極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

新三国志政経論Ⅰ

2010年12月10日 | 政策論

 

年の瀬に いつも足らぬもは 金と銭 足を付けて いつも金メダル



07年の金融危機は、米国みならず先
進国を中心に非常に大きなダメージ
を与えた。米連邦準備制度理事会(
FRB)は成長率と雇用は長くとも5~
6年の間には正常な水準に戻ると予
想しているが、FRB元金融政策局長
ヴィンセント・ラインハートとカー
メン・ラインハート夫妻は、第2次
世界大戦後に世界各国で起こった15
回の金融危機と3つのグローバルな
世界同時不況→1929年の世界恐慌、
73年の石油危機、そして07年の米サ
プライムローン金融危機-において、
実質GDP(成長率と水準)、失業率、
インフレーション、銀行与信、実質
住宅価格がどのように変動したかを
詳細に調べた。

まず実質GDPに関しては、深刻な金
融危機に続く10年間では、実質GDP
成長率の下落が顕著であり、特に先
進国の実質GDP成長率の下落の中間
値は1%に及ぶ。また
サブプライム
危機に続く3年間の先進国の実質
G
DPの水準は危機前と比べて2%低く

これは過去の15回の金融危機の後の
落ち込みとほぼ同等で、サププライ
ム危機後の3年間の実質GDP危機前
と同じかあるいは下回っている事例
は全体の82%に及び、これは過去の
15回の金融危機の時の60%と比べる
とはるかに高いという。

また雇用は、深刻な金融危機に続く
10年間の失業率は、危機前の10年間
と比べると失業率が高止まりし、特
にいくつかの先進国では、失業率の
上昇の中間値は5%にも及んでいる。
実質住宅価格に関しては、深刻な金
融危機に続く10年間、90%の事例で
住宅価格が危機前の水準に戻ること
がなく、その下落率は15~20%にも
及んでいる。

このような予想もあって、11月3日、
米FRBは、比較的リスクの高い長期
の国債を金融機関から約6千億ドル
買い入れる、QE2と呼ばれる大規
模な信用緩和政策を実行に移した。
このQE2は、70万人から百万人の
雇用回復につながる可能性があると
述べている。

 

これに対し、マーティン・フェルト
シユタインは、QE2の見込み効果
が小さい割には極めてリスクが高く、
限定的に行われるべきであると疑問
を呈す。彼はQE2が効果を発揮す
るとすれば、それはポートフォリオ・
バランス理論に基づく効果と長期金
利の低下効果で、わ
ずか0.25%に過
ぎず、ほとんど効果がないという。

同様にジョン・テイラーも、非伝統
的金融政策が普通のことになってし
まえば、FRBのバランスシートに大
きな不確実性が生じ、結果的にFRB
の独立性が危うくなって、過度なイ
ンフレーションが起きる危険性を懸
念する。

例えば、この大量の資金供給と長期
金利の低下は、ドルの対外価値を引
き下げて、特に新興国との深刻な貿
易摩擦を引き起こすと同時に、国際
商品価格や不動産、株式などの価格
を上昇させ、バブルを発生させてし
まう可能性がある。

これに対し、グレゴリー・マンキュ
ーは、QE2は良とし、基本的には
肯定的で、現状では過度なインフレ
ーションが発生する心配より、日本
のようなデフレーションに陥る心配
をしたほうがよいと述べている。

 

次に、日本の話題。日本経済の長期
の低迷の原因を日本銀行の金融政策
の不適切さに求める立場から、長期
間のデフレーション(デフレスパイ
ラルの状態)に陥っていることが、
原因であり、日本銀行が徹底した金
融緩和→ゼロ金利がダメなら量的緩
和→量的緩和がダメなら信用緩和を
行い、企業の生産性の向上を目指し
たさまざまな規制改革や雇用の流動
化策は、一時的に総需要を減少させ
必ずしも有効ではない=このような
立場を取るのは、日本銀行は4%の
インフレターゲッティング政策を15
年間続けるべきであると主張するポ
ール・クルーグマン、浜田宏一、星
岳雄など。

これに対して、他方の立場は、主に
日本企業の生産性の低さに求める立
場であり、この立場によれば、規制
の煩雑さや労働市場における流動性
の低さが阻害要因であり、雇用者の
賃金水準=所得が伸びず(賃金はほ
ぼ生産性に比例しているため)、総
需要の低い原因だとされ、デフレー
ションは貨幣的な現象ではなく実物
的な現象なのであり、日本銀行はデ
フレーションに対して基本的にはゼ
ロ金利政策以上にできることは何も
ない。不況の原因は企業の生産性の
低さが原因であるのだから、政府は
徹底した規制緩和や労働市場の流動
化政策を推し進めるべきである。こ
のような立場を取るのは、斎藤誠一、
岩本康志、池尾和人など。

勿論、伊藤隆のように、インフレタ
ーゲッティング政策を主張しながら
財政健全化を急ぐべきであると主張
する経済学者もいる。脇田成は、経
済全体として法人部門が貯蓄超過状
態であるいま、むしろ金利を上げて
家計の利子所得を上昇させ、消費の
拡大を促すべきという意見もある。
金の流れが完全にグローバル化して
いる現在、一国の中央銀行の金融政
策の影響が、その国の内部にとどま
る保証は全くない。


ま中国政治は「調整期」にある。
1つは権力の継承期という意味。中
国共産党第18期全国代表大会(18回
党大会)開催予定の2012年秋まで残
すところ2年弱となった。また、中
国経済社会の発展のあり方をめぐる
議論が活発化し、20年に「小康社会
(いくらかゆとりのある社会)」=
全面的に建設→中華民族の現代化を
国家目標としたうえ「第12次5ヵ年
計画」の策定を進めている。中国共
産党中火軍事委員会副主席に習近平
政治局常務委員を選出し、胡錦濤政
権の後継体制の中核となることを確
認(しかし、総書記にまで昇格する
か否かは不確実)。

こうした意味で、習が中国共産党と
国家、そして軍の権力を継承する準
備が整ったが、新政権の形成に向け
た過渡期の中国政治は、07年に習が
政治局常務委員に選出された経緯に
あり、07年10月24日付の中国共産党
機関紙『人民日報』は、新指導部が
党内選挙が実施されたと報じている。
「改革開放の総設計師」郵小平氏の
「お墨付き」を得て抜擢された胡や
江沢民とは異なる。

例えば、08年9月の世界的金融経済
危機以降の中国経済環境には大きな
変化が生じている。10年10月27日付
の『新華網』は、「この数年、中国
経済は平均2桁の速度で急速に成長
し、そのうち外需の牽引作用はなく
てはならないものであるが、金融経
済危機の荒波は中国の輸出の急速な
低下を引き起こした。
09年の輸出の
国内総生産に対する寄与率はマイナ
ス3.9%
であった」と報じていた。
5中全会後に発表された「公報」は、
「内需拡大のための長期的仕組みを
構築」することを柱の1つとする経
済成長パターンの転換の加速の重要
性を指摘している。

また、5中全会で審議された第12次
5ヵ年計画では実際に、そうした転
換を意味する経済成長モデルが示さ
れた。その大きな特徴の1つは、経
済成長の数値目標を示していないこ
とである。その背景には、中国が経
済成長目標を設定して急速な経済発
展を実現し、世界第2位の経済大国
となった一方で、地域間・社会階層
間の経済格差が拡大したことへの反
省があるとみられる。強国から富民
への中国経済社会の発展理念の転換
である。こうして、数値目標を設定
しないことの意味は大きいかもしれ
ない。

中国政治の最高意思決定機関である
政治局および政治局常務委員会にお
ける既存のパワーバランスは、GDP
実績主義のなかで形成されてきた。
脱「GDP主義」は幹部の政治的成長
のルールにも影響し、既存のパワー
バランスを否定しかねない。

8月末に経済特区設置30周年に際し
て深川を訪問した時の演説とそれに
対する反応である。温首相はこの演
説で、経済体制改革を深化させるた
めの政治体制改革の推進が不可欠と
とした。指導部は一枚岩ではない。
中国国内のさまざまな利益集団が存
在する多元的であり、権力の継承期
の政権内部のパワーバランスは、非
常に流動的で不安定である。



【超高齢少子社会の安定成長】

 
日本企業は、一般に利益を犠牲にし
ても量的拡大を志向する傾向がある。
そうなるのは企業経営の目的が、企
業価値の最大化ではなく、企業の存
続に置かれるからだろう。日本の得
意分野は「ものづくり」だと言われ
る。ものづくりが変質していること
に注意が必要である。第1は、ソフ
トウエアの比重が高まっていること
だ。これはさまざまな分野で生じて
いる。製造過程の効率化で目覚まし
い成果をあげた日本の半導体産業は、
MPUの時代になって競争力を失い、
生産を米国のインテルにほぼ独占さ
れる事態に陥った。ソニーのウォー
クマンは、テープやCDを音源とす
る独立した機械であったが、アップ
ルのアイポッドは、背後にある音楽
配信ネットワークであるアイチュー
ンズが重要な意味を持ち、ソニーの
優位が失われた

ところが、90年代からのPCの生産
で、水平分業が行われ組み立てメー
カーそれまで垂直統合から水平分業
に転換し、新興国の安い賃金を使っ
た部品生産で高い利益を実現するよ
うになった。「安定志向」と「英語
力」で日本は衰退していく。

緊急の課題は、雇用の確保だ。これ
までは雇用調整助成金によって企業
内の過剰労働力が失業化することを
食い止めてきた。しかし、これは緊
急避難的措置であって、いつまでも
続けるわけにはゆかない。日本経済
は、2009年の春以降、中国に支えら
れて回復し、10年上半期の企業純利
益も、リーマン・ショック以前の水
準にほぼ近づいた。

しかし、回復過程は10年上半期で終
わった。09年春以降の回復を支えた
政策が終了した。11月初めの日経平
均株価は、リーマン・ショック以前
より25%低いままであり、世界経済
が回復するなかで、日本経済は足踏
みを続けていることが明確に表れて
いる。必要なのは、円高になっても
利益をあげられるようなビジネスモ
デルを行動で示すことだ。日本政策
投資銀行の調査によると、10年の全
産業の投資額が前年比 6.8%増に対
し、海外設備投資は35.1%増。製造
業では43.9%増、自動車は44.0%増、
電気機械は55.5%増である。

シャープが看板工場であった亀山工
場(三重県亀山市)の一部設備の中
国企業への売却を決めたときに、片
山幹雄社長は「いかに先端技術を用
いても、もはや日本国内の生産では
利益をあげることができない」と述
べた。為替介入と金融緩和による円
安政策は、小泉政権下の03年頃の大
規模な介入により促進され、異常な
円安が実現し転換すべきだった産業
構造が転換しなかった。

新興国の成長率が高いこと、膨大な
数の消費者が存在し、だからといっ
て新興国市場に最終消費財を投入す
ることが日本企業にとって最適な戦
略とは言えないと野口悠紀雄が指摘
する。そして、これまでとはまった
く異質の経済政策が必要になる。そ
れは、新しい産業を興すことである
と述べ次のように提案する。



雇用吸収に関してしばしば言及され
る介護サービスだが、有効求人倍率
が1を超えている例外的な分野であ
る。したがって、介護にかかわる規
制を緩和することによって就業条件
を改善し、雇用を増やすことは必要
だが、それだけでは成長は期待でき
ない。金融やITを用いた対ビジネ
スサービスなど、付加価値の高いサ
ービス産業が必要であるという。

先端的サービス業を展開するために
は、高度な専門知識を持つ専門家が
が、日本の高等教育機関は、人材育
成を行ってこなかった。したがって、
何よりも必要なのは人材育成であり、
そこで、代替手段として、外国から
専門家を受け入れ、英国の「ウィン
ブルドン現象」として起こったこと
だ。こうした純粋に民間の事業に補
助金を出すのは本来は望ましくない
が、臨時的一時的に補助を行って触
媒効果を期待することは考えられる。

野口悠紀雄の提案は、つまるところ
欧米化追従政策で産業の高次化・高
付加価値産業の育成ということにつ
きる。しかし、現状の日本はGDP
は第3位に転落しよかという状況で
はあるが、質的には「生活品質世界
一」の国であり「超高齢・少子化

として現れていることなのだから、
もの真似で上手くいくことはかなわ
ない自律的な思想と実行プログラム
を必要としている。

欧州の動きを無視するのではない
新年を迎えるにあたり自分なりの国
際政経的見識の総括とその展望につ
いて米国・日本・
中国を中心として
それぞれの課題を包括した「安定成
長政策」→『新三国志政経論』とし
て考察を開始した~~~のだが容量
の加減で今日はここまで。

             

 

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