ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

赤い文化住宅の初子

2009年01月04日 | 映画レビュー
 父は蒸発、母は過労死、兄と二人、文化住宅の2階の小さな部屋で暮らす中学3年生の初子は貧乏なために高校へも進学できない。一生懸命勉強して成績も上がり、広島県内でも有名な進学校へ合格できそうというのに、高校へ行くこともままならい初子。暗い生活の中で唯一の灯りは同級生のミシマくんだ。彼は初子の初恋の相手。大人になったら初子と結婚するんだとミシマくんはいじらくしくも誓ってくれる。ああ、でもでも… 

 とまあ、恥ずかしくなるぐらいの薄幸の美少女物語。不幸の雪だるまのヒロイン初子はけなげで初々しく、懸命に生きている。いまどきこんな「おしん」みたいな話が…などと思ってはいけない。バブルがはじけて以来、おそらくこんな話はいくらでもあるんだろう。「ホームレス中学生」みたいなケースもあることだし。

 十代の子どもだけで生活している姿は「誰も知らない」を彷彿させるが、本作のほうが子どもたちの年齢が高い分、悲惨度は低い。とはいえ、家には電話もなく、電気すら止められてしまう生活はやっぱりどうしようもない困窮ぶりがにじみ出て目を覆うものがある。教師も助けてくれない。通りすがりに親切にしてくれたおばさんも実は下心があったし、おまけに最後にはさらなる不幸が待ちかまえている。

 初子は健気だけれど、表情は暗い。ラストシーンも希望があるのかないのかよくわからない。このラストシーンに希望を見いだせる人はまだまだ夢見る初々しさ・若さを自分の中に持っていると言えるだろう。わたしのような中高年には厳しい現実が見えてしまう。そういうふうに醒めた目で見てしまう自分が悲しい。わたしもすっかりおばさんだわ…。

 派遣切りの世知辛い世の中、貧しさが身にしみる人々のなんと多いことか。映画の物語として消費できない厳しさをひしひしと感じる。(レンタルDVD)

------------------

赤い文化住宅の初子
日本、2007年、上映時間 100分
監督・脚本: タナダユキ、プロデューサー: 小林智浩ほか、エグゼクティブプロデューサー: 片岡正博ほか、原作: 松田洋子、音楽: 豊田道倫
出演: 東亜優、塩谷瞬、佐野和真、坂井真紀、桐谷美玲、鈴木慶一、浅田美代子、
大杉漣

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
わたしも観ました (永岡瑞季)
2009-01-17 07:34:47
はじめまして!
わたしも観ました。

わたしはラストシーン、
希望を感じちゃった人です(笑)
お兄さんも一緒にあやとりとか
してくれたし、
本当は愛されてるんじゃないかな、
初子って、って。
でも、あのラストの微妙なキスは
ちょっと気になりますね。
初子が大阪行っちゃったら
三島君初子のこと忘れちゃうんじゃないかな?
ってちょっと思ったりもしました。
だからちょっと不安もありますね~
確かに。

トラックバックさせていただきます☆
わたしの感想もよかったら
読んでくださいね。
返信する
初めまして (ピピ)
2009-01-17 21:12:20
希望を持てたということはいいことですね。
残念ながら、わたしはそうは思えませんでした…

ラストの微妙なキスって…すみません、全然覚えていません。実はこの映画を見たのは一年近く前で、レビューをアップするのを忘れていたのでした。今となっては内容を全く覚えていません。

一年後には内容をすっかり忘れるような薄い映画のようです…残念ながら。
返信する