにゃん」。

【今日の季語・短歌】




                              
ボローニャ 
缶詰め通りコロナ明け 老いもシェアする楽しきランチ  

我という三百六十五面体ぶんぶん分裂して飛んでゆけ 『サラダ記念日』

知れば知るほどむしろありえることだっこれまでがただ幸運だった
                         『未来のサイズ』

                 『多面体の肯定感』 伊藤一彦 選
                   短歌研究 4月号「特集 歌人達の「俵万智短歌」


値万智の登場はかつて新しかったし、今も新しい。一首目は『サラダ
記念日』のみならず俵万智の代表作と思っている。統一された人格や
不変の思想をもつことが当然とされたそれまでの価値観を否定した歌

で、彼女より旧世代の私は目を丸くした。日替わりの自分でよい、そ
の時々の自分でよいという「節操のなさ」を羨ましく思った。平野啓
一郎の『私とは何か----「湖人」から「分人」へ』が出版され話題に
なったのは、『サラダ記念日』から四半世紀後の二〇回一年である。
平野は書いている。「すべての間違いの元は、唯一無二の『本当の自
分』という神話である」「対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて
『本当の自分』である」「一人の人間は、複数の分人のネットワーク
であり、そこには『本当の自分』という中心はない」。
 一年を三百六十五面体、一日を二十四面体で生きるとはとう生きる

ことか。この間いがすでに旧世代の問いだが、俵万智は教えてくれる。「
見る前に翔ぱず何を見るのかもわからずけれどつるつる生きる」(『
サラダ記念日』)と。それにしても「つるつる生きる」の表現に感心
する。表面がフラットで、なめらか、とどこおらない。具体的には、
日常に対する肯定感だ。かつて「反日常」や「非日常」が文学評価の
基準の一つであり、「日常的」といえば否定の意味合いが濃く、日常
は止揚されるべきものだった。しかし、日本の文化を独自の観点で論
じていた見田宗介がいた。一九六五年出版の『現代日本の精神構造』
である。見田は「一神教」は絵で言えば全体に黒い画面に自い絵がか
いてあり、神という自い絵によって意味づけられる特定の行為や存在

だけが価値をもつという。それに対し「汎神論」は画面全体が真っ自
に輝いていて、ところどころに陰影がただよっているが、日常的な生
活やありのままな自然がそのまま価値の彩りをもっている。そして、
見田は言う。「賢治や白秋の宇宙感覚、小旗安二郎や木下恵介の抒情
性、(中略)日本文化論のレギュラー・メンバーとなっている俳句や
和歌や私小説はつねに、生活における『地の部分』としての、日常性
をいとおしみ、『さりげない』ことをよろこび、『なんでもないもの
』に価値を見出す」。俵万智の新しさは日本の伝統の上にあり、それ
ゆえに多くの読者を獲得し続けている。もちろん、日常に対する肯定
感を表現するのに日常の会話も巧みに生かした工夫ある口語文体が大
きな効果を上げていることは言うまでもない。
 二首目は「未来を汚す」の連作にある。韓国のセウォル号の悲惨な

事故を直接には歌っており、犠牲者への深い共感力(彼女の詩的武器
だ)が鋭い連作にしている。この歌を含めて福島原発事故とダブルイ
メージで歌った力作である。他に「こうなってしまったことのほんと
うの悪いひとたち現場におらず」「都合悪きことのなければ詳細に報
じられゆく隣国の事故」(『未来のサイズ』)などの作がある。
われわれの「日常」を破壊するものにむかっては抗議の強い声をあげ

る俵万智である。





❏ 空間に溶け込む一体感 TOPPANの新ディスプレイ
ダブルビューフィルムは、TOPPANが建装材事業で培った透過加飾技術。
4月19日、ホテルや商業スペースに向け、透過加飾技術を用いたディ
スプレイシステム「ダブルビューサイネージ」を発売した。ディスプ
レイ画面への加飾と鮮明な映像表示を両立し、高いデザイン性を要求
する空間においてインテリアと調和する。ウォールパネルの後ろから
映像を投影することで、従来のプロジェクター投影における人影の写
り込みといった映像阻害や壁面デザインへの干渉を防ぎ、映像が壁か
ら浮かびあがるような体験を視聴者に提供する。



ダブルビューフィルムは、TOPPANが建装材事業で培った透過加飾技術
を用いたもの。独自の印刷技術とインキによりディスプレイ画面を鮮
明に表示できる。これにより、鮮やかな映像表示が可能なダブルビュ
ーサイネージを実現した。ディスプレイサイズは55型で、パネルサイ
ズは幅1333mm×高さ813mm×奥行き140mm。対応コンテンツは、文字や
動画などさまざま。
ウォールパネルのデザインは、ウッド調やメタル調など5種類を用意
。デジタル感が軽減され、より高品位なインテリアの空間を実現する
ため、施設やホテルのエントランスなど高いデザイン性が要求される
空間での使用に適している。
近年、店舗や公共空間で普及しているLEDサイネージやプロジェクタ
投影では、機器が常に視界に入ることによる不快感や、非使用時の黒
い画面に対する違和感が課題となっていた。今回の製品では、プロジ
ェクター投影における人影の写り込みや壁面の遮りが解消され、より
インテリアの空間に溶け込むディスプレイシステムを実現。なお、ダ
ブルビューサイネージに適応したコンテンツ制作から施工までをTOPP
ANが提供。販売目標は2027年までに50億円(関連受注を含む)を目指
す。



❏ 交互積層型の電荷移動錯体で高伝導化に成功
 

4月24日、東京大学らの研究グループは、ドナーとアクセプターの分
子軌道を混成することで、交互積層型電荷移動錯体の高伝導化に成功。
大量合成が可能な塗布型有機伝導体材料として、有機電子デバイスへ
の応用可能。
ドナー分子とアクセプター分子から成る交互積層型電荷移動錯体は、
電荷輸送に携わるキャリアが少なく、これまで「電気がほとんど流れ
ない」といわれてきた。その原因は、電荷移動量(δ)が中性領域
(0~0.4)あるいはイオン性領域(>0.75)にある。一方で、「中性
-イオン性の境界領域にある電荷移動錯体を合成すれば、電気はよく
流れるのではないか」ともいわれてきた。
同研究グループは近年、電子が豊富なドナー分子としてドープ型ポリ
(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)のオリゴマーモデル
を開発した。この二量体(2O)および、酸素/硫黄原子置換体(2S)
は、電子が不足した「フッ素置換テトラシアノキノジメタン類(F4と
F2)」に対して、中性-イオン性の境界領域に錯体を構築するのに有
効な電子構造であることを発見。



開発したドナーとアクセプターの構造および、交互積層型電荷移動錯
体の一次元性単結晶における電荷移動量と室温伝導度
そこで今回は、ドナー「2O/2S」とアクセプター「F4/F2」を有機溶

媒中でそれぞれ混合し、数日かけて濃縮した。これにより、針状をし
た4種の電荷移動錯体単結晶が得られた。X線単結晶構造解析の結果、
これらの錯体はドナーとアクセプターが交互に等間隔で積層した一
次元構造であることが判明した。しかも、電荷移動量が中性-イオン
性境界付近にあることが分かった。特に、2S-F4の電荷移動量は「0.
69」で、狙っていた中性-イオン性境界に位置している。

極めて高い室温伝導度
単結晶構造情報を基に第一原理計算から結晶軌道を算出した。この結
果、ドナーの最高占有分子軌道(HOMO)由来の軌道と、アクセプター
の最低非占有分子軌道(LUMO)由来の軌道が強く混成し、ドナーとア
クセプターのどちらにも非局在化していることを確認。

電荷移動錯体結晶中におけるドナーとアクセプターの混成軌道

単結晶の電気抵抗率を測定した。これにより、合成した錯体の室温伝
導度は、従来の交互積層型電荷移動錯体と比べ極めて高く、とりわけ
2S-F4は一次元単結晶として最高レベルの0.10Scm-1となった。この単
結晶の光反射率を測定することで、ドナーとアクセプターの間で二量
化が形成されていることを確認。ドナーとアクセプターが等間隔に積
層した錯体であれば、伸縮振動モードは振動方向と直交するπ積層方
向において赤外不活性となるが、実験では赤外活性なモードとして観
測された。第一原理計算により、これは電子-分子内振動(EMV)結
合に基づいたものであることが判明。ドナーとアクセプター間で二量
化を伴う構造的な揺らぎを生じていることが分かった。
大型放射光施設「SPring-8」のBL02B1を活用した室温での単結晶構造
解析結果なども踏まえ、合成した錯体では、二量化に伴うスピンの組
み残し効果などにより、高い伝導性が発現したとの見方を強めている。
研究グループは開発した錯体の電気抵抗率を測定した。この結果、282
K(9℃)では急峻かつ可逆な温度変化を示し、同時にEMV結合由来の
シグナル強度は増大することが分かった。これは、中性-イオン性境
界特有の構造的な揺らぎが反映された。

交互積層型電荷移動錯体における電気抵抗率の温度変化


❏ ドコモがスマートリング
4月19日、EVERINGが提供するVisaのタッチ決済対応スマートリング
「EVERING(エブリング)」を同年5月上旬以降に一部のドコモショッ
プで販売開始することを好評、コンビニや商業施設での会計時に財布
やスマートフォンを取り出すことなく決済できる他、スマートロック
「bitlock」と「セサミ」連携にも対応しているため、ドアの施錠開
錠が可能だ。また、今後は公共交通機関へのシステムへも対応する
予定。
決済は、プリペイド方式を採用していて、スマートフォンの専用アプ
リで手持ちのクレジットカード(Visa、Mastercard、AMEX、JCB、
Diners Club)を登録して管理する。そのため、万が一、スマートリ
ングを紛失した時でも、アプリから即座に利用停止することができる。
また、充電不要で、5気圧防水性能を備えているため利用シーンを選
ばない他、肌との接触部分は金属を使用しない素材(ジルコニアセラ
ミック)を使用しているため、金属アレルギーにも対応する。
ドコモは今後について「より便利で効率的な社会実現に向けたキャッ
シュレス化推進のため、これまで展開してきた3つのキャッシュレス
サービス『dカード』『d払い』『iD』に加え、スマートリングの活用
も提案していく」とコメントした。
利用プランは、月額利用料を支払う「定額プラン」と、リングを購入
して利用する「スタンダードプラン」の2種類がある。なお、「EVERI
NG」の利用は、ドコモユーザーでなくとも可能だという。
両社はスマートリングを活用するスマートライフ事業の推進に向け、
同年3月に業務提携契約を締結していて、「EVERING」の販売は協業の
第1弾となる。

❏ 青色LEDを光源とした有機光触媒
4月26日、岡山大学の研究グループは,強い還元力を持つ安定なフェ
ノチアジン有機フォトレドックス触媒の開発。光照射によって励起さ
れた触媒が,他の分子との間で電子の授受を行なうことによって進行
する触媒反応をフォトレドックス触媒反応と言う。この光を吸収して
電子の授受を触媒的に行なう分子をフォトレドックス触媒と言う。近
年の地球環境問題への関心の高まりから,有機合成化学分野では環境
に配慮したものづくりが注目されている。特に最近ではクリーンなエ
ネルギー源である可視光を活用したフォトレドックス触媒反応が精力
的に研究されている。
フェノチアジンはさまざまなフォトレドックス触媒反応に利用されて
いる有機光触媒であり,これまで多くの可視光を光源とする光触媒反
応に用いられてきた。その一方で,フェノチアジン分子の窒素原子の
パラ位は高い反応性を有しており,しばしば官能基化されてしまうこ
とから,より安定性の高い新たなフェノチアジン触媒の開発が求めら
れていた。同研究グループは,これまで有機フォトレドックス触媒を
独自に設計・開発する研究に取り組んできた。今回新たに開発したフ
ェノチアジン触媒は,窒素原子のパラ位にtBu基などの置換基を導入
した螺旋型の構造を特徴とする有機フォトレドックス触媒。電気化学
測定および分光測定を用いてPTHS-1触媒の光触媒機能を評価したとこ
ろ,これは強い還元力(E1/2ox*=−2.34vs. SCE)を有しており,青色
光を光源として利用できる触媒であるということが分かった。次に既
存のフェノチアジン触媒との安定性の比較を検討するべく,光スルホ
ニル化反応に適応した。その結果,PTH触媒では窒素原子のパラ位が
トシル(Ts)化された生成物が高収率で得られたが,新たに開発した
PTHS-1触媒は95%で触媒が回収できたことから,従来のフェノチアジ
ン触媒よりも安定性の高い触媒であることが確認。
また,可視光照射下リン酸エステル化反応における触媒のリサイクル
化を検討したところ,PTH触媒では検討回数を重ねるごとに収率の低
下が見られたが,PTHS-1触媒では検討回数を重ねても収率が低下する
ことなく目的とするリン酸エステルが良い収率で得られることが分か
った。この触媒はグラムスケールの大量合成の条件にも適応可能であ
り,その場合においても96%という高い収率でPTHS-1触媒が回収でき
ることが分かった。研究グループは,今後はこの触媒を利用すること
により,従来のフェノチアジン触媒では適応が難しかった多様なフォ
トレドックス触媒反応が実現できる。


【掲載論文】
【掲載誌】
論 文 名:Strongly Reducing Helical Phenothiazines as Recyclable Organop-
       hotoredox Catalysts
掲 載 紙:
Chemical Communications
著 者:
Ando, Haru.; Takamura, Hiroyoshi.; Kadota, Isao.*; Tanaka,*
D O I:10.1039/D4CC00904E
U R L:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/cc/d4cc00904e



❏ 点群データ革命
https://youtube/dbwQje9Do
※この項つづく
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