日々の恐怖 7月11日 映画館(1)
今はもう潰れてしまい月極の駐車場になってしまっているが、地元には単館系の昔ながらの映画館があった。
これはそこで噂され、そして私自身もそれらしきものを目撃した中学生の時の話である。
要は、
上映中、スクリーン近くにある非常口に幽霊が出る。
という全体的にぼんやりとした幽霊話である。
ぼんやり加減は相当なもので、幽霊の性別はもちろん身長や体型も語る人間によってバラバラだった。
それは、
・喪服を着た初老の女性がこっちを見ている。
・双子の男の子が恨めしそうに睨み付けてくる。
・やたら髪の長い太めの女性だった。
・背の高いリーゼントの老人男性だった。
・坊主頭のガリガリな少女が何か呟いている。
といった具合だ。
その映画館には子供の頃から通っていたけれど、そんなものは見たことがなかったので私は全く信じていなかったのだが、他の人が幽霊話で盛り上っているのに自分だけ見ていないという事に何となく疎外感を感じ、不満にも思っていたのも確かだった。
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