日々の恐怖 5月7日 紅茶(2)
雨はまだまだ激しく降っている。
風も轟々、外は真っ暗で心細い。
“ 早く来てくれないかな~。”
と思いつつ、ぼんやり時間をやり過ごしていると、サイドミラーにぼんやり近づいてくる明りが見えた。
やっと助けが来たようで、Yはほっとした。
軽トラのような車両がYの車の後ろにぴったり止まり、中からレインコートを羽織ったスタッフが現れた。
窓をコンコンと叩くので、少し開けると、
「 大丈夫ですか?」
と聞かれた。
思っていたより若い、まだ青年のような男だったが、Yには救いの神に見えた。
「 早かったですね。」
「 出られますか?」
「 ドアが水圧で開かないみたいなんです・・・。」
「 じゃあ、窓から出ましょう、僕が引っ張るんで。」
手際よく、Yは無事に車から出された。
スタッフの男は、自分と揃いのレインコートをYに羽織らせ、後ろのトラックまで誘導してくれた。
Yはレスキュー車の助手席に乗せてもらった。
タオルも貸してくれた。
スタッフの青年は、自分はYの車のエンジンとか車両の不具合状況を調べなきゃならないから、ここで少し待っていてくれと言った。
「 あ、これサービスです。
温まりますよ。」
青年はYに魔法瓶を差し出して、自分は豪雨の中出て行った。
“ 至れり尽くせりだな~。”
と感謝しつつ、Yは魔法瓶の中身を注ぐ。
紅茶だった。
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