大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 8月7日 産科

2014-08-07 18:22:35 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 8月7日 産科




 緊急帝王切開で出産入院した時、2階3階の一般部屋は満杯で入れなかった。
そこの産科は、二人部屋と一般個室から選べる。
しかし、私は一般個室を希望していたが、空いていない。
二人部屋のベッド一つも空いていない。
 仕方ないので、初日は1階の経過観察室のベッドで過ごし、二日目に、

「 一般個室料金で良いので、4階の部屋を利用して貰えますか?」

とお願いされた。
 4階の部屋、そこはワンルーム並の設備、家具家電がおかれた特別個室だった。
家族も寝泊まり出来る様にか立派なソファベッドがあり、クローゼットには布団一式、システムキッチンやシャワー室、とにかく豪華すぎる部屋だった。
母子別室のため、夜はゆっくり休めると思った。
 そこに移って三日目の夜だった。
うとうとしていると、廊下から男性の話し声が聞こえた。

“ 隣の特別個室の方の身内かな?”

と思ったが、何かがおかしい。
 帝切の傷口が痛むがドアの前まで行き、耳を澄ます。
すると、奥から大人の泣き声が複数聞こえ始め、読経が始まる。

“ 不気味だし、疲れているのかな・・、気のせいだろう・・・。”

と、またベッドに戻り眠る。
 私は疲れていると耳鳴りがしたり雑音が聞こえたりする体質で、ベースの音やエアコンの音がお経の様に聞こえたりするからだ。
 それで、夢を見た。
引き戸を開き、和尚さんらしき人が廊下に出ていく。
喪服姿の人々がお礼を述べて見送る。
中の部屋は和室。
真ん中にベビー布団が敷いてある。
 場面は一転する。
薄青色のつなぎの清掃員二人が、さっきの和室に掃除機をかけ、焼香台を片付けていた。

 目が覚めたのは朝方だったが、もう汗だく。
やけにリアルな夢だった。
で、昼食前にドアをノックされた。

「 部屋のお掃除に来ました。」

薄青いつなぎを着た清掃員二人だった。
 傷口が痛み、掃除の間はソファで横になろうと思ったが、

「 その体勢じゃキツイでしょう。」
「 埃も出るし、他の部屋でお休みになって下さい。」

と言われた。

“ 他の部屋・・・?
隣部屋は空いたのかしら・・・?”

と思ったら、エレベーター側からは見えない廊下に引き戸からあり、そこに案内される。
 引き戸を開くと和室だった。
そこは、夢で見たままの和室だった。
パニックになりながらも体の為に横になってみたが、頭痛がして何故か涙まで出てきた。
 清掃員が、

「 終わりました。」

と呼びに来てくれた際に、

「 あの和室も特別個室か何かですか?」

と聞くと、

「 あの部屋は時々集まりに使うだけで、部屋が満室でも泊まれないし、面会室でもないし、まあスタッフの会議室みたいな所です。」

との返事だった。
 私が昨日聞いた声が間違えなかったとしても、

“ あとは完全に夢だよね?”

と思いつつ、凄く気味悪くて、不思議話としても今まで誰にも言えずにいました。
思い出す度、

“ 忘れよう!”

と反射的に拒否状態です。












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