撮影は素晴らしいけど内容はいまいちという、評価がしにくい作品。撮影監督ヴィットリオ・ストラーロがヨーロッパ映画賞を受賞している。ヴィットリオ・ストラーロはベルトルッチの「暗殺の森」、「1900年」、「ラストエンペラー」、ウォーレン・ビーティの「レッズ」、F.コッポラの「地獄の黙示録」などで軒並み映画賞受賞の名撮影監督だ。
晩年の病床にあるゴヤが自身の後半生を振り返って娘(といっても孫ぐらいに歳の離れた少女)に語って聞かせるという趣向。ゴヤは亡命先のフランスで死期を迎えていた。「わたしの人生は45歳からが華だった」と語るゴヤは、中年を過ぎて宮廷画家として台頭する。王侯貴族の注文でいくらでも肖像画を描くが、本当に描きたいものは政治社会状況を反映したようなもっと暗く陰惨な絵であった。彼は夜中に蝋燭を頭にめぐらせて鬼気迫る絵を描く。夜の光でこそ絵の本当の値打ちがわかるのだというのが彼の信念だった。
この映画にはなじみの俳優が登場しないため、人物の顔が見分けにくく、最初のうち、中年時代の場面では誰がゴヤなのかわからなかった。さらに、ゴヤの運命の女たる「裸のマヤ」のモデルの侯爵夫人がちっとも美しくないのでいっそう興醒め。
場面の構成には大いに工夫があり、晩年のゴヤと中年のゴヤが同じカットの中に登場し、しかもその時代の隔たりを、赤い壁をスクリーンのように半透明に映し出すことによって幻想的に演出する。この撮影が素晴らしい。ゴヤの回想も夢の中の世界のように虚ろでシュールであり、また彼の絵のように暗くて残酷だ。自由主義者であったゴヤは王党派の弾圧を避けてフランスに亡命していたが、そこで描くのは人生の醜さと残酷さを抉るようなものばかり。あんな絵を部屋に飾りたいとは全然思わないけれど、大塚国際美術館で見た「ゴヤの部屋」を思い出し、あの数々の暗い絵がゴヤのアトリエ一面を飾っている壮観なさまには息を呑んだ。
脚本がまずいため、この映画を見てもゴヤの語る彼の人生にはさして興味を惹かれない。ただひたすら撮影がよかった。(レンタルDVD)
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ゴヤ
GOYA IN BORDEAUX
製作国 イタリア/スペイン、1999年、上映時間 100分
監督・脚本: カルロス・サウラ、製作: アンドレス・ヴィセンテ・ゴメス、撮影:ヴィットリオ・ストラーロ、音楽: ロケ・バニョス
出演: フランシスコ・ラバル、マリベル・ベルドゥ、エウラリア・ラモン、ダフネ・フェルナンデス、ラ・フラ・デルス・バウス
晩年の病床にあるゴヤが自身の後半生を振り返って娘(といっても孫ぐらいに歳の離れた少女)に語って聞かせるという趣向。ゴヤは亡命先のフランスで死期を迎えていた。「わたしの人生は45歳からが華だった」と語るゴヤは、中年を過ぎて宮廷画家として台頭する。王侯貴族の注文でいくらでも肖像画を描くが、本当に描きたいものは政治社会状況を反映したようなもっと暗く陰惨な絵であった。彼は夜中に蝋燭を頭にめぐらせて鬼気迫る絵を描く。夜の光でこそ絵の本当の値打ちがわかるのだというのが彼の信念だった。
この映画にはなじみの俳優が登場しないため、人物の顔が見分けにくく、最初のうち、中年時代の場面では誰がゴヤなのかわからなかった。さらに、ゴヤの運命の女たる「裸のマヤ」のモデルの侯爵夫人がちっとも美しくないのでいっそう興醒め。
場面の構成には大いに工夫があり、晩年のゴヤと中年のゴヤが同じカットの中に登場し、しかもその時代の隔たりを、赤い壁をスクリーンのように半透明に映し出すことによって幻想的に演出する。この撮影が素晴らしい。ゴヤの回想も夢の中の世界のように虚ろでシュールであり、また彼の絵のように暗くて残酷だ。自由主義者であったゴヤは王党派の弾圧を避けてフランスに亡命していたが、そこで描くのは人生の醜さと残酷さを抉るようなものばかり。あんな絵を部屋に飾りたいとは全然思わないけれど、大塚国際美術館で見た「ゴヤの部屋」を思い出し、あの数々の暗い絵がゴヤのアトリエ一面を飾っている壮観なさまには息を呑んだ。
脚本がまずいため、この映画を見てもゴヤの語る彼の人生にはさして興味を惹かれない。ただひたすら撮影がよかった。(レンタルDVD)
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ゴヤ
GOYA IN BORDEAUX
製作国 イタリア/スペイン、1999年、上映時間 100分
監督・脚本: カルロス・サウラ、製作: アンドレス・ヴィセンテ・ゴメス、撮影:ヴィットリオ・ストラーロ、音楽: ロケ・バニョス
出演: フランシスコ・ラバル、マリベル・ベルドゥ、エウラリア・ラモン、ダフネ・フェルナンデス、ラ・フラ・デルス・バウス