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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道200

2009-03-11 19:11:37 | E,霧の狐道
   憩いの広場


 昼に痛み止めを飲み、痛みが和らいだ。
まだ、肩と足に痛みはあるが、痛み止めが効いて動きが楽になるのは有り難い。
昼食が終わると、看護婦の井上さんが車椅子で病院内を案内してあげようと言うので、俺はご好意に甘えることにした。
 俺は車椅子に乗り、井上さんに押されて病院内のあちこちをウロついた。
特に俺にとっては、一階の売店の位置が分かったことが収穫だ。
日用品や新聞や本、その他のゴチャゴチャしたものが売ってある。
レジのオバちゃんが、挨拶代わりに飴を一つくれたのも嬉しかった。
 売店を通過した後、病院の中庭に出た。
病院の建物は口の字の形をしており、真ん中に中庭がある。
藤棚やベンチがあって、散歩している人も見受けられる。
柔らかな日差しで、風が少し吹いて気持ちが良い。
木々が植えてあって公園のようだ。
 高い木から葉っぱが、ヒラヒラと落ちて来る。
地面にも、落ち葉はかなり落ちている。
木の下で、初老のおばさんがホウキを持って落ち葉を掃き集めている。
車椅子を押している井上さんが言った。

「 ここは、憩いの広場ね。」
「 憩いの広場・・?」
「 そう、いろいろな人がここに来て休憩して行くわ。」
「 いろいろな人か・・・。」

俺は人が座っていないベンチに眼をやった。
井上さんが言った。

「 患者さんばっかりとは限らないわよ。」
「 あ・・・・。」

俺は患者と医者や看護婦は違うものだと思っていた。

「 みんな、同じなんだ・・・。」
「 そうね、みんな同じね。」



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霧の狐道199

2009-03-08 20:21:01 | E,霧の狐道
「 主治医が手術をしたがっているから、手術を勧める電話があっても承知しち
 ゃダメだよ。」
「 ああ、分かった、分かった。」
「 何だか、不安だなァ~。」
「 大丈夫だって、手術しないって言えばいいんだろ!」
「 そう、そう、ようやくホッとした。」
「 あ、それから病院まで送ってくれた人に礼を言っておいたぞ。」
「 あ、ありがと。」
「 口だけじゃなくて、現物が欲しそうだったよ。」
「 えっ!」
「 仕方がないから、物を送っておくよ。
 どっちか言うと、現金の方が好きそうだったけど・・。
 おまえ、もうちょっとお金の掛からない人に助けられろよな!」
「 他に誰も居なかったんだよ!」
「 ホント、金の掛かるヤツだなァ。
 家は貧乏なんだから。
 入院の費用も掛かってくるし・・・。」
「 仕方無いだろ、なっちゃったんだから!
 じゃ、頼んだよっ!」
「 ああ、分かった、分かった。」

“ ガチャ!”

思った通りブツクサ言われた。

“ 父親の方は、これで大丈夫だな・・・。
 狸小路から電話が掛かって来たとき、母親が出るとちょっと不安な気もする
 が・・・・。
 う~ん、でも、ま、大丈夫だろう・・・・・。”

 これで一応、俺は手術は逃れられると思った。
少しホッとすると、腹が減って来る。
昼食の臭いが通路に漂って来ている。

“ あ、メシの時間だ。
 部屋に戻らなきゃ。
 とにかく、メシだ、メシだ!”

俺は、急いで病室に戻った。




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霧の狐道198

2009-03-06 18:53:30 | E,霧の狐道
 受話器を置く音がした。

“ ガチャ!”

待ち受け音楽が始まった。

“ 寂しさにぃ~、負けたァ~♪
 いいえっ、世間に負けたァ~♪”

「 ああ、また、この音楽かァ・・・。」

“ この町を、追われたァ~♪
 いっそ、死のうと思ったァ~♪”

「 何か、気分が暗くなって来たぞ・・・。」

“ ちか~らの限り生きたのにぃ~♪
 未練などないわァ~~~♪“

「 うう、手術はイヤだァ・・・・。」

“ ガチャ!”

「 おう、貴志、手術するのか?」

父親が出て来た。

「 しない、しない!
 電話の待ち受け音楽、いい加減に変えて欲しいんだけど・・・。」
「 いいじゃないか、これで。」
「 気分が暗くなるよ。」
「 俺は、これを聞くと元気が出るんだ。
 “昭和枯れススキ”だぞ。
 我が家にピッタリだ。」
「 ピッタリと思ったら、貧乏から脱出しろよォ~。」
「 まあ、これはこれで、しみじみしていいんだよ。
 それで、手術はいつするんだ?」
「 しないんだって!」
「 どうして?」
「 ヒビが入っているだけで、固定しておけば治るんだよ。」
「 何だ、しないのか。
 それで、タヌキの友達が出来たらしいが・・・?」
「 それは、主治医の名前で、狸小路って言うんだよ。」
「 ふ~ん。」



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霧の狐道197

2009-03-04 19:09:30 | E,霧の狐道
 家に電話を掛けると母親が出て来た。

「 もしもし、貴志だけど、狸小路から電話はあったか?」
「 えっ、タヌキから電話があるの?」
「 違う、違う、主治医だよ。」
「 うん・・・・?
 貴志の主治医は、タヌキ?」
「 違う違う、人間人間!
 とにかく、騙されて手術すると言っちゃダメだよ。」
「 貴志、私は、タヌキに騙されるほどモウロクしとらんよ。
 で、誰から電話が来るのよ?
 人間かタヌキかハッキリしてよ。」
「 人間のタヌキだよ。」
「 人間は人間で、タヌキはタヌキだよ。」
「 だから・・・・・。
 もう、誰でもいいから、手術はしないって言えばいいんだよ!」
「 おまえ、手術をしなければならないのかい?」
「 いや、手術はしなくても治るんだよ。」
「 じゃ、どうして手術するって言うのさ?」
「 だから、信楽のタヌキがやりたそうにしてるんだよ。」
「 手術は、信楽でするの?」
「 いや、信楽じゃなくて、この病院だよ。」
「 ああ、良かった。
 そんな遠い所まで行けないよ。
 そこの病院で手術するの?」
「 違う違う、手術はしないの!」
「 ああ、大変だ。
 手術をするのか・・・。
 じゃ、父さんにちょっと言ってくる。」
「 待て~っ、こらァ~~~!!」



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霧の狐道196

2009-03-02 19:47:26 | E,霧の狐道
 俺はベッドに座って左肩を処置され、イデデデデと叫びながら、所謂“天使の羽根”を装着した。
そして、タヌキはニヤニヤしながら言った。

「 後の予定については、ご両親と相談しますから心配しなくていいですよ。
 じゃ、今日は、こんなもんで終了!」

やはり、まだ、ぜ~んぜん手術を諦めていないことが分かる。
まあ、取り敢えずは診察が終わったのでタヌキから脱出だ。
 俺は再び看護婦の井上さんに補助され、車椅子に乗って診察室を出た。
通路を進んでエレベーターに移動する。
まだ、タヌキのニヤニヤした顔が頭に浮かぶ。

“ あいつ、ヤバイなァ・・・。
 あいつ、直ぐに家に電話したらどうしよう・・。
 とにかく、病室に戻ったら家に速攻電話を掛けよう。”

 俺は井上さんと共にエレベーターで4階に上がった。
4階に着いてエレベーターの扉が開き、通路を見るとナースステーションの横にあったベッドが消えていた。

“ もとの個室に戻したか・・・。”

 俺は車椅子を井上さんに押され、ナースステーションを通過し病室に戻った。
そして、井上さんが病室を出て行ったことを見届けると、早速、車椅子で病室を飛び出し家に電話を入れた。
何も知らない両親が、タヌキに騙されて手術を承諾したら大変だ。




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霧の狐道195

2009-02-28 18:14:49 | E,霧の狐道
俺は速攻で、両親に手術はダメと念を押しておいた方が良さそうだと思った。
 俺が疑念の眼で見ていると、タヌキは突然左手で右の腕を掻き始めた。

“ ポリポリポリポリ。”

俺は右の腕を見た。

“ 蚤でもいるのかな?”

特に蚤が隠れるほど毛むくじゃらではない。
タヌキは俺が右手を見ているのを見て、ニコッと笑って言った。

「 この右手が神の手です。」
「 え、神の手?」
「 そうです、神の手です。」
「 孫の手だったら知ってますけど。」
「 いや、孫の手じゃなくて神の手。」
「 はあ・・・。」
「 ゴッドハンドですよ、ゴッドハンド。」
「 ゴッドハンドって、何ですか?」
「 ホラ、手術の神様ですよ。
 この右手が奇跡を呼ぶのですよ。
 奇跡を呼ぶから神の手です。
 スゴイ技術を持ってるとかのとき言うでしょう。」
「 はあ・・・。」
「 私は手術の神様ですから、安心して手術を受けられますよ。」
「 いや、ヤッパ、手術はちょっと・・・・。」
「 う~ん、そうですかァ・・・・。」

 突然、タヌキは両肩をグルグル回してから右手に拳を作り、人差し指を一本立てて天井を指差した。

“ 何かのまじないか?”

俺は思わず天井を見た。
特に天井に神様はいない。
そして、タヌキの右手は俺の方にゆっくりと下げられ、人差し指が俺の顔の正面で止まった。
タヌキは確信を持って俺に言った。

「 君は最高の医者に巡り合ったのだ!」

俺はタヌキの人差し指を右に避けながら斜めにタヌキの顔を見た。
タヌキは自信満々の顔を右に向け、人差し指をベッドに向けて言った。

「 じゃ、一応、鎖骨固定帯で肩の形を整えて固定しますからね。
 それから、三角巾でも腕を固定しますから安静にしていて下さい。
 ジタバタすると、ポッキリ折れちゃいますからね。
 ポッキリ折れたら、確実、手術するんだけどなァ・・・。
  まあ、左足は打撲だけですから、湿布をしておけば治ります。
 それから、痛み止めも出して置きましょう。
 じゃ、処置をしますからこっちに来て下さい。」



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霧の狐道194

2009-02-24 18:59:46 | E,霧の狐道
 主治医の狸小路は、妙にニコニコして俺の顔を見た。

“ タヌキだ、こいつは絶対タヌキに違いない!”

俺は確信した。

“ この場を何とか脱出しなければ・・・・。”

俺は慌てて言った。

「 えっと、あの、手術は怖いですからダメです。
 僕は生命力が強い方ですから、サロンパスを貼って置けば治ると思います、ハ
 ハ・・・。
 それに、ホント貧乏で、手術するお金が無いんです。
 毎日、タマゴ掛けご飯とパンの耳で飢えを凌いでいます。
 もう、ホント、入院するだけで精一杯です。」

タヌキは上目遣いで俺を見た。
タヌキの眼の端が笑っている。

“ ヤバイなァ・・・。”

どうも、まだ、手術を諦めていないようだ。
 タヌキは身を乗り出して笑い顔で俺を脅迫する。

「 そうですかァ、却って治るのに時間が掛かりますよォ~。」

タヌキのドアップになった笑い顔を見て俺はたじろいだ。
眼だけが笑っていないところがとても恐ろしい。
俺は仰け反りながらも何とか防戦した。

「 死んだ爺さんに、手術だけは避けろと言われていますから・・。
 これ遺言みたいなもんでして・・・・。」
「 う~ん、そうですかァ・・・・。
 ま、ご両親の意見も聞いて見ましょうか・・・。」




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霧の狐道193

2009-02-21 18:06:35 | E,霧の狐道
俺は主治医の顔を見た。

“ どうも、胡散臭いな・・・・。”

 主治医の狸小路は、妙にニコニコして俺の顔を見てから、ボールペンでレントゲン写真を指しながら説明を始めた。

「 えっと、ここの骨、ホラちょっとヒビがいってますね。
 ホラ、ここから、ここに、こう来て、こう来ると・・・。
 これは、手術の方が良いですね。
 もうちょっとで骨折だったんですがね。
 惜しいですね、折れてないんですよ、うん、うん。」
「 あの、折れてないんだったら・・・・・。
 手術は、ちょっと・・・・。」
「 手術の方が早く治りますけどね。
 金属で固定すると、スッキリ治りますよ。」
「 手術、あの、怖いんですけど・・・。」
「 アハハハ、大丈夫ですよ。
 この手術だったら、私も出来ると思いますよ。」
「 えっ!」
「 いや、大丈夫ですよ、簡単ですから!」
「 手術せずに直せますか・・・。」
「 あ、一応、固定すれば治りますけどね。
 手術した方が良いと思いますがね、久し振りですから。」
「 何が、久し振りなんですか?」
「 いえ、こっちの話ですから、気にしないで下さいよ。
 手術した方が、早く治りますよ。
 ホント、絶対手術が良いですよ。
 うん、うん・・・・。」



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霧の狐道192

2009-02-19 20:08:30 | E,霧の狐道
 エレベーターは二階に止まり、俺は通路を看護婦の井上さんに連れられて外科の診察室に移動する。
いくつかの診察室の扉を通過し、主治医の診察室に到着した。
井上さんが扉の前で言った。

「 ここよ。」

井上さんが扉を開いて、車椅子を中に押し入れる。
 診察室の中には、机に向こうを向いて座っている小柄で丸っこい男がいた。
机の前にある、ライトが裏から照らされているスクリーンには、レントゲン写真が貼り付けてある。
どうやら、俺の写真らしい。
主治医は、向こうを向いたまま唸った。

「 う~ん。」

 俺は、主治医の様子から不安になりながらも、車椅子から丸椅子に座り直した。
主治医は、レントゲン写真から眼を離し、俺の方に自分の座っている椅子をクルッと回した。

“ ん・・・・。”

俺は、一瞬、信楽のタヌキが座っているのかと思った。
そして、タヌキは俺の顔を見て言った。

「 ハイ、主治医のタヌキコウジです。」
「 えっ、タヌキ?」

俺はタヌキがタヌキと名乗ったのに驚いた。
そして、タヌキは話を続けた。

「 いえ、狸小路です。」
「 えっ、姓がタヌキで、名前がコウジ?」
「 いえ、姓が狸小路です。
 名前はジュンです。
 続けて言うと狸小路 純です。」



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霧の狐道191

2009-02-17 18:49:37 | E,霧の狐道
 俺はチラッと井上さんを見た。
井上さんは俺がベッドを見ているのが分かっている。
でも、それについての話は出て来ない。

“ 当然だよな・・。”

俺たちはエレベーターに一直線に進む。
エレベーターの前で井上さんは言った。

「 2階まで行くわ。」

 俺は扉の上にある階の表示を見る。
エレベーターは1階に止まっていた。
井上さんがエレベーターのボタンを押す。
扉の上にある階の表示がゆっくり上がり始める。

“ 1,2,3・・・・。”

俺は振り返ってナースステーションの横の奥まった所にあるベッドを見た。
ベッドは一つだけ切り離され、別のものとしてポツンとそこにあった。
 後ろでエレベーターの扉が開く音がする。

「 乗るわよ。」

井上さんが後ろを見ている俺に言った。
 俺は正面を見た。
エレベーターの扉が開いている。
エレベーターの正面奥の壁には大きな鏡がついていた。
そこには車椅子に乗った俺と井上さんが映っている。
 俺は井上さんに押されてエレベーターに乗り込んだ。
鏡に映った俺の顔が大きく見える。

“ 俺、ちょっと表情暗いな・・・・。”

 井上さんが車椅子の向きをクルッと扉の方に変えた。
また、ベッドが見える。
扉が閉まり始め、ベッドが視界から消えて行く。

“ こんな風に、人も消えて行くのだろうな・・・。”

俺は沈んだ気分で、目の前のピッタリ閉じた扉を眺めていた。
そして、エレベーターは低く音をたてながら下がり始めた。



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霧の狐道190

2009-02-15 19:17:41 | E,霧の狐道
 病室を出て通路を移動する。
キュルキュルキュルと車椅子の車輪の音がする。
少し錆びているようだ。
 通路の移動途中、俺はキョロキョロと辺りを見回す。
そして、入院患者の何人かと擦れ違う。
顔色はあまり良くない。

“ ヤッパ、元気、無いよな・・。”

 ついでに扉の開いている病室も覗いて行く。
左側の大部屋は扉が開け放たれて、患者同志話をしている人やベッドで寛いでいる人が見える。
右側の個室部屋は扉が閉まっている部屋ばかりだ。

“ あ、開いている部屋がある。”

俺の病室から出て三つ目の個室の扉が開いていた。
前を通過するとき、俺は首を回して部屋の中をじ~っと見た。

“ ガランとしてるな・・・。”

部屋の中にはロッカーやテレビが見えるがベッドは無い。

“ ベッド、無いよな・・・。”

ナースステーションを通過して、もう直ぐエレベーターだ。

“ あ、ベッドがある・・。”

 俺はナースステーションの横の奥まった所に、ベッドが一つポツンと置かれているのを発見した。

“ あれって、個室部屋のだろうな・・・・。”




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霧の狐道189

2009-02-13 19:18:29 | E,霧の狐道
 俺は部屋から出て行く田中爺の後ろ姿を見ながら思った。

“ あのベッド・・、生きては退院できないのか・・・・。”

俺は曰く付きのベッドを見た。

“ ホント、あのベッドじゃなくて良かった。”

 曰く付きのベッドを見ると、自然と隣のベッドの山本爺が眼に入る。
山本爺は相変わらず布団から眼だけを出してこちらを見ている。
俺は山本爺とモロに眼が合った。

“ な、何か、ヤダなァ・・・。”

俺は気まずい気分で山本爺から眼を逸らせた。






      主治医


 俺は、今日、午前中主治医の診察を受ける予定となっていた。
朝食を取った後、休憩を挟んで診察を受けに行く。
 朝食後、ベッドで30分ほど寛いでいると、看護婦の井上さんが車椅子を押しながら遣って来た。

「 じゃ、診察に行こうか。
 車椅子に乗ってね。」
「 ハイ。」

 井上さんは車椅子をベッドの横に持って来て、俺は井上さんに介助されながら車椅子に座る。
足と肩の痛みが残っているし、腫れているのか体を動かし難い。
それに車椅子に慣れないから勝手が分からず、イデデ、イデデと喚きながら何とか座った。
 井上さんが笑いながら言った。

「 大袈裟、大袈裟!」
「 でも、ホントに痛い。」
「 若いんだから、我慢、我慢。」
「 若くっても、痛いものは痛い!」
「 じゃ、出発、出発!」

井上さんに車椅子を後ろから押され、俺は病室を出発した。



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霧の狐道188

2009-02-11 19:16:05 | E,霧の狐道
俺は不安になって田中爺に聞いた。

「 俺のベッドは大丈夫?」
「 ああ、大丈夫。」
「 俺が入って来たときは空いていたけど・・・。」
「 アハハハハハ、怖がっとるな。
 心配せんでええ。
 おまえのベッドを使っていたヤツは、おまえが入って来る二日前に出て行き
 よったがな。」
「 そうか、良かった・・・。」
「 あらっ・・、今、生きて出て行ったとは言うてへんで・・・。」
「 えっ・・・。」
「 アハハハハ。
 冗談やがな。
 心配せんでもええで。
 前のヤツな、元気になって出て行きよったわ。
 ホンマホンマ、嘘やないで。
 安心しい。」
「 脅かすのナシ!」
「 分かった、分かったがな。
 それでやな、そのベッドの話の続きなんやけどな。
 わしには見えんにゃけど、山本さんがな、最近、黒い影が夜中にそのベッド
 から起き上がって来るちゅいよんねん。」
「 えっ・・・・。」
「 わしはな、夢でも見とんのとちゃうかって言うてんのにな。
 ほんで、わしな、ホンマかいなと思てな、前に起きてたことあるねん。
 一晩中起きてても、そんなこと起こらんかったわ。
  まあ、途中、ちょっと居眠ってたときあったけどな。
 そやから、わしにはよう分からんにゃ。
 でもな、山本爺には、時々見えるんやて、夜中にな。
 それでやな、もう、我慢できんって言うてな、看護婦さんに言いよったんや。
  看護婦な、そんなバカなって言いよったけどな・・・。
 そら、悪い評判たったら大変やろ。
 そうです、何て言えへんがな。
 それでもな、わし、看護婦の顔色見てたんや。
 何か、怪しい気がするわ。
  あ、そろそろ、朝飯の時間やな。
 ほな、ちょっと、朝飯何か見てこォ~。」

田中爺は言うだけ言うと部屋から出て行った。



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霧の狐道187

2009-02-09 19:51:34 | E,霧の狐道
 俺はひとまず昨日のことは伏せて、しらばっくれて訊いてみた。

「 どう、変なん?」
「 そやな・・・。
 まあ、同じ部屋になったのも何かの縁かも知れへんな・・・。」
「 だから、どう、変なん?」
「 うん、よっしゃ。
 ちょっと、待ちや・・・・。」

田中爺は通路の方に行って外をキョロキョロ見てから、人がいないことを確かめて戻って来た。

「 看護婦、おらんし言うたるわ。
 あのな、このベッドな、使ったヤツ、生きては退院できひんで・・。」
「 えっ、ホント?」
「 ホンマやで。
 わしも山本さんもホンマにこの病院長いんや。
 そやから、知ってるねん。
 知ってるヤツだけで、四人はおるんやで。
 これ、ホンマのこっちゃがな。」

 俺はシゲシゲと曰く付きのベッドを眺めた。
その隣のベッドでは、相変わらず山本爺が布団から眼だけ出して、こちらの様子を窺っている。
田中爺はアゴでそのベッドを指して話を続けた。

「 で、そのベッドなんやけどな。
 来たヤツ、始めは結構元気なんやけどな、そのうち段々弱って来て個室行き
 なんや。
 そんで、個室行ったらもう帰って来んわな。
 ホンマ、お陀仏さんやがな。」
「 それって・・・・。」
「 ああ、始めは分からんかったんやけどな、最近、何か変やなって、山本さん
 と話してたら、うわ~って気が付いたんや。
 そんなら、案の定、そうなんやわ。」



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霧の狐道186

2009-02-07 20:20:42 | E,霧の狐道
俺は田中爺に訊いた。

「 今、龍平ってのが入ってきたけど、誰?
 入院患者?」
「 あ、龍平な。
 あれは、入院患者や無いで。
 龍平はな、この病院の院長の息子や。
 この病院の院長、やり手でな。
 コンビニみたいに、あっちこっちに病院作って、大儲けやがな。
  あの龍平は、院長の息子やがな。
 この病院に、よ~来よるんや。
 何でやろな、他にも病院いっぱいあるのに・・・。
  まあな、わしも山本さんもこの病院長いやろ。
 何回も龍平と顔合わしてるし、知り合いやん。
 まあ、お友達やがな。
  今日は、土曜日やろ。
 学校休みやから、昨日から院長室に院長と泊まっとるんや。
 この病院の最上階の角っこにビップルームがあるねん。
 ホテル並みのスゴイ部屋らしいで。
 わし、入って見たこと無いけどな・・・。
 そこから、来とるんや。」
「 へえ~、そうなん。
 それで、何でこの部屋に来たん?」
「 あ、それはやな。
 山本さんがな、そこのベッドが変やって看護婦さんに言ってやな。
 それを聞き付けて来たんやと思うわ。」

俺は、空きベッドをチラッと見た。
ベッドとしては特に変わったところは無い普通のベッドだ。

“ 昨日の夜、黒い塊がベッドから出て来たけど、田中爺は前からそれを知っ
 てるのかな?
 今のところ、山本爺が変やと言っていたってことしか言ってないけど・・・。”




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