日々の恐怖 8月19日 鬼
里帰りしてて、姪を保育所に迎えに行った時に思い出した。
4歳の姪を保育所に迎えに行くと、庭で走り回って遊んでいた。
その保育所、俺も卒業生なんだけど、神社と同じ敷地内にある。
数人の子と走り回ってるんだけど、見た感じ鬼ごっこ。
でも、鬼の子が分からなかったというか、見当たらないというか、キャーキャー言いながら何かから逃げてる感じ。
先生に挨拶して姪を呼んで貰って、手を繋いで帰る途中、聞いてみた。
「 誰が鬼だったの?」
そしたら姪っ子、
「 鬼の役は鬼に決まってるでしょ!」
“ エア鬼ごっこか?”
って思って、深く追求しなかった。
鬼役が足遅いとずーっと鬼だったりするから、苦情でもきてルール変えたのかなとか。
それで帰宅して夜、姉と母がいるところで聞いてみた。
姉「 いや?そんな話は聞いてないけど。
てか、あんたも小さいころ同じようなことしてたじゃん。」
俺「 へ?エア鬼ごっこ?」
姉「 うん。
鬼ごっこのルールも知らないで遊んでるんかと、姉ちゃんは情けなくなったもんよ。」
母「 何言ってんの、あんた(姉)もやってたわよ。」
姉「 うっそ、あたし覚えてないわ。」
母「 あの保育所に通ってた子は皆、鬼無しで鬼ごっこしてた。」
そこで、ふと思い出した。
俺がここに通っていたころ、毎日のように鬼ごっこして遊んでいたこと。
鬼は何時も同じヤツだった。
ジャンケンで決めるとかなくて、鬼は決まったヤツがやってて、誰も捕まえられた事が無い。
だからソイツはずっと鬼だった。
それで、捕まったら死んじゃうってルールだった。
本当に死ぬとは思ってなかったけど。
鬼が何時も同じヤツだったのは、イジメとかじゃ無いと思う。
ソイツはいつも神社の方からやってきて、姿を見かけたら鬼ごっこスタート。
小さい頃は全く疑問に思わなかったけど、鬼ごっこ以外の室内遊びのときはソイツはいなかった。
全員同じ小学校に上がったけど、ソイツはいない。
そういえば名前も知らない。
それどころか、顔も姿も思い出せない。
姉にその話をしたら、全く記憶に無いと言われた。
気になったんで幼馴染に電話してみたけど、誰も覚えていなかった。
ソイツの存在自体、誰も覚えていないと言う。
姪っ子に、
「 鬼の子は神社から来る子?」
って聞いてみた。
姪は、
「 んー?なぁに?」
そう言ったまま、会話にならなかった。
よく、“小さい頃遊んでたけど自分の記憶にしかない”って話があるけれど、あれって二人っきりで遊んでたパターンが多い。
沢山の友達が一緒だったのに誰も覚えていない。
しかも、まだソイツはあの場所にいて、鬼をやり続けているようだ。
しかし、なんで俺だけ、そのことを思い出したんだろう?
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