ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

アフタースクール

2009年01月12日 | 映画レビュー
 観客を騙すことばかり考えて、ドラマが限りなく透明に近い薄さになりました。これではいかんやろ~。

 前作「運命じゃない人」がかなり面白かったので期待したのだけれど、これはとにかく観客を騙すことに力こぶを入れすぎて、それ以外の部分にはまったく目配り気配りがなかったところが致命的。確かに謎解きは面白かったし、騙されたとわかったら、もう一度最初から思わず見直してしまったし、そういう「力」のある作品には違いないけれど、「だからなんなの?」と、その薄さに脱力してしまう。

 この手の映画は、騙されて喜ぶ観客と怒る観客の二種類に分かれそうだ。わたしは騙されて喜ぶほうだけれど、トリック以外にもちょっとした台詞やカットで含蓄の深さを見せてほしかったのに、作家としての浅さを露呈してしまった。

 ストーリーはネタバレさせずに書くのが難しいのでさらっとだけ流しておこう。

 中学時代の同級生だと名乗る怪しげな探偵に、同級生の木村を捜してくれと強引に頼み込まれた中学教師の神野。探偵は同級生を名乗っているが実は別人であり、借金返済をヤクザに迫られてやばい仕事に手を出していたのだった。そんな事情も知らずに同級生木村捜索にいやいやながらもかり出された神野は、同じく同級生で木村の妻の出産に立ち会う。木村はどうやら浮気をしていて、愛人と逃げたらしいのだが…

 会社の不正を握っているらしい木村が失踪。しかも若い女と一緒のようだ。ヤクザの親分は借金返済を迫る。探偵は今日中に木村を捜さねば身の危険にさらされる。気の良い木村がまさか浮気を? 神野は教師らしくない教師で、優柔不断だが根が優しいのでつい木村探しにつきあって…。

 さて、いったい誰が誰に騙されているのか? 話は面白いし、脚本は確かによく練ってある。が、その練り方が単なるシチュエーションの面白さだけだったとしたら、この手の話で最後まで引っ張るのは難しい。なぜ同じような前作が面白くてこれがダメなのか、自分でもよくわからないのだが、前作を見直してみたら判明するかも。

 堺雅人の笑顔、相変わらずこの人はいつもニコニコ(にやにや)笑っているんですねぇ。で、この魅力的な笑顔にも騙されるからね。(レンタルDVD)

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アフタースクール
日本、2008年、上映時間 102分
監督・脚本: 内田けんじ、製作: 酒匂暢彦ほか、エグゼクティブプロデューサー: 藤本款、音楽: 羽岡佳
出演: 大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人、常盤貴子、田畑智子、伊武雅刀


散歩する惑星

2009年01月12日 | 映画レビュー
 変な映画だという評判なので、どれほど変なのかと覚悟して楽しみにしてみたら、思ったほど変ではない。これならD.リンチの「インランド・エンパイア」のほうがよほど理解に苦しむ。

 なんで「散歩する惑星」かというと、この物語の舞台がどこかの惑星の話ということらしい。しかしそんなこと、説明あったかしら? とにかく、少しずついろんな場面を切断しつつ繋ぎつつ、脈絡がないようで実はなんとなく辻褄が合っていて、いや、そうではなくてやっぱりぶつ切りの蛸を酢味噌であえてみました、ではなくて蛸はやっぱり唐揚げでしょう。という、不条理映画です。ちなみに、蛸は出てきません。

 監督が広告フィルムメーカーということなので、短時間でインパクトのある、四コマ漫画ふうシークエンスを次々つないでいく作風。わたしは昔のテレビ番組「ゲバゲバ90分」を思い出してしまった。今にも「ゲバゲバ、ピーッ!」と聞こえそうで笑えました。

 いちおう、リストラだの、保険金詐欺だの、放火だの、異議申し立てのデモ行進だの、といった社会風刺風の場面があるのだけれど、中年肥満夫婦の不気味なベッドシーンとか、夫が妻のお尻をなで回すとお尻が真っ黒に汚れてしまうという妙なシーンとか、笑えるけれどいったい何を言いたいのかわからない意味不明の場面が延々と続く。面白いのは、人々が無目的にただひたすら同じ方向に車を走らせるために大渋滞が起きるとか、前の列の人を鞭で打ちながら歩むけったいなデモ行進とか、付和雷同の大衆を冷笑するような場面。監督は一応これを社会批判のつもりで作ったのかもしれないが、それを観客に理解させるのはかなり難しそう。

 というわけで、誰にもお奨めしないケッタイな映画。

 ところで、「散歩する霊柩車」っていう映画があるんですね、初めて知りました。(レンタルDVD)

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散歩する惑星
SANGER FRAN ANDRA VANINGEN
スウェーデン/フランス、2000年、上映時間 98分
監督・脚本: ロイ・アンダーソン、製作: フィリップ・ボベール、音楽: ベニー・アンダーソン
出演: ラース・ノルド、シュテファン・ラーソン、ルチオ・ヴチーナ、ハッセ・ソーデルホルム、トルビョーン・ファルトロム