goo blog サービス終了のお知らせ 

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 7月15日 映画館(3)

2019-07-15 15:45:40 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 7月15日 映画館(3)




 スクリーンの光と非常灯の緑を頼りに非常口を凝視する。
誰かが立っていた。
 私は非常口と壁が作る隅に収まる調度品でございとばかりに、影深い隅に誰かが立っていた。
たぶん、そのときは背の高い女性だったと思う。
 驚いて視線をスクリーンへ移し、もう一度非常口を見たときは腰の曲がった老人のように見えた。
輪郭が不明瞭な影。
 一定ではない間隔で伸び縮みし、膨らみ萎み、見ようによっては男にも女にも見える、不確かな何か。
ただ、目は合っていたと不思議と確信している。
 その視線が外れたと感じた次の瞬間、それは人の形を辞めると、

“ クンッ!”

と天井まで伸びて影の中へと消えた。
 映画はクライマックスを迎えていた。
主人公が悪役をビルから突き落としたシーンの、悪役の悲鳴を聞いて我に返り、そこでようやく肺から呼吸の塊を吐き出せた気がした。
映画が終わって照明が増えても、なかなか立ち上がれなかった。






童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------