極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

最新熱触媒及び熱電変換素子工学論 ③

2023年07月11日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。



        夏燕 美味し拉麺 つたう汗 
                       



初夏の頃
words and music by 浜田省吾

蒼い雲が河を流れる此処は僕等の最後の世界
木立に透けて見える初夏の陽差しと甘い憂僻
押し寄せる何もかもまるで夏の雨のように
独り何処かに隠れて生きてゆけたかな
顔を背け何も信じなかった
昨日までのことがまるで夢のように遠い
きっと君も僕と同じように
ひとりぼっちの日を歩き続けてきたんだろう
行ってしまうよ僕が泣き出さないように
君の腕の中に強く抱きしめておくれ
行ってしまうよ僕が泣き出す前に
君の腕の中に強く抱きしめておくれ

 

   Part 1 Chapter 3
  ぽくもきみも、互いの家を訪問したりしない。相手の家族と
 顔を合わせることもないし、それぞれの友だちを紹介しあうこ
 ともない。ぽくらは要するに誰にもIこの世界中のいかなる人
 にも-邪魔をされたくないのだ。ぽくときみは、ニ人で時を過
 ごしているだけで十分満ち足りているし、他の何かを付け加え
 たいとは思わない。また、ただ物理的な観点から見ても、何か
 を付け加えるような余地はそこにはない。前にも述べたように、
 ぽくらの間には語り合うべきことが山ほどあるし、二人で一緒
 にいられる時間は限られているからだ。
  きみは自分の家族のことをほとんど語らない。ぽくがきみの
 家族について知っているのは、いくつかの細切れの事実だけだ。
 父親は地方公務員だったが、きみが十一歳のときに何か不手際、、、
 あって辞職を余儀なくされ、今は予備校の事務員をしていると
 いうことだ。どんな不手際だったかは知らない。でもどうやら、
 きみがその内容を口にしたくない類の出来事であったようだ。
  実の母親は、きみが三歳の時こ内蔵の願で亡くなった。だか
 ら記憶はほとんどない。顔も思い出せない。きみが五歳の時、
 父親は再婚し、翌年妹が生まれた。だから今の母親はきみにと
 って親しみをもてるわけだが、父親に対してよりはその母親の
 方に「まだ少しは親しみが持てるかもしれない」という意味の
 ことを、きみは一度だけ口にしたことがある。本のページの隅
 に小さな活字で記された、さりげない注釈みたいに。六歳年下
 の妹については、「妹には猫の毛アレルギーがあるので、うち
 では猫が飼えない」という以上の情報は得られなかった。
  きみが子供の頃、心から自然に親しみを抱くことができたの
 は、母方の祖母だけだ。きみは機会があれば一人で電車に乗っ
 て、隣の区にあるその祖母の家を訪れる。学校が休みの時期に
 は何日か泊めてもらうこともある。祖母は無条件にきみを可愛
 がってくれる。乏しい収入の中から細々したものを買い与えて
 もくれる。しかし祖母に会いに行くたびに、義母の顔に不服そ
 うな表情が浮かぶのを目にして、何かを言われたわけではない
 のだが、次第に祖母の家から足が遠のくようになる。その祖母
 も数年前に心臓病で急逝してしまった。
  きみはそんな事情を細切れにぽつぽつと話してくれる。古い
 コートのポケットからぼろぼろになった何かを、少しずつすく
 い出すみたいに。
  もうひとつ今でもよく覚えていること-きみはぼくに家族の
 話をするとき、なぜかいつも自分の手のひらをじっと見つめて
 いた。まるで話の筋を辿るためには、そこにある手相(か何か)
 を丹念に読み解くことが必要不可欠であるかのように。
  ぼくの方はといえば、自分の家族についてきみに語るべきこ
 となど、ほとんど見当たらなかった。両親はごくありきたりの
 普通の親だ。父親は製薬会社に勤めており、母親は専業主婦。
 ありきたりの普通の親のように行動し、ありきたりの普通の親
 のように語る。年老いた黒猫を一匹飼っている。学校での生活
 についても、とりたてて語るべきことはない。成績はそれほど
 悪くはないが、人目を引くほど優秀なわけでもない。学校でい
 ちばん落ち着ける場所は図書室だ。そこで、一人で本を読んで
 空想のうちに時間を潰すのが好きだ。読みたい本のおおかたは
 学校の図書室で読んでしまった。

  きみと初めて出会ったときのことはよく覚えている。場所は
 「高校生エッセイ・コンクール」の表形式の会場だった。五位
 までの入貧者がそこに呼ばれた。ぽくときみは三位と四位で、
 座っていた席が隣同士だった。季節は秋で、ぼくはそのとき高
 校二年生、きみはまだ一年生だった。
  式は退屈な代物だったので、ぽくらはその合間に小さな声で
 少しずつ短く話をした。きみは制服の紺のブレザーコートを着
 て、揃いの紺のプリーツスカートをはいていた。リボンのつい
 た白いブラウス、白いソックスに黒のスリップオン・シューズ。
 ソックスはあくまで白く、靴はしみひとつなくきれいに磨かれ
 ていた。親切なこびとたちが七人がかりで、夜明け前に丁寧に
 磨いてくれたみたいに。
  ぽくは文章を書くのがべつに得意なわけではない。本を読む
 のは小さな頃から大好きで、暇さえあれば本を手に取ってきた
 が、自分で文章を書く才能は持ち合わせていないと思っていた。
 でもクラスの全員が、コンクールのために国語の授業中に強制
 的にエッセイを書かされ、その中からぼくの書いたものが選ば
 れて選考委員会に送られ、最終選考に残り、そして思いもよら
 ず上位入賞してしまったのだ。正直言って自分の書いた文章の
 どこがそれほど優れているのか理解できなかった。読み返して
 みても、取り柄のない平凡な作文としか思えない。でもまあ何
 人かの審香具がそれを読んで、賞をやってもよいと思ったから
 には、何かしら見どころはあったのだろう。
                      この項つづく

※めっきり視力が低下し、一旦、スキャナに落とし込んで拡大読ん
でいるわたしに、"そんなに食らいついてまでして、文学したいの
か?”という自問に、"そうだ!
"と答えるわたしに、"やめちゃい
なよ!"と叱る彼女の声が頭を過ぎる。

 

     

 

  

【再エネ革命渦論 145: アフターコロナ時代 144】
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中  ㉘
ここ数年の科学技術進展に驚く昨今。今日も気になる事例を摘出。

固体中の熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる熱電発電
は,持続可能な社会を実現有望技術の一つ。
広く用いられている熱
電発電の原理は,1821年にT. J. Seebeck博士によって発見された
ゼーベック効果であり,この現象を用いれば温度勾配に平行な方向
(以下,縦方向)に電圧や電流を発生させることができる.与えた
温度勾配と縦方向に発生した電場との比はゼーベック係数と呼ばれ,
ゼーベック効果に基づく熱電能を示す、ゼーベック効果を利用した
熱電変換素子は,p型導体とn型導体のペアを多数直列接続した構造
を有す.p型(n型)導体のゼーベック係数は正(負)であり,各導
体の熱起電力が加算され,素子全体の出力は導体ペア数に比例.導
体一つ一つからはmVオーダーの熱起電力しか発生しないが,集積化
で実用的な大きな電圧を得ることができる。

ここで、熱電発電の性能は無次元性能指数ZTで評価されるゼーベッ
ク効果の場合,ZTはゼーベック係数の2乗と電気伝導率に比例し,熱
伝導率に反比例する(Tは絶対温度).長らくZTが1を超えることが
熱電材料の実用化への指標とされてきが,ZT=1をはるかに超えるさ
まざまな材料が合成・発見されている。材料レベルでの革新的な進
展とは対照的に,熱電発電技術の応用対象は未だ限定的あり、この
状況の一端は,ゼーベック素子の複雑な構造にある.p型・n型導体
のペアあたり4つの接合があるこの素子構造では,①
接触電気抵抗と
接触熱抵抗が大幅に増大し,材料レベルで優れた特性が得られてい
ても素子化によりエネルギー変換効率が低下してしまう。②また,
素子の熱的・機械的耐久性や製造コストにも課題がある。これらの
問題を解決し得る一つの手段が,“横型”熱電変換といわれるのも
である。横型熱電効果を用いれば、温度勾配と垂直な方向(横方向)
に電圧や電流を発生させることがでる。

横型熱電効果のZTもゼーベック効果とほぼ同様の定義であり,横方
向に発生した電場を与えた温度勾配で規格化した値(横熱電能)の
2乗と電気伝導率に比例し,熱伝導率に反比例。横型熱電効果によっ
て誘起される電圧および電力はそれぞれ,横方向に材料の長さ・面
積を増やすことによって増強でき、多数の接合構造を形成する必要
はない。このため横型熱電効果は,広面積に分散した熱エネルギー
の再利用に適している.電圧・電流取り出し用の接点を除いて接合
の無い横型熱電変換素子においては、接触電気・熱抵抗の問題が存
-+在しないことから①材料のZTから期待される素子効率を得るこ
とができる。②さらには素子の耐久性向上・低コスト化にも効果的
だと期待されている.このように横型熱電変換は多くの利点を有す
る一方,横熱電能が実用レベルに達していないなどさまざまな課題
が残されており,未だ基礎研究フェーズに留まる。このように、横
型熱電変換はさまざまな物理現象によって駆動され,①均質材料に
おいて生じる現象と②複合材料において生じる現象に大別されてい
る。
via 横型熱電変換 接合の無い熱電変換素子の実現に向けて 内田 
  健一 物質・材料研究機構 – 応用物理学会、2023年4月3日公開。

【最新特許事例】
1.特開2021-48280 グラファイト集積膜、グラファイト集積膜の製
 造方法、並びに該グラファイト集積膜を用いた熱電変換層及び熱
 電対機能ないし熱発電機能つき放熱材
【概要】
グラファイト、およびそれを薄片化したグラフェンは、面内方向に
おいて非常に高い熱伝導率を持つ(非特許文献1)。この特長を活
かし、自動車の制御用電子部品や一般用電子機器の発熱部品からの
放熱を行う部材として、グラファイト放熱基板が開発されている(
特許文献1)。
一方、排熱をエネルギーとして有効利用するために、複数の熱電変
換素子を接続してなる熱電変換モジュール(発電装置)が用いられ
ており、熱電変換層に、グラフェン又はその炭素原子の一部がヘテ
ロ原子で置換されたグラフェン、或いは、グラフェン積層体(グラ
ファイト)又はグラファイトの層間にゲスト剤(挿入化合物)が挿
入されたグラファイト層間化合物を用いて、熱電変換素子を形成す
る技術がある(特許文献3)。
【特許文献1】 特開2016-153356号公報
【特許文献2】 特開2002-261218号公報
【特許文献3】 国際公開第2015/163178号
【非特許文献1】Alexander A.Balandin,Thermalproperties of graphene-
and nanostructured carbon materials,Nature Material
s,vol.10,pp.569-581
.(2011).

しかしながら、 特許文献1を例とした従来のグラファイト放熱基板
は、発熱部品からの放熱を行うことのみを目的としており、それ自
体で温度計測を行う機能や熱発電の機能は有していない。また、特
許文献2のように放熱時の発熱部品の温度計測を目的として放熱用
のヒートシンク内に熱電対を埋め込む技術の場合、ヒートシンクへ
の加工や熱電対の接合を要するだけでなく、接合した熱電対が熱伝
導を妨げて本来の放熱性能を低下させる他、発熱部品と熱電対との
間の熱抵抗を下げることが困難であり、発熱部品の正確な温度計測
を行うことを困難とする。 さらに特許文献3のようにグラファイト
やグラフェンを用いた熱電変換素子ではP型及びN型のキャリアド
ーピングを可能にし、熱電発電や熱電対としての機能を持たせるこ
とは可能であるが、ドーピングのために炭素原子の一部を他の原子
に置換したり、グラファイト原子層間に化合物を挿入したりすると、
それらがフォノン散乱を起こして熱伝導を妨げるため、従来の放熱
用に用いられるグラファイト基板に比べて熱伝導率及び熱拡散率が
数~数十分の一に低下し、放熱材としての利用は困難である。 さら
に、これらの化合物は真空や高温での化学反応を要するため製造時
の投入エネルギーが大きい他、グラファイト層間化合物は不安定で
脱離しやすいため封止剤が必要であり、これがさらに熱抵抗を生じ
て放熱性を低下させる。加えて、グラファイト層間化合物において
グラファイト層間に挿入される物質は、塩化銅や塩化鉄等の腐食性
の高い物質であり、周囲の金属部品や電子部品を腐食し損傷するお
それがある。 本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであ
りグラファイトやグラフェンを用いて、簡便な方法で、放熱用に充
分な熱伝導率及び熱拡散率を有するとともに熱電変換機能を有する
集積膜を得ることを目的とするものである。また、本発明は、得ら
れた集積膜を用いて、熱電変換素子、或いは熱電対機能ないし発電
機能付き放熱材を提供することをもう1つの目的とするものである。
------------------------------------------------------------
薄片化したグラファイト粉末を用い、これを界面活性剤等の荷電特
性を制御可能な化合物の水溶液中に分散してその表面を該水溶液で
被覆した後、得られたグラファイト分散液を濾過・成膜して得られ
たグラファイト集積膜を用いることにより上記課題を解決し、薄片
化したグラファイトを用いて、簡便な方法で、放熱用に充分な熱伝
導及び熱拡散率を有するとともに、熱電変換機能を有する集積膜を
提供し、また、得られた集積膜を用いて、熱電変換素子、或いは熱
電対機能ないし発電機能付き放熱材を提供する。
【選択図】図1

------------------------------------------------------------

前記目的を達成するために種々の検討を行った結果、従来の、グラ
ファイトまたはグラフェンの中の炭素原子の一部を他の原子に置換
したり、グラファイト原子層間に化合物を挿入したりする等の方法
に代えて、入手が容易な薄片化グラファイト粉末を用い、これを、
界面活性剤等の荷電特性を制御可能な化合物の水溶液中に分散して
その表面を該水溶液で被覆した後、得られた薄片化グラファイト粉
末の分散液を濾過・成膜する、という簡便な方法を用いることによ
り、上記目的を達成しうることを見いだした。 
すなわち、上記方法によれば、薄片化グラファイト粉末の表面に、
界面活性剤等の荷電特性を制御可能な化合物が吸着され、得られた
グラファイト集積膜は、荷電特性を制御可能な化合物とグラファイ
トの間の電荷移動により、所望する適切なキャリア濃度を持たせる
ことが可能となり、熱電変換機能を有するグラファイト集積膜を形
成しうること、及びこうして得られたグラファイト集積膜では、グ
ラファイト薄片表面に極微量存在する界面活性剤等の荷電特性制御
化合物によるフォノン散乱は小さいため、熱伝導率の低下は小さく、
市販のヒートシンクに利用されるアルミニウムの熱伝導率(室温で
236W/mK)以上の高い熱伝導率を有し、当該グラファイト集
積膜を市販のグラファイトシートと接合した場合においても、グラ
ファイトシートの80%以上の熱伝導率を有することが判明した。
また、界面活性剤等の荷電特性制御化合物の種類や濃度を変えるこ
とにより、P型N型のキャリアタイプやキャリア濃度を制御した2
種類のグラファイト集積膜を得ることができ、これらの一端を接合
し、その接合部分ともう片方の端との温度差をゼーベック(Seebeck
効果によって熱起電力に変換することにより、接合部分の温度を計
測することができることも判明した。 この放熱と温度計測の機能は
PN接合された1枚の膜で実現でき、接合部に発熱部品を設置する
だけで発熱部品の温度計測と放熱を同時に行うことができ、さらに、
放熱を行いながら、熱電変換により発電を行うことも可能であり、
1つの部材で発熱部を冷却しながら微小電源としても機能する。
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下
のとおりである。

[1]薄片化グラファイト粉末が堆積されてなる膜であって、前記
薄片化グラファイト粉末の表面に、荷電特性を制御可能な化合物が
吸着されていることを特徴とするグラファイト集積膜。
[2]前記荷電特性を制御可能な化合物が、陽イオン系界面活性剤
又は陰イオン系界面活性剤であることを特徴とする[1]に記載の
グラファイト集積膜。
[3]薄片化したグラファイト粉末を、荷電特性を制御可能な化合
物の水溶液中に分散すること、及び 得られた薄片化グラファイト粉
末の分散液を濾過後、成膜すること を含むグラファイト集積膜の製
造方法。
[4]前記荷電特性を制御可能な化合物が、陽イオン系界面活性剤
又は陰イオン系界面活性剤であることを特徴とする[3]に記載の
グラファイト集積膜の製造方法。
[5]Seebeck係数及び導電率が調整された[1]又は[2]に記載
のグラファイト集積膜を用いたことを特徴とする熱電変換層。
[6]前記グラファイト集積膜の少なくとも一面に、酸化グラフェン
集積膜からなる絶縁層を有する[5]に記載の熱電変換層。
[7]グラファイトないしグラファイト集積膜から構成された導電
体とその導電体のSeebeck係数と異なるSeebeck係数を持つグラファ
イトないしグラファイト集積膜から構成された導電体の2種類の導
電体を接合させるとともに、両導電体の間に絶縁体を介在させてな
る熱電対であって、 これら2つの導電体の少なくとも一方が[5]
に記載の熱電変換層で構成され、 前記絶縁体が酸化グラフェン集積
膜で構成されていることを特徴とする熱電対。
[8]構成要素の少なくとも一部に、[7]に記載の熱電対を用い
た熱電対機能付き放熱材。
[9]グラファイトないしグラファイト集積膜から構成された導電
体と、その導電体のSeebeck係数と異なるSeebeck係数を持つグラフ
ァイトないしグラファイト集積膜から構成された導電体の2種類の
導電体を接合させるとともに、両導電体の間に絶縁体を介在させて
なる熱発電素子であって、 これら2つの導電体の少なくとも一方が
[5]に記載の熱電変換層で構成され、 前記絶縁体が酸化グラフェ
ン集積膜で構成されていることを特徴とする熱発電素子。
[10]構成要素の少なくとも一部に、[9]に記載の熱発電素子
を用いた熱発電機能付き放熱材。

【発明の効果】
本発明によれば、簡便で、しかも周囲の金属部品や電子部品を損傷
するおそれのない方法で、所望のキャリア濃度を持たせることが可
能となり、熱電変換機能を有するグラファイト集積膜を形成するこ
とができる。また、本発明によれば、グラファイト薄片表面に微量
存在する界面活性剤等の荷電特性制御化合物によるフォノン散乱は
小さいため、熱伝導率の低下が少ないグラファイト集積膜が得られ、
さらに、界面活性剤等の荷電特性制御化合物の種類や濃度を変えて
P型N型のキャリアタイプやキャリア濃度を制御した2種類のグラ
ファイト集積膜の一端を接合し、その接合部分ともう片方の端との
温度差をゼーベック(Seebeck)効果によって熱起電力に変換するこ
とにより、接合部分の温度を計測することができる。 したがって、
本発明のグラファイト集積膜を用いれば、電気自動車や電子機器等
に用いられるパワー半導体や、電池等の種々の発熱部品の温度計測
と放熱の2つの機能を1つの部材で兼ね備えることができるため、
温度測定部位に別途、熱電対を設置する必要がない。 また、本発
のグラファイト集積膜を用いれば、発熱試験時だけでなく、実際の
使用時における電気自動車や電子機器等のパワー半導体等の発熱状
態を監視できるという、これまでにない機能が実現でき、これによ
り、これらの機器の熱診断や熱マネージメントを可能にし、その長
寿命化に貢献する。 さらに、本発明のグラファイト集積膜を熱電変
換層として利用する場合も、従来よりも簡便な製造方法で発電性能
の高い部材を作ることができ、部材の温度差を適切に与えれば熱発
電も可能であり、放熱フィンやヒートシンクとして利用しながらそ
れ自体が発電するなど、種々の熱源から電力を得てセンサーや通信を
自立駆動できる孤立微小電源にも応用できる。

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のグラファイト集積膜の構造を模式的に示す図
【図2】本発明のグラファイト集積膜の、電気絶縁性を持つ放熱材
としての利用について説明する図

【図3】本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の
設計例を示す図

【図4】図3に示した本発明のグラファイト集積膜の熱電対機能付
き放熱材を、放熱・測温対象部品に使用する例を示す図

【図5】本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の
使用例を示す図
【図6】本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の
設計・使用例を示す図
【図7】本発明のグラファイト集積膜の、熱発電する放熱材の設計
例を示す図
【図8】本発明のグラファイト集積膜の、熱発電する放熱材の使用
例を示す図
【図9】実施例における、本発明のグラファイト集積膜の製造工程
を模式的に示す図
【図10】ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)添加グラファイ
ト集積膜(実施例で得られたグラファイト集積膜)の表面及び断面
の走査型電子顕微鏡(SEM)写真
【図11】DBS添加グラファイト集積膜及びグラファイトシート
のX線回折パターン
【図12】DBS添加グラファイト集積膜及びグラファイトシート
のラマンスペクトル
【図13】界面活性剤の有無及び界面活性剤分子の極性と、界面活
性剤で被覆したグラファイト集積膜の電気物性の関係を示す図
【図14】分散液中のDBS濃度と、電気物性の関係を示す図
【図15】実施例で作製した、グラファイト集積膜を用いたグラフ
ァイト熱電対を模式的に示す図
【図16】グラファイト集積膜を用いた熱電対による温度計測の結
果を示す図
【図17】グラファイト集積膜を用いた熱発電素子に、温度差ΔT
=43.4Kを付与した場合の熱発電の試験結果を示す図

【符号の説明】 1:グラファイト集積膜 2:酸化グラフェン集積
膜 3:放熱・測温対象物(発熱体又は熱源) 4:ヒートシンク 
5:熱電変換層 6:5とはSeebeck係数の異なる熱電変換層 7:
接合部 8:測温部 9:計測端子部 10:負荷 11:放熱フ
ィン
【発明を実施するための形態】
本発明のグラファイト集積膜は、薄片化グラファイトの粉末が堆積
されてなる膜であって、該薄片化グラファイトの粉末の表面に、荷
電特性を制御可能な化合物が吸着していることを特徴とする。 本
発明のグラファイト集積膜は、薄片化したグラファイト粉末を、荷
電特性を制御可能な化合物の水溶液中に分散してその表面を該水溶
液で被覆し、得られた薄片化グラファイト粉末の分散液を濾過後、
成膜することにより製造することができる。

以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれ
らの実施形態に限定されるものではない。なお、数値範囲の記載(
2つの数値を「~」でつないだ記載)については、下限及び上限と
して記載された数値をも含む意味である。 (薄片化グラファイト粉
末) 本発明における薄片化グラファイト粉末は、後述する方法で
も製造できるが、入手が容易である市販のものを用いることが好ま
しく、例えば、市販品として利用できる薄片化グラファイト粉末と
しては、アイテック社のiGrafen-aがある。 薄片化グラファイト粉
末の製造方法としては大きく分けて2種類の方法を選択することが
できる。 1つ目の製造方法は、原料となる黒鉛(グラファイト)の
層間に化合物を侵入又は挿入させた後、これを加熱することによって
当該化合物の気化又は膨張を生じさせ、グラファイト層間を剥離さ
せる工程を経て製造されるものである。グラファイト層間に侵入又
は挿入させる化合物としては、加熱処理によって気化又は膨張可能
なものであれば、酸、ハロゲン化合物、あるいは気体分子のいずれ
を用いてもよい。酸としては、硝酸、塩酸、硫酸、等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、塩化鉄、塩化銅等が挙げられる。気体分
子としては、二酸化炭素が挙げられる。化合物の気化又は膨張を生
じさせる手法としては、直接加熱又はマイクロ波照射等を用いるこ
とができる。 本発明においては、得られた薄片化グラファイトを、
必要に応じて、所望の大きさの粉末にして用いる。2つ目の製造方
法は、溶媒に分散したグラファイト粉末に高い応力、特に高いせん
断力を付加してグラファイト層間の剥離を生じさせる工程を経て製
造されるものであり、応力、特に高いせん断力を付加する方法とし
ては、グラファイト層間を剥離させるのに十分な せん断力を持つ方
法であれば、ミキサーを用いる方法、超音波を照射する方法、速度
の異なる2本のロールでグラファイト分散液を挟み込む方法、等を
用いることができる。 なお、この場合の溶媒としては、グラファイ
ト粉末の分散性を高めるためにN-メチル-2-ピロリドン等の有
溶媒や硫酸アンモニウム等の水溶液を用いてもよいし、分散性と荷
電特性の制御を兼ねて後述の各種界面活性剤を所定量混合した水溶
液を用いてもよい。 後者の場合には、該水溶液中にせん断力が付
与されて薄片化したグラファイト粉末が分散した分散液が得られる
ため、得られた分散液をそのまま用いて、濾過、成膜することによ
り、本発明のグラファイト集積膜が得られる。 薄片化したグラフ
ァイトの単片の大きさは、面内方向の大きさ(粒径)と厚さの2つ
の数値で規定できる。放熱材及び熱電対又は熱電素子として適度な
導電率と熱伝導率を備えるために、粒径としては、1μm以上であ
ることが望ましく、2μm以上であることがより望ましい。加えて、
グラファイトの荷電特性を適度に制御することが可能な厚さとして
は、50nm以下であることが望ましく、20nm以下であること
がより望ましい。さらには、粒径が前記のとおり1μm以上であっ
て、集積膜の放熱性及び導電性を、薄片化したグラファイトの集積
膜と同程度又はそれ以上にした場合において、厚さが約3nm以下
の範囲のグラフェン(単層グラフェン、2層グラフェン、及び複数
層グラフェン又は多層グラフェン)の集積膜を用いることもできる。

(薄片化グラファイト粉末の分散)
本発明においては、前記の薄片化したグラファイト粉末を、荷電特
性を制御可能な化合物の水溶液中に投入して分散処理を行うことに
より、薄片化グラファイト粉末の表面が、界面活性剤等の荷電特性
制御化合物の水溶液で均一に被覆されるようにするものであり、方
法は特に限定されないが、超音波を印加して分散処理を行うことや、
スターラーで撹拌することが好ましい。
(分散液の濾過・成膜)
次いで、得られた薄片化グラファイト粉末の分散液を濾過し、乾燥
して水分を除去することで、表面に界面活性剤等の荷電特性制御化
合物が吸着した薄片化グラファイト粉末の堆積物が得られる。その
後、この堆積物にプレス処理を施すことにより、本発明のグラファ
イト集積膜が得られる。 プレス処理は、グラファイト堆積物を2枚
の平面板で挟み、その上下面からの圧力でプレスするプレス機を用
いてもよいし、グラファイト堆積物を2本のロールで挟み、ロール
間の線圧でプレスするプレス機を用いてもよい。いずれのプレス機
を用いた場合でも、得られる集積膜において、熱電対機能や熱発電
機能に必要な導電率を持たせるため、プレスによる厚みの減少率、
すなわち厚みの減少分をプレス前の元の厚みで割った値が、0.9
以上に高いことが好ましい。集積膜の厚み自体は、放熱対象物の形
状や放熱量に応じて適切な熱抵抗となるように、プレス前の堆積物
の量を調整すればよい。

(荷電特性を制御可能な化合物)
荷電特性を制御可能な化合物として、好ましくは、界面活性剤が用
いられる。 用いられる界面活性剤はイオン系のものであれば特に限
定されないが、例えば、陰イオン系界面活性剤としては、ドデシル
ベンゼンスルホン酸(DBS)等の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸
及びその塩、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム等が挙
げられ、また、陽イオン系界面活性剤としては、臭化ヘキサデシル
トリメチルアンモニウム(CTAB)等のアルキルトリメチルアン
モニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
また、界面活性剤以外では、ポリスチレンスルホン酸などのアニオン
性高分子を利用することも可能である。 本発明では、界面活性剤な
どの荷電特性を制御可能な化合物の種類を変えることにより、キャ
リアタイプがP型又はN型のグラファイト集積膜を得ることができ、
陰イオン系界面活性剤又はポリスチレンスルホン酸などのアニオン
性高分子を用いた場合には、P型のグラファイト集積膜が得られ、
陽イオン系界面活性剤を用いた場合には、N型のグラファイト集積
膜が得られる。 また、界面活性剤などの荷電特性を制御可能な化合
物の、水溶液中のモル濃度と、グラファイト集積膜に含まれる化合
物の量とは相関しており、その結果、用いる界面活性剤等の荷電特
性を制御可能な化合物の、水溶液中のモル濃度を変更することで、
得られる集積膜のキャリア極性や熱電特性を変更することができる。
(後述する図13、14参照) 後述する実施例では、用いる界面
活性剤の水溶液のモル濃度は、DBSで1×10-3~500×
10-3 mol/L、CTABで1×10-3~10×10-3 mol
/Lとしているが、これは導電体のキャリア極性の制御や熱電特性
の最適化を目的として選んだ濃度である。 他の界面活性剤又は荷
電特性制御化合物では、溶媒の種類、溶解度によって適切な熱電特
性になる様にモル濃度を制御すればよい。本発明では、適切な熱電
特性になる様にSeebeck係数と導電率を調整されたグラファイト集積
膜を熱電変換層と呼ぶことにする。 本発明のグラファイト集積膜は、
グラファイト薄片表面に微量存在する界面活性剤等の荷電特性を制
御可能な化合物によるフォノン散乱は小さく、市販のヒートシンク
に利用されるアルミニウムの熱伝導率(室温で236W/mK)以
上の高い熱伝導率を有し、当該グラファイト集積膜を市販のグラフ
ァイトシートと接合した場合においても、グラファイトシートの80
%以上の熱伝導率を有するため、放熱材として使用することができ
る。 また、本発明のグラファイト集積膜は、界面活性剤等の荷電特
性を制御可能な化合物とグラファイトの間の電荷移動により、適切
なキャリア濃度を持たせることが可能となる。 したがって、用いる
界面活性剤等の荷電特性を制御可能な化合物の種類や濃度を変えて
P型N型のキャリアタイプやキャリア濃度を制御してSeebeck係数
を制御した2種類のグラファイト集積膜の一端を接合し、その接合
部分ともう片方の端との温度差をSeebeck効果によって熱起電力に変
換することにより、接合部分の温度を計測することができ、熱電対
機能付放熱材として使用できる。 このように、本発明のグラファ
イト集積膜の放熱と温度計測の機能は、2種類の互いにSeebeck係数
の異なるグラファイト集積膜の1端を接合した1枚の膜で実現でき、
接合部に発熱部品を設置するだけで発熱部品の温度計測と放熱を同
時に行うことができ、さらに、放熱を行いながら、熱電変換により
発電を行うことも可能であり、1つの部材で発熱部を冷却しながら
微小電源としても機能する。 また、本発明のグラファイト集積膜に
おいては、別途、熱伝導性に優れた酸化グラフェン集積膜を、絶縁
膜又は絶縁層として併用することで、熱伝導率の低下を抑制しなが
ら、熱電対構造の作製や、吸熱対象物との電気的絶縁性を確保する
ことができる。酸化グラフェンは、グラフェンにエポキシ基、カル
ボキシル基、カルボニル基、水酸基など様々な酸素含有官能基が結
合したものである。本発明において十分な電気絶縁性及び熱伝導性
を示すための酸素濃度は20~40%の範囲が望ましく、その際の
酸化グラフェンの単片の面内方向の大きさ(粒径)としては、1μ
m以上であることが望ましく、2μm以上であることがより望まし
い。加えて、単片の厚さにして0.7~1.5nmのサイズを持つ
ものが望ましい。この単片を多数堆積し、1~40μmの範囲の厚
さを持つ集積膜にしたものを、酸化グラフェン集積膜として用いる
ことができる。 以下、図面を用いて、本発明のグラファイト集積
膜の、放熱材としての利用、熱電対機 能付放熱材としての利用、
及び熱発電する放熱材としての利用について、それぞれ例示するとと
もに、本発明のグラファイト集積膜を用いた効果について記載する。

(放熱材としての利用)
図2(a)は、本発明のグラファイト集積膜の、電気絶縁性を持つ
放熱材としての利用について説明する図であり、図中、1は、本発
明のグラファイト集積膜を示し、2は、導電性を有しない酸化グラ
フェン集積膜を示している。(a)に示すように、本発明のグラフ
ァイト集積膜の両表面に、酸化グラフェン集積膜(2)を被覆するこ
とにより電気絶縁性を付与したものは熱は伝えるが、電気は伝えな
いため、放熱材として、又は熱界面材料として利用することができ
、パワー半導体・電子部品・電池の冷却に好適である。 (b)及び
(c)は、それぞれ、放熱材及び熱界面材料(TIM)としての利
用例を示すものであり、図中、矢印は、熱流を示し、3は、放熱対
象物(発熱体又は熱源)を示し、4は、ヒートシンクを示している。

(熱電対機能付放熱材としての利用)
図3は、本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の
設計例を示す図であり、図中、2は、導電性を有しない酸化グラフ
ェン集積膜を、5は、熱電変換層を、6は、5とはSeebeck係数の
異なる熱電変換層を、7は、5と6の接合部、8は、測温部、9は、
計測端子部を、それぞれ示しており、熱電変換層(5)及び熱電変
換層(6)の少なくとも一方に、本発明のグラファイト集積膜を使
用するものである。 熱電対機能付き放熱材の断面図として、(a)
に示すように、熱電変換層(5)及び熱電変換層(6)を、測温部
(8)である一部の接合部(7)を残して、導電性のない酸化グラ
フェン集積膜(2)を介して接合し、放熱材とする。 熱電対機能付
き放熱材の形状は、特に限定されないが、(b)に、円形放熱材の
例を、(c)に、長方形放熱材の例を、それぞれ示している。(b)
及び(c)はいずれも、熱電対機能付き放熱材の面に垂直な方向で
、熱電変換層5を上にした形で見た図を示している。

図4は、前記図3に示した熱電対機能付き放熱材を、放熱・測温対
象部品に使用する例を示すものであり、図中、2は、酸化グラフェ
ン集積膜を、3は、放熱・測温対象物を、7は、接合部、8は、測
温部、9は、端部に設けられた計測端子部を、矢印は、熱流を示し
ている。 (a)に示すように、本発明の熱電対機能付き放熱材の接
合部(7)の上部に、放熱・測温対象部品(3)を設置した場合も、
従来どおりの放熱機能を維持している。 (b)は、放熱しながら、
放熱対象物の温度を計測する例を示しており、計測端子部(9)に
おける熱起電力ΔVを計測することにより、接合部(7)(及び測
温部(8))の温度T1と計測端子部(9)の温度T2の温度差
ΔT=T1-T2を計測することができ、放熱対象物(3)から放
熱材を流れる熱流密度も計測可能である。 また、(c)に示す例
は、前記図3に記載した酸化グラフェン集積膜(2)などの電気絶
縁膜と組み合わせることで、放熱対象物が電子部品の場合の、電気
的な信号の干渉及びそれによる温度計測データへのノイズ混入を防
ぐことを可能にしたものである。 計測端子部における熱起電力ΔV
は、 【数1】  
                     
                        この項つづく

 風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2015年代

● 今夜の寸評:先端技術で世界一をめざす


 

 


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