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反オバマ運動の底流に人種差別意識 Tea Party organizers

2009-09-20 | 米国・EU動向
2009年9月20日(日)

オバマ政権の健康保険改革に反対する「茶会運動」(Tea Party organizers)が、「反黒人」運動の様相を呈してきた。

この運動に付けられたTea Partyという名前は、米国の独立戦争のきっかけとなった1773年にBostonで発生した反英暴動事件(ボストン茶会事件)を下敷きにしている。当時は、茶の輸入関税を英国の利益のために引き上げたことに端を発した反植民地運動であったが、今回は、連邦政府の権力が肥大化して各州の権利が侵されることに抗議し、健保の国民皆保険化に反対し、その結果起こる将来の増税に反対するという運動である。

しかし、問題は、この運動が反オバマ政策運動に名を借りた「反黒人運動」ではないかという懸念が出てくるような事態に発展していることである。各地で開かれている抗議集会には、オバマ大統領をアフリカの魔術師(witch doctor)に仕立てた写真を使ったプラカードが林立している。

ある写真ではオバマ大統領が、羽飾りをつけ、鼻から牙を突き出しているまがまがしい姿にされているし、別のプラカードでは顔に白化粧を施した恐ろしい形相の魔術師としてのオバマ大統領の似顔が描かれている。

この運動の指導部は、こうした過激な人々を、「腐ったリンゴ」(bad apples)と突き放して、運動全体が人種差別運動とされることを警戒しているが、本質を隠蔽することはできない。

Financial Timesは、反健保皆保険運動を「怒れる白人老人層」(angry white seniors)の反逆であると論評している。 一方CNNは、「今回の運動の背景には1906年にAtlantaで起こった黒人に対する集団殺戮事件を想起させる反黒人感情がある」と論評し、黒人の社会的な地位向上に焦燥感をあおられた白人の感情の激発であった事件との類似性を指摘している。

また、カーター元大統領が、「健康保険改革を巡るオバマ大統領への批判は、人種差別の現われ」と指摘したことも波紋が広げている。オバマ氏を大統領に選ぶことのできる度量のひろい民主主義と、狭量な人種主義が同時に存在するのが米国の本質である。


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