極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

特異点真っ直中 ①

2023年05月08日 | 量子電池


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦
国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと
)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひこにゃん

          

     
       梅雨蝶 代田に残る カオスかな
                          宇


 温暖化環境下において東南極氷床が融解し得ることを発見
   海面が将来大幅に上昇するリスクへの警鐘
【要点】
1.海面が将来大幅に上昇するリスクへの警鐘
2.この氷床の縮小が海面上昇に影響していることを解明。
3.南極氷床と海面変動の将来予測の高精度化への貢献に期待。
【概要】
 4月18日、北海道大学低温科学研究所らの国際的研究グループは、東南
極沖の海底堆積物コアの解析から、地球表層が温暖化していた最終間氷
期(13–11.5 万年前)において、東南極の一部の氷床*3が後退し 当時
の海面上昇に大きく寄与したことを解明。近年の温暖化で、西南極氷床
の融解は加速しており、今後これが数メートル規模の海面上昇につなが
る可能性がある一方、東南極氷床は西南極氷床に比べて、温暖化に対し
て安定的だと考えられてきたが、近年になり東南極氷床の一部で融解が
観測され始めたため、今後の温暖化により、東南極氷床の著しい融解が
起きるかどうかに注目が集まっている。そこで、この研究では、過去の
温暖な時代(最終間氷期)の東南極氷床の変動を復元し、将来の温暖化
で東南極氷床が縮小する可能性があるのかを検証。
その結果、13–11.5万年前の最終間氷期に、東南極氷床の著しい縮小が
2回発生していたことを解明した。これらの氷床の縮小は 海面を約0.8
メートル上昇させるほどの規模であったと見積もられていた。よって、
地球温暖化が持続した場合、西南極氷床だけでなく東南極氷床の一部も
融解し、より大きな海面上昇が引き起こされる可能性があることが示さ
れた。


図1.南極の岩盤の高さと調査地点の地図。上図は南極の岩盤の高さと
地域名を示した。色付きの地域は岩盤が海面下にあり、海洋性の氷床が
存在している。下図はウィルクス海盆の地域を拡大した地図。破線はウ
ィルクス海盆の位置を示す。赤線は、本研究で得られた最終間氷期のウ
ィルクス海盆の氷床の後退位置。
【展望】
本研究は、東南極氷床が温暖化に対して比較的安定と考えられていたの
に反して、温暖化に対する脆弱性を示すとともに、海面上昇に実質的に
寄与する可能性も示唆。これらの結果は、将来の温暖化による東南極氷
床の縮小とそれに伴う海面上昇に警鐘を鳴らす。最新のIPCC(気候変動
に関する政府間パネル)の報告書では、将来の南極氷床の変動予測は不
確実性が大きいとされている。本研究はそのような予測の高精度化の一
助になると考える。東南極にはウィルクス海盆のほかにも、海洋性の氷
床域(リカバリー海盆やオーロラ海盆:図1)が存在する。それらの地
域の氷床が失われると、海面上昇が数メートル以上引き起こされると推
定。本研究から、そのような他の海洋性の氷床域もウィルクス海盆の氷
床と同様に温暖化に脆弱である可能性が示唆。そのため、温暖化による
将来リスクをより正確に評価するためには、東南極の他の海洋性の氷床
域における氷床の安定性に関する研究も進めていく必要がある。


【論文情報】
論文原題:Multiple episodes of ice loss from the Wilkes Subglacial Basin du-
ring the Last Interglacial
(最終間氷期におけるウィルクス海盆からの複数
の氷床縮小エピソード)
雑誌名 Nature Communications(英科学誌)
DOI 10.1038/s41467-023-37325-y
公表日 2023年4月18日(火)(オンライン公開)

     


【再エネ革命渦論 119: アフターコロナ時代 318】
● 技術的特異点でエンドレス・サーフィング
 


❏ 1nm半導体量子細線の作製に成功 
量子の熱帯魚パターンが拓く未来のナノテク
5月4日、京都大学らの国際共同研究グループは、グラファイト基板上に
塩化ルテニウム(半導体)のナノ量子細線を作製する手法を発見。この
量子細線は、厚みと幅が約1ナノメートル(原子数個分)と極めて細い
にもかかわらず、長さが1マイクロメートルを大きく超える。また、ほ
ぼ直線で等間隔に並び、細線の幅や間隔を変えることも可能となる。こ
のような量子細線のパターンは、これまでにはない新しい機構に基づく
もので、熱帯魚のしま模様やキリンのまだら模様が生じるのと同じ原理
で自発的に形成されている可能性が高いことも研究グループは明らかに
した。


【概要】
量子技術の継続的な進歩は、ナノメートル スケールのワイヤの製造に
依存する。いくつかの最先端のナノリソグラフィ技術とボトムアップ合
成プロセスがこれらのワイヤを設計するために使用されてきたが、均一
な原子スケールの結晶ワイヤを成長させ、それらのネットワーク構造を
構築することには重大な課題が残っている。ここでは、ストライプ、X
ジャンクション、Y ジャンクション、ナノリングなど、さまざまな配置
で原子スケールのワイヤを製造する簡単な方法を発見しました。バンド
ギャップがワイドギャップ半導体のバンドギャップに匹敵するモット絶
縁体の単結晶原子スケールワイヤは、パルスレーザー堆積によってグラ
ファイト基板上に自発的に成長します。 これらのワイヤは 1 ユニット
セルの厚さで、正確な幅は 2 および 4 ユニット セル (1.4 および 2.8
nm) で、長さは最大数マイクロメートルです。 非平衡反応拡散プロセ
スが原子パターン形成に重要な役割を果たしている可能性があることを
示唆。この調査結果は、原子スケールでの非平衡自己組織化現象に関す
るこれまで知られていなかった視点を提供し、ナノネットワークの量子
アーキテクチャのためのユニークな道を開く。

【方法及び成果】
今回研究グループは、パルスレーザー堆積法(注 3)を用いて高品質の
塩化ルテニウム(RuCl3 )薄膜をグラファイト基板表面に蒸着した。得ら
れた試料は超高真空下で走査型トンネル顕微鏡(注 4)(STM)に輸送
し、表面を原子分解能で観察した。通常の薄膜成長では、核となる原子
を中心にクラスターが形成される島状成長や、一層ごとに膜が成長する
膜状成長が起きるが、今回得られた結果はそれらとは異なり、幅が原子
数個分のβ-RuCl3 量子細線が周期的にならんだ構造が基板表面に形成
されている(図 1)。驚くべき ことに、この量子細線は幅が原子数個
分であるにもかかわらず、その長さは1マイクロメートル(注 5)以上
にも及びます。また、蒸着時間や基板の温度を変えることで、これらの
量子細線の幅と間隔をチューニングで きます。さらにこの方法では、
縞模様だけではなく、X 字や Y 字のジャンクション・リング・渦巻き
模様も形 成されました(図 2)。これらのパターンはいずれも量子回
路、光感応デバイス、原子コイルなどの応用先が考 えられる、とても
興味深いものである。

研究グループは渦巻き模様を含むいくつかのパターンに注目し、この量
子細線パターンの形成機構は非平衡 プロセス(注 6)である可能性が高
いことを理論的に明らかにしました。このことは、従来考えられていた
限 界を超える、原子スケールのチューリングパターンによる量子細線形
成を示唆。さらに、トンネル伝導 度(注 7)の実験と理論的なバンド計
算(注 8)を比較することで、β-RuCl3の量子細線はモット絶縁体(注
9)であることも明らかにしました。これまでの実験では実現や測定の難
しかった特殊な状態がこの系で生じている可能性がある。
【展望】
従来の限界を超えた、原子数個で構成された量子細線パターン作製の実
現は、新しい超微細加工技術の可能性を拓く。量子細線パターン自身を
回路として使うだけではなく、リソグラフィ用のマスクとし、グラフェ
ンなどの他の物質を微細加工するなどの応用も考えられる。また、得ら
れた量子細線では特異な現象、例えば、朝永・ラッティンジャー液体
呼ばれる電荷とスピンが分離した状態や、トポロジカル量子コンピュー
タの実現に必要なマヨラナ粒子などが出現している可能性がある。今回
の成果は、応用だけでなく基礎研究面でも、新奇物理現象を探索する非
常に興味深い舞台を提供する。
【関連論文】
Growth of self-integrated atomic quantum wires and junctions of a Mott semi-
 conductor”, DOI:10.1126/sciadv.abq5561


❏ カゴメ格子を持つ超伝導体の電子を直接観測
特異な超伝導
状態「カイラル超伝導」実現の可能性
4月26日、東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センタの
研究グループは、「非従来型超伝導体」の1つとして最近注目を集めて
いる「カゴメ格子」を持つ超伝導体において、その超伝導メカニズムを
解明するための重要な手掛かりとなる「超伝導ギャップ構造」を明らか
にしました。「カゴメ格子」とは、原子が「籠目」状に配列した状態の
ことですが、最近カゴメ格子を持つ超伝導体が、これまでに知られてい
るメカニズムとは異なるメカニズムで超伝導が実現している超伝導体で
ある「非従来型超伝導体」であることが明らかになっていたが、多くの
非従来型超伝導体と同様に、カゴメ格子を持つ超伝導体の超伝導転移温
度が低いため、超伝導状態にある電子の直接観測が難しく、そのメカニ
ズムの実験的な理解については限定的。今回、東京大学物性研究所で開
発された「極低温超高分解能レーザー角度分解光電子分光装置」に、「
深紫外連続波レーザー」を新たに導入することで、カゴメ格子を持つ超
伝導体における電子の直接観測に世界で初めて成功。この研究成果は、
カゴメ格子を持つ超伝導体では「時間反転対称性の破れ」が生じている
極めて特異な超伝導状態である「カイラル超伝導」が実現していること
が示唆されるなど、その超伝導メカニズムの全容解明に繋がる重要な知
見となることを期待する。
【要点】
1.非従来型超伝導体の1つとして注目を集めているカゴメ格子を持つ
 超伝導体中の電子状態を世界で初めて直接観測することに成功。
2.非従来型超伝導体の1つとして注目を集めているカゴメ格子を持つ
 超伝導体中の電子状態を世界で初めて直接観測することに成功。
3.カゴメ格子を持つ物質で実現している非従来型超伝導の特徴とその
 メカニズムの全容解明に繋がる重要な知見となることが期待。


図1.カゴメ格子を持つ超伝導体における電子の直接観測と電子ペアの
 回転により生じる時間反転対称性の破れ
【概要】
カゴメ格子を持つ超伝導体も非従来型超伝導体の一つで、今回研究対象
となった物質であるCsV3Sb5は絶対温度約93度で、物質中の電子の電荷密
度が周期的に変調する「電荷密度波転移」と呼ばれる相転移を示し、約
3度で超伝導を示唆。さらに、電荷密度波転移に伴い時間反転対称性の
破れが生じている証拠が得られていることから、超伝導状態においても
時間反転対称性の破れが生じている可能性があることで注目を集めてい
たが、超伝導を示す温度が低いことから、その超伝導状態の全容解明が
困難。今回、CsV3Sb5におけるバナジウム(V)を少量ニオブ(Nb)や タンタ
ル(Ta)で置換すると超伝導転移温度が上がることに着目(図2)。さらに、
バナジウムの7%をニオブで置換すると超伝導転移温度が5度程度に上が
る一方で電荷密度波転移は残るのに対し、バナジウムの14%をタンタル
で置換すると超伝導転移温度は同程度上がる一方で電荷密度波転移が無
くなる。したがって、両者の超伝導状態の詳細を調べることで、電荷密
度波転移と超伝導の関係について理解できることが期待されます。また、
東京大学物性研究所で開発された、世界最高性能を誇る「極低温超高分
解能レーザー角度分解光電子分光装置」に、今回株式会社オキサイドが
開発した「深紫外連続波レーザー」を導入することにより、これら2種
類の試料の超伝導状態をより高精細に調べることを可能にした。


図2.Cs(V1-xNbx)3Sb5およびCs(V1-xTax)3Sb5の電荷密度波転移温度および
超伝導転移温度バナジウムをニオブで置換すると超伝導転移温度が上が
る一方で電荷密度波転移は無くならないのに対し、バナジウムをタンタ
ルで置換すると超伝導転移温度は上がる一方で電荷密度波転移が無くな
る。
【成果】
世界で初めてカゴメ格子を持つ超伝導体の「超伝導ギャップ構造」を高
精細に測定することに成功した。図3がその結果で、両試料ともに超伝
導状態における電子対のペアリングの強さを示す「超伝導ギャップ」の
大きさが、電子の軌道や運動方向に依らないことを明らかにしました。
さらに、電荷密度波転移が無くなったTa置換試料において、超伝導状態
において時間反転対称性が破られていることを示唆する結果も得ており、
電荷密度波転移の有無に関係なく、これらのカゴメ格子を持つ超伝導体
においては電子のペアが右回りもしくは左回りに回ることで時間反転対
称性の破れが生じる「カイラル超伝導」という特異な超伝導状態が実現
している可能性があることを明らかにした(図4)。

図3.この研究により明らかになった電荷密度波転移と超伝導ギャップ
(電子のペアリングの強さ)の関係電荷密度波転移の有無に関わらず、電
子の軌道や運動方向に依らない等方的な超伝導ギャップとなることを解
明する。
【展望】
今回導入された「深紫外連続波レーザー」により、今後もさまざまな超
伝導体における超伝導状態の詳細が明らかにされるとともに、これまで
に無い超伝導のメカニズムが発見されることが期待されており、中には
より高い温度での超伝導の実現、室温超伝導を実現し得る新たなメカニ
ズムの発見に繋がる。
【関連技術情報及び脚注】
1.カゴメ格子を持つ超伝導体の電子を直接観測 ―特異な超伝導状態「
カイラル超伝導」実現の可能性―, 東京大学物性研究所, 2023.04.27
2.超高分解能角度分解光電子顕微分光装置の開発に成功:Development
of laser-based scanning µ-ARPES system with ultimate energy and momentum
resolutions, Ultramicroscopy Volume 182, November 2017, Pages 85-91,
https://doi.org/10.1016/j.ultramic.2017.06.016
 
3.広島大学放射光科学研究センタ:
http://www.hsrc.hiroshima-u.ac.jp/research/result/44.html#header,
4.極低温超高分解能レーザー角度分解光電子分光装置:紫外線やX線を物
質に照射すると、光電効果により電子が放出されます。単一のエネルギーを
持つ紫外線レーザーを照射して、放出される光電子の放出方向と運動エネル
ギーを測定することで、物質中の電子の運動量とエネルギーの関係、分散関
係が導出できる実験が「レーザー角度分解光電子分光」という実験手法です
。本研究グループは東京大学物性研究所において、より多くの物質が超伝導
状態になる極低温まで温度を下げることを可能にし、さらに電子の運動エネル
ギーをより精密に測定できるようにすることで超伝導ギャップをより高精細に
測定することも可能にした「極低温超高分解能レーザー角度分解光電子分光
装置」を開発しました。

❏ 高分子のモノマー配列を質量分析とAIで決定する解析手法
新たな素材開発やプラスチックのリサイクル・劣化評価のツール
04.28 国立研究開発法人物質・材料研究機構 (NIMS) は質量分析にAI
を取り入れることで、高分子のモノマ配列を決定する手法を開発。
【要点】
1.高分子 (ポリマ) は、原料である小さな分子 (モノマー) が百~
 数十万個も鎖状につなぎ合わさってできた巨大分子です。中でも、身
 の回りにあふれる高分子材料 (プラスチックや樹脂) の多くは、いく
 つかのモノマを組み合わせたコポリマという高分子を設計することで、
 望みの材料性能を発揮させているが、複数種類のモノマが特徴的な並
 び方をした部分配列 (短い鎖) を構成し、それがランダムに繋がって
 コポリマを形作っている----例えば、同じ種類のモノマが連続する割
 合が高い・低いといった配列の分布は、材料の性能や劣化挙動などに
 大きな影響を与えると考えられている。この様な関係性に基づいて最
 適な高分子材料を分子設計には、配列分布を定量的に決定できる「ポ
 リマ・シークエンサ」の開発が望まれていたが、実験的に配列を決定
 できる汎用的な解析手法はこれまでなかった。
2.今回、研究チームは、質量分析データをAIによって解析することで
 配列分布を定量的に決定する、世界初の実用的なポリマ・シークエン
 サを開発。具体的には、プラスチック材料を室温から徐々に加熱する
 と、鎖状の高分子は切れやすい部分から連続的に分解します。この高
 分子の断片を質量分析すると、元々の高分子に含まれていた部分配列
 の種類とその個数を反映した質量分析データが得られる。この実測さ
 れた質量分析データをAI解析し、元々の高分子を、部分配列ごとに並
 んだ仮想的な高分子として並び替えることで、高分子の中での配列を
 定量化した。ポリマーシークエンサによる配列解析は、モノマの種類
 や成分数に制約を受けず、広範なモノマの組み合わせに対
しても適用
 できる。また断片が気化さえすれば、不溶・不融のサンプルや、無機
 成分を含むコンポジットでも解析できることから、様々な実材料への
 応用が期待される。
3.質量分析データをAIにより解析することで配列分布を定量的に決定
 する、世界初の実用的なポリマ・シークエンサを開発。具体的には、
 プラスチック材料を室温から徐々に加熱すると、鎖状の高分子は切れ
 やすい部分から連続的に分解。この高分子の断片を質量分析すると、
 元々の高分子に含まれていた部分配列の種類とその個数を反映した質
 量分析データが得られる。この実測された質量分析データをAI解析し、
 元々の高分子を、部分配列ごとに並んだ仮想的な高分子として並び替
 えることで、高分子の中での配列を定量化した。ポリマ・シークエン
 サによる配列解析は、モノマの種類や成分数に制約を受けず、広範な
 モノマの組み合わせに対しても適用できる。また断片が気化さえすれ
 ば、不溶・不融のサンプルや、無機成分を含むコンポジットでも解析
 できることから、様々な実材料への応用が期待されている。
4.今後、「ポリマ・シークエンサ」を基軸に、高分子材料における配
 列—物性相関解析や、配列制御重合法の開発を進めることで、高分子材
 料全般の性能向上を図っていく。これにより、機能的なプラスチック
 による環境汚染問題の解決や、サーキュラ・エコノミに資する高分子
 材料の開発への展開できる。
【関連論文】
題目 : A data-driven sequencer that unveils latent “codons” in synthetic copolymers
著者 : Yusuke Hibi, Shiho Uesaka, Masanobu Naito
雑誌 : Chemical Science
掲載日時 : 2023年3月21日
掲載 DOI :10.1039/D2SC06974A


図.高分子鎖の仮想的再配列による部分配列の定量

❏ 固体電解質表面におけるリチウムの移動度を探る
4月28日、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究グループは、
電池内部のナノスケール変化----電解質と電極の接合部において、高速
振動がリチウムイオンの移動を遅くしていることを発見し、電池の性能改
善に新たな展望をもたらす可能性を見い出す。




NbFeSbハーフホイスラー合金の粒界相:
  熱電材料の輸送特性を調整するための新しい方法
【要役】
燃料やバイオ燃料を燃やすと、多くのエネルギーが廃熱として失われる。
熱電材料を使用するとこの熱を電気に変換できるがが、現在の材料は技
術的な応用には効率的ではない。Max Planck Institut für Eisenforschung
研究グループは、熱電材料の微細構造の影響を明らかにし、チタンを添
加することで材料の特性を最適化することにより、熱電材料の効率を高
めました。材料の粒界相の化学と原子配列は、粒界を通る電子の伝導を
定義し、チタン添加することで、電気伝導性が向上。
熱電材料は、温度差があると電気電圧が生成されるため、廃熱から電気
を生成することができる。現在の熱電材料は十分に効率的ではないため
熱電材料の最適化により、産業用途に繋げることができる。
同グループは、8%の効率で廃熱を電気に変換できるニオブ、鉄、アン
チモンの合金を研究し、チタンを添加することで効率を最大40%まで高
めることができた。現在の研究は、材料の原子構造と機能的特性を関連
付け、特定の特性を最適化する方法を示す。
 


図1.電気輸送に対する粒子サイズの影響。 粒径 (GS) は焼結温度によ
って調整され、a) 1123 K および b) 1273 K で焼結されたNb0.95Ti0.05
FeSb サンプルと、c) 1123 K および d で焼結された Nb0.80Ti0.20FeSb
サンプルの EBSD マップに示されています。 ) 1273 K. e) 電気伝導度
σ と f) 加重移動度 μw は、Nb0.80Ti0.20FeSb のさまざまな粒径の影響
をほとんど受けないが、Nb0.95Ti0.05FeSb の微粒子では大幅に低下する。
【関連論文及び情報】
1.Grain Boundary Phases in NbFeSb Half-Heusler Alloys: A New Avenue to
    Tune Transport Properties of Thermoelectric Materials, Advanced Energy
      Materials Volume 13, Issue 13 2204321 ,
      https://doi.org/10.1002/aenm.202204321
2.More power from waste heat. Tuning thermoelectric materials for efficient
     power generation, Max-Planck- Gesellschaft, April 28, 2023

❏ 高強度ゲル電解質被膜がリチウム金属負極の寿命を延ばす
リチウム二次電池のエネルギー密度大幅増に期待
4月19日、国立研究開発法人物質・材料研究機構 (NIMS)の研究グループは
非常に高い力学強度をもつ高分子ゲル電解質を創製し、リチウム金属負極の
保護被膜に適用することで、リチウム金属電池のサイクル性能を大幅に向上
に成功。 
【要点】
1.リチウム金属負極は非常に高い理論容量と低い作動電位を持つ反面、充
 電と放電に伴うリチウムの溶解と析出のサイクルが不完全になりやすく、充
 放電サイクルの寿命や安全性に問題があります。そのため、リチウム金属
 負極を用いた二次電池の充放電サイクルの安定性を向上させる技術が求め
 られている。
2.高濃度リチウム塩を含む有機溶媒 (電解液) と水素結合性高分子から形
 成されるゲル電解質を開発しました。このゲル電解質は非常に高い力学強
 度と伸長性を持つことが特長で、これをリチウム金属負極の人工的な保護
 被膜として用いることで、サイクル安定性が大きく向上することが今回実証
 された。
【要約】
濃縮リチウム (Li) 塩電解質の強いインターポリマー水素結合を利用して調製
できる、非常に丈夫で伸縮性のあるゲル電解質が報告されている。 これらの
電解質は、ポリマー鎖、溶媒分子、Li カチオン、および対アニオン間の競合的
な水素結合相互作用を最適化することによって実現できる。 通常、インターポ
リマーの水素結合を妨げる遊離極性溶媒分子は、濃縮電解質にはほとんど
ない。 この機能を利用して、前例のない靭性を備えた水素結合ゲル電解質を
調製できる。 対照的に、遊離溶媒分子は典型的な濃度の電解質に豊富に含
まれており、かなり弱いゲル電解質を生成。 頑丈なゲル電解質は、Li 金属ア
ノードの人工保護層として使用できる。これは、均一な Li の析出/溶解により、
Li 対称セルのサイクル安定性が大幅に向上するためであり、ゲル電解質を
保護層として使用すると、Li||LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2 フルセルのサイクル性能が
大幅に向上する。


【展望】
保護被膜としてのゲル電解質の最適化を進め、広範な電解液系への応用や
次世代正極との組み合わせを検討。

❏  レーザー焼き入れで使用済み歯車を修復、寿命を新品同等以上に延長
4月25日、日立建機株式会社とNIMSは、使用済み歯車の表面にレーザー焼
き入れすることで、摩耗によって損傷した部分を修復する手法を共同で開発。
尚、なお、本手法は、炭素を拡散させて金属の表面を強化する浸炭処理を施
した歯車を対象とする。
【要点】
これにより、従来、廃棄の対象としていた歯車の再生利用率が約25%向上。
20トンクラスの油圧ショベルの場合、毎回の定期部品交換時、新品ではなく再
生された歯車を利用することで、新品部品を製造するときに発生するCO2排出
量1台当たり約13kgの低減が見込まれます。将来的には、鉱山機械の再生部
品への本手法の適用や部品再生を行っている日立建機グループの海外拠点
への導入も計画している。



❏ リチウムイオン電池を超える走行距離を実現するリチウム空気電池
2月22日、・アルゴンヌ国立研究所(ANL)とイリノイ工科大学の共同研究グル
ープが、一回の充電で 1,000 マイル(約 1,600km)の航続距離を可能にするリ
チウム空気電池を開発。
【要点】
1.従来設計の液体電解質に代わる固体電解質を使用した新電池設計で、リ
 チウムイオン電池の最大 4倍のエネルギー密度(1,200Wh/kg)が可能。航空
 機や長距離トラックへの給電も期待できる。また、固体電解質では、液体電
 解質のような過熱や発火の危険性が無く、安全性が確保できる。
2.室温下での電子 4 個による反応を初めて達成したリチウム空気電池設計
 で、空気中の酸素を使用して作動する。初期設計の課題であった酸素タンク
 も不要。
3.リチウム空気電池では、放電時にリチウム金属アノードのリチウムが液体
 電解質中を移動して酸素と結合後、カソードで過酸化リチウム(Li2O2)や超
 酸化物(LiO2)を形成し、充電時にはそれらがリチウムと酸素に分解されるこ
 とでエネルギーを貯蔵・放出。
4.新電池設計の固体電解質は、比較的安価な元素のナノ粒子ベースのセラ
 ミックポリマー材料で構成され、放電時に酸化リチウム(Li2O)生成反応を促
 進する。従来の Li2O2 や LiO2 の化学反応に含まれる電子は酸素分子毎
 に 1~2 個。一方、Li2O では 4 個の電子が含まれるため、より高いエネル
 ギー密度が得られる。
【要約】
リチウム酸化物 (Li2O) の形成に基づくリチウム空気電池は、理論的にはガソ
リンに匹敵するエネルギー密度を提供できる。 酸化リチウムの形成には、そ
れぞれ超酸化リチウム (LiO2) と過酸化リチウム (Li2O2) をもたらす 1 電子お
よび 2 電子反応プロセスよりも達成が難しい 4 電子反応が含まれる。 修飾ポ
リエチレンオキシド ポリマー マトリックスに埋め込まれた Li10GeP2S12 ナノ粒子
に基づく複合ポリマー電解質を使用することにより、Li2O が室温固体リチウム
空気電池の主な生成物であることを発見した。 このバッテリーは、分極ギャッ
プが小さく、1000 サイクルの充電が可能で、高速で動作する。 4 電子反応は、
混合イオン-電子伝導性放電生成物とその空気との界面によって可能となる。
----------------------------------------------------------------------------------------------
【関連特許情報】



❏ WO2016/002277 <多孔質体およびその製造方法、構造体、蓄電装置、触
媒、トランジスタ、センサー、太陽電池、リチウム電池および気化装置 アンヴ
ァール株式会社
【要約】
下図1のごとく、 平均サイズが2μm以下であり、かつ最小サイズが60nm以
上である細孔を有する炭素構造体20を具備する多孔質体。多孔質金属10と
、前記多孔質金属の表面を覆うように設けられた層状構造を有する遷移金属
カルコゲナイド膜24と、を具備する多孔質体。脱合金化により形成された多
孔質金属10を細孔12およびリガメント14のサイズが大きくなるように熱処理
する工程と、前記多孔質金属の表面に、ディラックコーン型の電子状態密度を
有する炭素構造体20を形成する工程と、を含み、前記熱処理する工程は、前
記炭素構造体を形成する工程の前または同時に実施される多孔質体の製造
方法。

図1.(a)から図1(d)は、実施形態1に係る多孔質体の製造方法を示す断面
   図である。
【符号の説明】
10 多孔質金属 12 細孔 14 リガメント 20 炭素構造体 22 細孔 24 層 30、
32 多孔質体 34、36 構造体 40 蓄電装置 42 正極 44 電解質 46 負極
【請求範囲】
【請求項1】 平均サイズが2μm以下であり、かつ最小サイズが60nm以上で
ある細孔と前記細孔を覆うように設けられたグラフェン層とを有する炭素構造
体を具備することを特徴とする多孔質体。
【請求項2】 前記炭素構造体は、ディラックコーン型の電子状態密度を有する
ことを特徴とする請求項1記載の多孔質体。
【請求項3】 前記細孔内は空洞であることを特徴とする請求項1または2記載
の多孔質体。
【請求項4】 多孔質金属を具備し、 前記炭素構造体は、前記多孔質金属の表
面を覆うことを特徴とする請求項1または2記載の多孔質体。
【請求項5】 前記炭素構造体は、触媒となる物質を含むことを特徴とする請求
項1から4のいずれか一項記載の多孔質体。 【請求項6】 前記炭素構造体は、
窒素、ホウ素、リン、硫黄、ニッケルおよびマンガンの少なくとも1つを含むこと
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の多孔質体。
【請求項7】 前記細孔の平均サイズは1μm以下であることを特徴とする請求
項6記載の多孔質体。
【請求項8】 多孔質金属と、 前記多孔質金属の表面を覆うように設けられた層
状構造を有する遷移金属カルコゲナイド膜と、 を具備することを特徴とする多
孔質体。
【請求項9】 請求項1から8のいずれか一項記載の多孔質体を潰した構造を有
することを特徴とする構造体。
【請求項10】 結晶粒の平均サイズが2μm以下である金属と、 前記結晶粒を
覆うように粒界に設けられたグラフェン層と、 を具備することを特徴とする構
造体。
【請求項11】 請求項3記載の多孔質体の炭素構造体を酸化させた構造を有
することを特徴とする構造体。
【請求項12】 請求項1から7のいずれか一項記載の多孔質体の炭素構造体
を酸化および還元させた構造を有することを特徴とする構造体。
【請求項13】 請求項1から8のいずれか一項記載の多孔質体または請求項
9から12のいずれか一項記載の構造体を含むことを特徴とする蓄電装置。
【請求項14】 請求項1から8のいずれか一項記載の多孔質体または請求項
9から12のいずれか一項記載の構造体を含むことを特徴とする触媒。
【請求項15】 請求項1から8のいずれか一項記載の多孔質体または請求項
9から12のいずれか一項記載の構造体を含むことを特徴とするトランジスタ。
【請求項16】 請求項1から8のいずれか一項記載の多孔質体または請求項
9から12のいずれか一項記載の構造体を含むことを特徴とするセンサー。
【請求項17】 請求項1から8のいずれか一項記載の多孔質体または請求項
9から12のいずれか一項記載の構造体を含むことを特徴とする太陽電池。
【請求項18】 脱合金化により形成された多孔質金属を細孔およびリガメント
のサイズが大きくなるように熱処理する工程と、 前記多孔質金属の表面に、
前記多孔質金属を覆うグラフェン層を形成することにより炭素構造体を形成
する工程と、 を含み、 前記熱処理する工程は、前記炭素構造体を形成する
工程の前または同時に実施されることを特徴とする多孔質体の製造方法。
【請求項19】 NおよびSの少なくとも一方がドープされ、平均サイズが2μm以
下であり、かつ最小サイズが60nm以上である細孔と前記細孔を覆うように
設けられたグラフェン層とを有する炭素構造体を含む電極を具備することを特
徴とするリチウム電池。
【請求項20】 前記電極は正電極であり、前記リチウム電池はリチウム空気電
池であることを特徴とする請求項19記載のリチウム電池。
【請求項21】 請求項1から8のいずれか一項記載の多孔質体または請求項
9から12のいずれか一項記載の構造体を含むことを特徴とする気化装置。

尚、下記の特許事例は、リチウム電池及び全固体二次電池で、千回リサイク
ルを条件とし空気電池でない事例で膨大な(135頁)特許である。

❏ 特開2023-22303 複合型単層化学架橋セパレータ 旭化成株式会社
【要約】
図1のごとく、蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフ ィンを含む基材と、そ
の上に形成された一つ又は複数の 層を有する。基材に含まれるポリオレフィ
ンは、蓄電デ バイス内で架橋構造を形成する1種又は2種以上の官能 基を
有する。一実施形態において、層は、無機粒子を含 む層及び熱可塑性ポリ
マーを含む層である。他の実施形 態において、層は、熱可塑性ポリマー含有
層、活性層、 及び耐熱性多孔質層などの表面層であることで、より安全性の
高い蓄電デバイス用セ パレータ、及びこれを用いた蓄電デバイス等を提供す
る 。

図1.図1(A)は、非架橋ポリオレフィン基材層と無機粒子層とを有する蓄電
デバイ ス用セパレータの両端を開放した状態で熱収縮させたときの挙動を示
す模式図である。図 1(B)は、非架橋ポリオレフィン基材層と無機粒子層とを
有する蓄電デバイス用セパレ ータの両端を固定した状態で熱収縮させたとき
の挙動を示す模式図
【符号の説明】
 1a  非架橋ポリオレフィン基材層  1b  架橋ポリオレフィン基材層  2  
無機粒子層  3  熱可塑性ポリマー層  4  応力  5  無機粒子層の座屈
破壊  6  基材層の引張破壊  7  局所短絡  8  圧力  9  島構造  
10  セパレータ  20  固定治具  30  正極  40  負極  100 蓄電
デバイス  d  島構造同士の距離


風蕭々と碧い時代


 John Lennon

J-POPの系譜を探る:1990年代】


曲名:浪漫飛行   唄:米米CLUB
作詞・作曲 米米CLUB

80年代後半から90年代後半を代表するバンドのひとつである米米CLUBは、
数々のミリオンセラーを生み出していが、1982年に結成され、1985年10
月21日にデビュー。アマチュア時代より「謎のパフォーマンスグループ」
としてメディア出演を精力的に行い、当初は奇抜なルックスとお笑い芸
人のようなパフォーマンスで「イロモノ」として活動。音楽ジャンルは
大まかにポップスとされることが多いが、ソウルやファンク、ムード歌
謡など幅広いジャンルをこなす。1990年4月8日にリリースされた10枚目
のシングル『浪漫飛行』。週間オリコンチャートでは堂々の1位を獲得
し後世に語り継がれる、今もなお様々なメディアで使用される楽曲だが、
日本航空のCMソングにも起用され、1996年の紅白歌合戦ではこの楽曲を
演奏した。

● 今夜の寸評:(いまを一声に託す)未来は善き縁で開かれる。
   Good encounters can lead you to a better future

『阿弥陀経』は、大乗仏教の聖典の一つ。原題は『スカーヴァティー・
ヴィユーハ』で、「極楽の荘厳」「幸あるところの美しい風景」の意味
である。サンスクリットでは同タイトルの『無量寿経』と区別して『小
スカーヴァティー・ヴィユーハ』とも呼ぶ。略称は、『無量寿経』の『
大経』に対して、『小経』と呼ばれる。まず阿弥陀仏の極楽浄土の荘厳
を説き、次にその浄土に往生するために阿弥陀仏の名号を執持(しゅう
じ)することを勧め、次に六方世界諸仏がこの説を讃嘆・証誠して信ず
ることを勧めていることを話した後、極楽に生まれるように願いを起こ
すべきであることを再び説き、ブッダにとって、この乱れた世界の人々
にこれらのことを信じてもらうことはとても困難な事だったと締め括ら
れる。via Wikipedia

 


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