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鳩山、蜂の巣をつつく A hornet’s nest in Washington stirred

2009-09-03 | 世界から見た日本
2009年9月3日(木)

鳩山民主党代表は総選挙における圧勝を受けて、新政権の首班となるのは今月中旬と予定されているが、本朝未明に、米国のオバマ大統領からの要請に従い、約10分間の電話会談を行い、その中で、「日米関係は、日本外交の基軸であるとの方針を確認した」と、記者団のインタービューで言明した。

一方、The New York Timesは、選挙結果が明らかになった直後に、「鳩山新政権」に対して、すでに米国側に、「恐れに近い動揺」(trepidation)が生じているとの見出しで、鳩山論文(月刊「Voice」)の抄訳が同紙のwebに公開されたことが、いかに米政府ならびに有識者にショックを与えたかを報じている。

そして別の版の同じ記事には、「(政権)交代で、(対米)政策の棘(policy thorns)を生じてきた」との見出しをつけて米政府の猜疑心を表現している。

米国政府にとって、日本の民主党政権は、米国にとって未経験(untested)であり、未知数(imponderables)に満ちているので、 いわばまったくの他人(a complete stranger)との付き合いを始めねばならないという戸惑いを隠していない。

一方、「日本の民主党とは何者か?」という疑問が各界で生じて、にわかに民主党研究が始まったという。歴代駐日米国大使は、知日派の大物が任じられてきたが、今回オバマ大統領が選んだのは、選挙資金集めで功労のあったほぼ無名の、John Roos氏。あからさまな論功行賞人事で、対日政策のお茶を濁した矢先の鳩山民主党の政権奪取にあわてていることは、想像に難くない。

鳩山論文の「抄録」は、もし「ご挨拶」とすると強烈であった。まず、「米国が主導したグローバリズムに反対し、日本はよりアジアに目を向ける」と宣言し、「日本経済の苦しみは、米国に踊らされた自由原理主義の犠牲者である」と言い切ったのであるから、NYT記者の表現を借りれば、「ワシントンは蜂の巣をつついた状態」(It stirred a hornet’s nest in Washington)に陥ったのであるという。

反応の強烈さに驚いた鳩山氏は、トーンをおとし(back-pedalling)、損失拡大防止(damage control)に動き、月曜日の夜には、「論文は海外向けではなかったし、間違った受け止められ方をされてしまった。抄訳ではなくきちんと全文を読めば、反米主張ではないとわかってもらえる」という趣旨の談話を発表した。

雑誌論文と、その抄訳と称されるものが、The New York Timesのwebに掲載されたことは今後の対米外交へ、少なからず尾を引くことは間違いない。