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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 8月10日 俺が俺であること

2015-08-10 19:42:57 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 8月10日 俺が俺であること



 体重が減った。
土方だった頃、工程の関係で数ヶ月山に篭りきりになるハメになった。
 同僚から、

「 片眉剃って行け!」

だの、

「 イノシシの肉よろしく!」

だの言いたい放題言われながら現場へ行った。
 その後は、

「 あれ、これって出張じゃね?社長出張手当付けて!」
「 死ねよバカ!」

みたいな揉め事はあったものの工事は終了した。
 山を降りて久しぶりの下界だぜヒャッハーみたいなノリで出社したら社内全員、

「 誰テメエ?」

新手の職場イジメかと思っていたら、曰く激ヤセしててわからなかったとの事だった。
 元が筋肉質で100kg近かったし、脂肪はそんなになかったんでからかうなよ、と思いつつ会社の姿見で見たら、見知らぬイケメンが(当社比-2500%減)いた。
 慌てて休憩所の体重計に乗ったら50kg近いところまで落ちてる。
約半年でガチムチマッチョがヒョロガリになった。

“ 体に倦怠感もないし、力仕事に手こずった覚えもないんで、完全に気づかなかった・・・。”

って、あるかそんな無茶な状況。
 山籠りの最中ズボンがダブついた記憶もないし、上着が邪魔になるほど痩せてる状況に気づかない程ぼけてたとはさすがに思いたくない。
 事実、その後協力業者に挨拶回りに行って、一緒に山にいた人からも、

「 山にいたときと違う、別人じゃないか?」

と言われる始末だった。
 つまり、ここにいる俺は下山の際に誰かと入れ替わったか、もしくは帰宅してから出社までの約8時間の間に体に無理なく40kg体重を減らしたスーパーダイエッターと言う事になる。
 あるいは、元々ガチムチマッチョな俺はいなくて、関係者全員がその謎の筋肉ゴリラを俺だと思い込んでるケースだが、どの道どれもありえない。
会社でもさすがに気味悪がられて、翌日休んで警察と市役所と歯医者を巡ることにした。
 警察で状況を話すが、当然病院に相談しろとやんわりとお断りだった。
市役所で戸籍謄本確認するも、覚えのない身内なんている筈もない。
歯医者に行ったのは山に行く前治療してたからで、よくテレビドラマなんかである歯型が一致して、というヤツに期待したからだった。
 DNA鑑定は当時の俺は親子判断用だと思い込んでたし、元のマッチョな俺にDNAを取られるような覚えもなかったからスルーした。
歯科医に行くと受付であっさりと俺だと認められた。

“ あれ?
この姿でここに来るのは、はじめてだと思ったけど?”

そんでごく普通に診療、ところが新しく出てきた疑問が発覚した。
 医師が、

「 あれ、なんでここに犬歯?」

と言った。
 ヤンチャ時代に折って無くした(カルテと記憶は一致)筈の犬歯が生えてると言われた。
でも、支払いの保険の記録や詰め物の型をとった時の記録は完全に一致するという事態だった。
 結論を言うとこの問題、実はそれから10年近く経った今も解決してない。
仕事関係の人間は疎遠な人まで全員“ガチムチマッチョの俺”で記憶されていたし、仕事に関係のない知人は“ヒョロガリの俺”で知ってるが、そのディテールが細かいところで皆違う。
身内すらもガチムチ俺派とヒョロガリ俺派で記憶が分かれてた時点で諦めた。
 転職したのを幸いに、俺は俺であるとして生きている。
免許証や公的書類の写真はすべて今の顔だ。
 改めて自分でもとりとめないと思ってしまうんだが、これで全部すっきりするようなオチも実は霊がどうのこうのなんて話もない。
自分にとっては、自分があやふやで怖いと言うことです。









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