大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 5月8日 紅茶(3)

2017-05-08 21:32:30 | B,日々の恐怖





  日々の恐怖 5月8日 紅茶(3)





 あったかい。
湯気と共に良い香りが車内に立ち込めた。
 猫舌なので、紅茶をちょびちょび舐めるように飲んでいると、携帯が鳴った。
画面を見ると、保険会社からだった。
 Yは、

“ レスキューが無事着いたかどうかの確認だな。”

と思い、電話を取った。

『 あ、Yさん、○○社です。
ご状況いかがですか?』
「 あ、どうも~。」
『 実はですね、大変申し訳ないのですが、△△道が波浪警報のため現在通行止めになってしまっていて、Yさんがいらっしゃる地点まで、大きく迂回していかなければならないため、スタッフがそちらに着くまでに、最低あと4、50分は掛かってしまうと思われます。』
「 ・・・え、・・・・?」
『 もしもーし?』
「 ・・・・・・。」
『 もしもーし、Yさん、大丈夫ですか?』
「 あの・・・。」
『 はい。』
「 あの、スタッフの方、もう着いてます。」
『 え?』
「 10分まえくらいに・・・男の、若い人。
私、もう車両から引っ張り出して貰いました。」
『 え、本当ですか?』
「 ええ。
今、紅茶をいただいて・・・。」
『 紅茶?』

会話がなかなかかみ合わない。
 保険会社の社員は、矢継ぎ早に質問をしてきた。

『 そのレスキューは何時頃来たか?
どんな車両で、どんな人相で、どんな服装で、何人来て、どんな対応をしたか?』

Yは答えながら、携帯を握る手に汗がにじんでいくのを感じた。
 不安から、自分がだんだん早口になっているのが分かった。
保険会社の社員は、

『 Yさん落ち着いてください。』

と言った後、一呼吸置いてこう告げた。

『 ・・・あの、・・・それは、・・・本当に当社のスタッフでしょうか?』












童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------