ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

第3回ARGカフェ

2009年02月22日 | 図書館
 わたし自身が登壇者の一人となった第3回ARGカフェが京都で開かれたので、土曜日、出かけてきた。
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090119/1232321266
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090223/1235322980

 ARG(ACADEMIC RESOURCE GUIDE) を主宰する岡本真さんからは「京都で開くからぜひ」とお誘いをいただいたが、京都と大阪とはいえ、わが田舎町から会場までは3時間の余裕を見て出かけてちょうどであったので…(^_^;)

 ARGはインターネットの学術利用をテーマとするサイトであり、岡本真さんが一人で膨大な情報を日々発信されている。そのボランタリーな活動にはどれだけ賞賛を送っても送り足りない。わたしたち図書館関係者だけではなく、このARGに刺激され、恩恵を被っている者は数知れないのではなかろうか。
 
 冒頭、岡本さんは「ARGカフェは出会い系です。この場を介して多くの人々と知り合い、人の輪を広げてほしい」という意味のことをおっしゃった。「ARGカフェをきっかけに結婚していただくのもいい、仲人をという依頼にはいくらでも応える」との言に会場は大いに沸いた。

 さて、一人5分の持ち時間、しかもストップウォッチを持たされて、時間がくればぴぴぴ~と鳴って強制終了という恐ろしげな「講演」に呼んでいただいたのは初めての経験。しまった、こんなに短いとは! 練習してくればよかったよ! などと後悔したのは後の祭りで、ついつい早口で焦ってしどろもどろになりつつしゃべったものだからちゃんと皆さんに話が通じたのか心配で…

 で、結果からいえば、この「ライトニングトーク」というのはいいアイデアであると痛感した。皆さん5分の持ち時間を存分に使って実に巧みに論点を呈示してくださっている。12人も登壇できるとは満腹感いっぱいであり、かつ「もっと聞きたい!」と思わせる飢餓感にも満ちており、これほど盛りだくさんの「講演会」というのも珍しい。しかもテーマはインターネットを使った学術情報、とまあ、いちおうの縛りがあるので、その線であれこれとお話しを伺うことができた。「ARGフェスタ」と称する二次会でも存分に皆さんとお話しができて本当に充実した一日だった。

 などと締めくくる前にまずはそのARGカフェについて短評を。

 何よりも当エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)にとって大いなる関心を刺激してくださったのは、後藤真(花園大学)さんの「人文「知」の蓄積と共有-歴史学・史料学の場合」、そして岡島昭浩(大阪大学) さんの「うわづら文庫がめざすもの-資料の顕在化と連関」 である。どちらも画像データベース構築というテーマが共通している。

 後藤先生は古写真の電子化に取り組んでおられて、しかも科研費をこれでとってこようという意欲に溢れておられる点では、大いに興味をそそられた。貧乏所帯のエル・ライブラリーは多くの写真を抱えてその整理に四苦八苦していると同時になんとか電子化を、そして科研費を(^_^)と考えているので、後藤先生や岡島先生のお仕事には大いに惹かれるし、勉強させていただきたいと思った。

 「青空文庫」にオマージュを表した「うわづら文庫」を主宰されている岡島先生には、そのネーミングの卓抜さに脱帽したが、あまりにも多い画像データにも圧倒された。二次会では裏話も多少聞かせていただき、今後あれこれ教えていただきたいものと思った。うわづら文庫↓
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura.html

 また、国会図書館の小篠景子さんに(「「中の人」の語るレファレンス協同データベース」 )再会でき、三次会で親しくお話できたことが収穫であった。小篠さんの発表はなんと紙芝居! いまどき、パワーポイントは誰でも使うが、手作り紙芝居で報告されたのには大いに感じ入った。素晴らしい絵心にも溢れておられるので、ぜひこの路線で続けていただきたい。

 他の方々の発表もそれぞれに刺激に満ちていたので、以下、手短に。

・當山日出夫(立命館大学GCOE(DH-JAC))
「学生にWikipediaを教える-知の流動性と安定性」

 「陵墓」(現在では「天皇陵」)を課題に学生にウィキペディアについて考えさえたという点、大いに感嘆。二次会でもお話しを聞かせていただき、「Wikipediaは日々書き換わる。しかもそれが正しい方向に書き換わるとは限らない」という指摘には大いに首肯。わたしたちが安易に使うWikipediaの利用法について心せねばならないと痛感した。

・小橋昭彦(今日の雑学/NPO法人情報社会生活研究所)
「情報社会の“知恵”について」

 小橋さんは粋な和服で登場された。「知恵」が仏教用語とは知らなかった。しかも、これは善悪の判断を含む言葉であったとは! 二次会に参加されなかったのでお話しが聞けなかったのは残念。

・三浦麻子(神戸学院大学)
「社会心理学者として、ブロガーとして」

 社会心理学会は論文の電子化が遅れていると聞いてびっくり。わたし自身も関心のある分野だけにとても残念。三浦さんの報告はユーモアに満ちて楽しいものだったが、テレビの生放送があるとかで二次会は参加されなかったのがさらに残念。

・村上浩介(国立国会図書館)
「テレビからネットへ」
 
 これは驚くべき報告であった。ある日ある時、国会図書館のサイト内にある「カレントアウェアネス・ポータル」というページにアクセスが殺到してサーバーがダウンしたことがあった。なぜこのようなことが起きたかというと、その原因はとあるテレビ番組にあった…! という話を興味津々、面白可笑しく教えてくださった。おそるべし、テレビ。テレビをまったくといっていいほど見ないわたしにとっては信じがたいような話であった。

・福島幸宏(京都府立総合資料館)
「ある公文書館職員の憂鬱」

 福島さんが「京都府立総合資料館は博物館でもなく図書館でもなく、文書館(もんじょかん)です」とおっしゃったことが強烈に印象に残る。エル・ライブラリーは「大阪産業労働資料館」という正式名称が示すように、「博物館」を意識している。さらに、愛称が「エル・ライブラリー」つまり図書館であり、英語名が"Osaka Labor Archive"でもあるように、文書館なのである。実は福島さんがおっしゃったことにはひねりがあって、京都府立総合資料館は博物館でも図書館でもあるのだ。しかし、文書館という自己定義をした途端に市場は狭くなってしまう。スタッフの資質も文書館向きの人間ばかりになってしまってPCに強い人材が集めにくくなる…。なるほど、これは頭が痛い話です。福島さんとは二次会でも親しくお話しさせていただき、またの再会を誓い合って別れた(いや、ご本人はかなり引いておられたような気もする…)。

・中村聡史(京都大学)
「検索ランキングをユーザの手に取り戻す」

 中村先生の報告で何より興味津々になったのは酒のお話。いやぁ、実に素晴らしい。延々と一人三次会、一人四次会と繰り出される様を画像つきで実況中継。これはよいわ。などと個人的趣味で話をまとめてはいけません。酒の話はネタ振りであって、人脈とネットを使った情報網のお話でした。ご自身で作られたランキングサイト。これははじめてみましたので、使い方はこれからぼちぼちと。http://rerank.jp/
もう一つ素晴らしいのは「京都食べある記」http://tabe.aruki.org/index.php


・嵯峨園子(中京大学情報科学研究科/ソシオメディア)
「ライブラリアンの応用力!」
 
 嵯峨さんは会場入り口で『DESIGN IT!』という中身の濃い値段も高い雑誌を配布してくださっていて、ありがたく頂戴してきた。嵯峨さんは元企業図書館員で、現在、中京大学でライブラリアンを研究テーマに勉強されている。「図書館員」が研究テーマになるとは驚きであった。図書館員の質の高さ、専門性について言及されると、ほんとうにそうだな、と首肯すると同時に自身のことも反省させられる。まだまだ修行が足りないわ…!

・東島仁(京都大学大学院)
「ウェブを介した研究者自身の情報発信に対する-「社会的な」しかし「明確でない」要請?」

 血液型判定を信じている人が周りにいますか? とまずは問いかけられる。ネット上に有象無象存在する怪しげなサイトについて、これらが専門家のサイトよりよほど面白くて見やすい、という指摘にはなるほどと納得。研究者は自分たちの情報発信についてわかりやすさについてもっと自覚的に見直すべき、という指摘にはさらに納得。これ、誰か部外者に指摘されないと自分では絶対に気づかないだろうなぁと思った。反省。

 最後に、わたし自身の発表について。
・谷合佳代子(大阪産業労働資料館 エル・ライブラリー)
「エル・ライブラリー開館4ヶ月-新しい図書管理システムとブログによる資料紹介」

 大阪府からの委託金も補助金もなくなり、貧乏のどん底に突き落とされた当協会(大阪社会運動協会)は、昨年10月にそれでもへこたれずに新しい図書館「エル・ライブラリー」を立ち上げた。インターネットを使ってこれからやろうとしていることは、二つ。一つは理想のOPAC構築に向けて「図書羅針盤」(株式会社図羅製作)をカスタマイズしていくこと。もう一つは、灰色文献(グレーペーパー)さらにはブラック・ペーパーとも言われるような、市場に流通しないレアな資料についてブログに写真付きで解説し、記事そのものをデーターベースとして使っていこうというもの。まだ記事は3つしかアップしていないが、これからの展望如何では本にして出版することも可能だという指摘を二次会で頂戴した(深謝)。エル・ライブラリーのレアもの資料紹介ブログはこちら。
http://d.hatena.ne.jp/shaunkyo/



 インターネット時代にわたしたちはいかに情報を発信しいかに受け止めるべきか、様々な方向からの提起があり、実に刺激に満ちた会でした。この「出会い系」の場を大事にして、明日からの仕事に生かしていきたいと思います。このような場を設定してくださった岡本真さんにまずはお礼を申し上げます。そして、ボランティアで会合を成功裡に導いてくださったスタッフの皆様にもお礼申し上げます。次はぜひエル・ライブラリーにお越しくださいませ。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (まーくん(レンタルサーバー研究者))
2009-03-21 14:33:27
こんにちわ。まーくんです。

ARGカフェなんてあるんですか?
学術利用をテーマにしたサイトって
すごく勉強になりそうですね。
訪問したくなりました
また来ます
返信する
ARGは (ピピ)
2009-03-22 01:43:25
 読み応えのあるサイトです。
 ぜひ実際にサイトをお読みください。お奨めです。
返信する