日々の恐怖 11月1日 R163(3)
それから車はどんどん走り続けました。
いつもなら7分くらい、長くても10分はかからない程度で帰れるはずなので、もう家に着いていてもよいはずです。
そこで初めて怪訝に思った私は、今どこを走っているのか確認するために窓の外を見てみました。
そして驚きました。
私を乗せた車は、トンネルを通過している途中でした。
勿論、帰路にトンネルを使用したことなどありません。
“ はっ!?”
と思わず声をあげそうになり、そこで初めて親ではない、別の誰かの車に乗ってしまっていること、今まで親と信じ込んでいたこの男の人が、何の面識もない赤の他人であることに気が付きました。
私の胸に猛烈な恐怖が波のように押し寄せてきました。
それまでは男の人と普通に喋っていたのですが、誰だか分からないと気付いてしまった今では、もうまともに声を出すことすらできません。
そしてそれから、今まで私が何か話しかけても消え入るような声でしか返してこなかった男性が、いきなりはっきりとした声で話しかけてきました。
内容はあんまり覚えていませんが、
「 今日の昼は母さんの弁当食べたんか?」
「 破竹の勢いで長男が成長しとる。」
「 お前もはよう結婚せえ。
じいちゃんが見合いの写真見ながら、仏壇の前で心配しとるで。」
というようなことでした。
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