ひびのあれこれ・・・写真家の快適生活研究

各種媒体で活動する写真家の毎日。高円寺で『カフェ分福』をオープンするまでの奮闘記、イベント情報などをお伝えします。

花形演芸会@国立演芸場

2008年01月27日 | Weblog
今朝は蔵前の浄念寺で祖母の納骨式。式の前に家系図なるものを見る。父は文久年間以来の五代目チャキチャキ江戸っ子で、商人の家に生まれ、現在は浅草でおじさんが家業を継いでいる。母は共栄社という麹町にあった出版社で「探偵倶楽部」に携わっていた祖父と元芸者の祖母の間に生まれ、当時としてはそれほど珍しくはないが、やや複雑なお家事情を抱えていて、血縁は辿るに辿れない状態。どこかで血のつながった見ず知らずの親類がいるんだなぁ、と思うと不思議な気分になる。
1時スタートの花形演芸会だったが1時20分に到着。三笑亭朝夢が「湯屋番」で高座に上がっている途中で劇場に入る。勘当された若旦那が番台に上がる場面から聞く。劇場の一番後ろから見ていたのだが、所作がいちいち芝居染みているように感じる。やや疲労。
そしてお目当ての栄助「マザコン調べ」。野球の世界は10年に1人の名プレーヤーが1年で何人も登場するのに比べて、落語会は・・、とジャブを入れ、サラッと「大工調べ」を解説。棟梁政五郎の啖呵=逆ギレは落語的には見せ場だけれど、現実的には反社会的行為である!と添えて本題へ。舞台はイーカ堂で働くレジ打ちの娘カズエ(=大家)と彼(=大家の奥さん)のアパート。突然、同僚の男マキヒコ(=与太郎)とその母親(=棟梁)が訪ねてくる。マキヒコとの交際を断ったカズエに、息子を溺愛する母親が投げつける理不尽な言葉の数々。それはそれはシュールな世界。反撃するカズエに逆切れした母親が「穴を捲って」怒濤のような啖呵を切る。古典と新作が絶妙に交錯し、栄助の創作能力、言葉に対する感性がギラギラ輝く作品となっている。昨年聞いたストレートな「大工調べ」も、カミカミの割にしっかり啖呵で見せ場を作っていて、栄助の個性、才能が発揮されていた。百栄となってどう成長していくのか、今、一番の注目株。
次にロケット団の漫才。最近寄席に足を運んでいなかったので、漫才は新鮮。栄助の「マキヒコ」が登場したりして、アドリブもいい感じで効いている。船場吉兆のくすぐりに大笑いしたが、手相の場面は引っ張りすぎに感じる。
そして橘家円太郎で「棒鱈」。丸ビルのカフェでひどい接客を受けた話から移ろいやすい人の機嫌、そして江戸っ子というものがいなくなった、協会では解決策として新しい「江戸っ子」の定義として「三回東京で引っ越しすれば江戸っ子」とマクラで語り、本題へ。ソツのない綺麗な高座。
仲入りで退散。

第12回ビクター落語会@仏教伝道センター

2008年01月25日 | Weblog
開口一番は柳亭市朗「小町」。鷹揚な口調は師匠譲りか。
次に市馬で「時そば」。市馬のキャラに合っている噺の一つのように思う。冬の噺だが、のどかでうららかな気分になる。
そして雲助「夢金」。終始淡々とした渋い語り口。先日聞いた三三の「夢金」は雲助伝授か?次回2月16日の「双蝶々・通し」に期待が募る。
仲入り後、白酒で「代脈」。マクラに落語家になったいきさつQ&Aから弟子入りする時の苦労(?)話。雲助門下は大掃除前と模様替え前はすんなり弟子入りできるらしい。代脈を仰せつかったギンナンと駕籠かきのやりとりはすっぱりカット。ギンナンのとぼけた口調が白酒のイメージとぴったり重なって、違和感を感じない。患者の家で勧められた座布団があんまりフカフカで有頂天になって引っ繰り返るギンナン、白酒の達磨の肉体だからこその演出。出された羊羹がやたらと厚っぺらなのが可笑しい。今回の落語会では一番キャラが立っていた。
そしてトリは市馬で「二番煎じ」。あまりにもゆったりとした展開で睡魔に襲われる。目覚めたら侍の登場シーン。酒盛シーンを聞き逃してしまった・・・。やはり落語会は万全の体調で臨まねばならないと胆に命じて退散。
夕食は西麻布の真由膳へ。広尾の割烹「つくし」で修業された女性が切り盛りする小料理屋ということで期待して出かけたが、その期待を見事に満足させてもらった。カウンターにはおばんざいが小鉢で並ぶ。海老芋の煮っころがし、ハスのきんぴら、ぎんなんの天ぷら、穴子の白焼き、ブリ照焼き、お造り三点盛り、牡蛎フライと〆に土鍋で炊いたちりめんご飯。料理はどれもおいしく優しい味わい、ご飯は最初に白飯、次ぎにちりめんご飯、と2色で楽しめるところが嬉しい。そして赤だしのシジミの味噌汁は絶品。次回はおばんざい中心でチャレンジしたい。

ビアヌオーヴァ@西荻窪

2008年01月23日 | Weblog
夕食に西荻窪のイタリア料理店、VIA NUOVA(ビアヌオーヴァ)へ。
以前の場所から移動し、西荻窪駅北口出て線路と平行して走る伏見通り沿い、駅から徒歩約3分、進行方向右手の深山ビル地下へ。看板が控えめなので発見しにくい。
移転してから利用するのは2回目、夜のみだが、ちょっと心配になるぐらい閑散とした店内。ランチ時は混んでいるのか?中央線沿線のイタリアンはおいしい店ほど消えてしまうことが度々。Caldo Regaloも、ダ・キヨも・・・。二の舞いにならないことを祈る。
前菜に鴨とレバーのパテ、キッシュ、野菜のグリル。パスタはアサリとトマト、トマトとモッツアレラチーズのトマトソース、キノコのタリアッテッレの3種。メインに魚介のスープ煮。全体を通して、味のしっかりしたものはおいしいが、シンプルなものが物足りない。そしてボリュームが少ない。以前の店ではイタリアっぽい豪快な盛りだったのに、銀座に出店して以来気取った量になってしまったのか?懐かしの3種盛り合わせパスタの勢いは失われてしまったのだろうか。あのジェノベーゼ、ハイレベルだったのに。



ノリーオ@四谷三丁目

2008年01月22日 | Weblog
夕食に四谷三丁目のリストランテ「エノテカノリーオ」(http://www.imp-inc.co.jp/norio/)へ。
新宿通りからJALホテルの角を右へ、こんなところにレストランがあるのだろうか?と心配になる住宅街にぽつんと佇む一軒屋。脇の階段を上がって二階部分にある入口へ。中はこじんまりしているが、落ち着いたオトナの雰囲気。メニューはプリフィックスで、ベースは6000円。以前訪れた時よりもメニューがバージョンアップしていて嬉しい驚き。昨年シェフが変わったそうだ。アミューズにカプレーゼが出て、前菜にシャモレバーのソテー、パスタにイカ墨を練り込んだスパゲッティ、メインに前菜と被ること承知でやっぱりシャモのロースト。どれも滋味溢れるおいしさで大満足。特にイカ墨パスタは絶品。メインの軍鶏も胸肉、もも肉どちらも程よい火加減でジューシーに焼かれ、噛む度に旨味が口に広がりとてもおいしい。コストパフォーマンス高く大満足。

あるぷす寄席@松本

2008年01月21日 | Weblog
永福から高速にのり、約2時間で松本着。行きつけのそば屋「浅田」に直行したが、残念ながらお休み。名店「翁」で修業された「浅田」の主人が提供する蕎麦は洗練された、すっきりとした印象がある(と言っても最後に食べたのは3年前)。満たされない食欲を物欲で満たすべく、中町商店街(http://www.mcci.or.jp/www/nakamati/)へ。蔵を利用した民芸品や郷土特産品のお店が並ぶ雰囲気のある商店街。日常使いのこだわり雑貨や陶器を扱う「工芸マエストロ」と「陶変木」で散財。

<第8回あるぷす寄席@まつもと市民芸術館小ホール>
13:30開演。開口一番は、こはるで「道具屋」。次々に新ネタを習得し、成長著しい。変に上手ぶることなく、高座姿に勢いがあって、終始テンポよく進行。高感度ますますアップ。
二つ目昇進披露ということで、今日の主役である吉幸は「しりもち」。発声のインパクトが特徴的で、独特のビートを刻んでいる。人情噺をやるときにこのビートがどういうふうに変化するのか、少し興味が湧く。
そして柳家一琴で「初天神」。一琴の強面な外見とかけ離れた、こ憎たらしさと愛嬌溢れる金坊の演出、デフォルメが芝居臭さに陥るギリギリで踏みとどまり、見事!前半を大幅カットしていきなり境内のシーンからスタートすることで、金坊と父親の関係をフューチャー。過去に聞いた「初天神」の中で、小三治、喬太郎に並びトップ3に入る。時間調整で隠し芸(?)の紙切りを披露。大きな体を前後にゆさぶりながら、なぜか無言。妙な間合いでオフビートな笑いが会場に広がる。強面なのに和み芸。
そして仲入り後、吉幸2つ目昇進披露口上。一琴、談春に挟まれて、深々と頭を垂れる吉幸。脇の二人だけ見ているとヤクザのお披露目にしか見えない。進行役の一琴から、「ふつう昇進披露というものは真打ちになってからするものなのだけれど・・・」と二つ目で昇進披露に至った経緯を説明。そして談春にバトンタッチ。快楽亭ブラックの弟子として入門したにもかかわらず、落語の世界そのものに生きる師匠が借金諸々で除名になり、その後新師匠談幸に弟子入りしなければならなかったことで二つ目になるまで10年という歳月がかかってしまった吉幸のこれまでを淡々と語る。言葉の端々に兄貴分らしい優しさが滲む素晴らしい口上だった。
そしてトリに談春で「妾馬」。ややハイスピードに進行。そのテンポが新鮮で、噺に引き込まれてしまった。また、松本という土地のせいか会場の雰囲気が東京よりあたたかい。高座と観客の心的距離が(一方的かもしれないけれど)近く、まるでお茶の間で落語を聞いているかのようだ。その観客が、八五郎がお鶴に語りかける場面、殿様に母親のお目通りを懇願する場面で、水を打ったようにシ~ンと静まりかえり、あちこちでハンカチで目を拭う姿を見ると、ついつられて落涙。
総合的に、噺家それぞれのハイレベルな個性が楽しめるとても魅力的な落語会だった。

高速を飛ばし帰京。安くておいしいB級グルメのトップランナー、西荻窪の「ムーハン」で夕食。海南チキンライス目玉焼きのせ、アボガドサラダ、ラクサ、大根もちの玉子とじを食べる。

プリンターズ展@横浜赤レンガ

2008年01月17日 | Weblog
1月20日まで、横浜赤レンガ倉庫1号館にて「プリンターズ展」開催中。
新山清氏のネガをそれぞれのプリンターが自身の解釈でプリントし、一つのネガから多様な表現が生まれる、ということが一目でわかるように展示されている。実際、引伸し機、レンズ、印画紙、露光時間、フィルター、現像液等の選び方、組み合せだけでも完成するプリントは大きく異なる。普通の仕事であれば撮影者の意図した通りにプリントを仕上げる技量が売りものなわけだが、この企画展では撮影者の意図は最初から無視されていて、プリンターに全てが委ねられている。プリンターは自分の好みで光や空気感、さらには物語を作り出す自由を与えられている。そのネガの持つポテンシャルを引き出す方法は十人十色、一口に「モノクロプリント」といってもこれほど奥の深い世界なんですよ、ということ。展示方法について、若干分かりにくい部分も見受けられるので、わからないことがあれば会場にいるスタッフに是非聞いてみてください。
その隣ではプリンター協会会長加藤法久率いるモノクロプリントワークショップ「SABADO」の写真展。サバドもメンバーに入れ替わりはあるものの10年目を迎える。ほとんどのメンバーは写真を生業にしていない人達であるにもかかわらず、プリントの技術は驚くほどの進歩を遂げ、写真に対する真摯な姿勢が感じられる。
さらに奥は横浜を本拠とする「THE DARK ROOM」の展示。モノクロの貸暗室で私もしばしばお世話になっている。それぞれの作家が自身のテーマに沿った作品を発表している。
閉館後、関内のそば酒房「花津月」へ。夜11時(L.O.10:30)まで営業しているので便利。一品料理が豊富。鳥のだんご汁、金目鯛お造り、そばがき、サバ一夜干し、煮穴子、あわび塩辛などをつまんで〆にセイロ。蕎麦は太めで田舎風。

談志ひとり会@国立演芸場

2008年01月15日 | Weblog
マクラで伝説の「芝浜」に触れ、今後の落語への取り組み方に言葉を濁らせる。耳の具合が悪く半分聞こえない中、体の不調を訴えつつ声の調子を整える準備体操で小噺。「アダム」の彫物の小噺、「マダム」と言い間違えた談志に客席からダメ出し。かなり大胆な内容であるにもかかわらず前に坐っていた上品なおばあさんが二つ折れになって大ウケ。今日は「旧友」が訪問するということもあってか、客席への目の配り方が念入り。

そして「堪忍袋」。夫婦ゲンカが絶えない夫婦の仲裁に疲れた大家の一計で、女房が堪忍袋を縫う。談志の針仕事の仕草、そこに針と糸があるかのようにとっても丁寧。縫い上がった堪忍袋に早速悪口雑言をぶちまける夫婦。その言葉と、ひきつった笑顔のギャップが不気味。お蔭ですっかりケンカが収まった夫婦の噂を聞いて集まってくる長屋の連中~犬まで、あっという間に一杯になった袋、もう破裂寸前のところに酔っぱらいがやってきて袋を奪い取る。そのはずみで箍がはずれて長屋中の悪口が一気に溢れてしまう。それを舞台ソデで待ち構えていた一門が口々に叫び、会場は言葉の渦で一杯になる、そんな演出が盛り込まれた談志ワールドだった。

仲入後は「疝気の虫」。マクラにお気に入りの小噺(=かわいい系)。
疝気の虫の形状説明が細やか。その色、形は次々に変化し変幻自在な捕えがたさが逆に夢から覚めた医者に疝気の虫のリアリティーを与えているように感じる。急患の知らせに駆けつけると、患者の男性は疝気で苦しんでいる。夢を頼りに虫の好物の蕎麦を注文、食べる奥さんに匂いだけ嗅がされる患者のやりとりが続く。権太郎の音源では食べる奥さんがその息を「ハァ~」っと色っぽく旦那に吹きかけ、蕎麦をすする音と息を吹きかける音が繰り返されることで音楽的な仕上がりになっていたが、談志は匂いをかがせる仕草は箸で鼻先に蕎麦を押し付ける、結果、静かなやり取りが繰り返される。しかしこの夫婦もどういうわけだか色っぽい気分になり、「チュ~は後でね」ということになる。蕎麦の匂いに誘われ別荘から隊列を組んで出てきた疝気の虫たち、しかし匂いばかりで蕎麦は見当たらず、とうとう男の口元まで上がってくる。対岸に蕎麦を発見した虫達、奥さんの口元にジャンプ、飛び移った虫たちが蕎麦をむさぼり大フィーバーする場面で鳴物が入る。踊り浮かれて蕎麦に食いつき大暴れする虫の表情や仕草、満面の笑みで踊る談志は天使のようにお茶目で、そんな談志を見ているだけで幸せな気分になれる。

夕食は代々木の「田んぼ」。おひつごはんのお店で、テイクアウトの客が5割、かなりくだけた雰囲気の店。味については特筆事項なし。

たっぷり談春@名古屋

2008年01月14日 | Weblog
ホテルで起きたら午後12時過ぎ。チェックアウト時間に間に合わず、結局超過料金を払って1時過ぎにホテルを出る。腹拵えに名古屋駅ビルJRセントラルタワーズに出かけたがどこも長蛇の列。唯一空いていた加賀の料亭浅田の支店へ。松花堂弁当「紅殻」注文。上品な味付に控えめな量。店内もさりげなく魯山人の書が飾ってあったりして、駅ビルの中であることを忘れる雰囲気、格式の高さがそこはかとなく感じられる。しかし、奥のカウンターで手を握り合う熟年の訳ありカップルの話に思わず食に対する集中力を欠く。名古屋から地下鉄桜通線で移動、今池へ約10分。
談春独演会@今池ガスホール。15:30からという微妙な開演時間。
春太「浮世根問」。昨日談春から「焦ると押す」と諭されたせいか、若干すっきり。会場の反応も温かい。
談春、マクラで「en-taxi」連載のきっかけ、「赤めだか」出版記念全国サイン会から落語会ツアーへのいきさつを語る。結果的にノーギャラで全国縦断するはめになったということで、珍しくツアーへの「ご祝儀」募集。そして「子別れ」通し。
上・中は素晴らしい出来栄え。兵糧米と軍用金を携え、酔いがまわっていい気分の大工の熊が寺から出てきたところからスタート。紙くず屋をいたぶる熊の嬉々としたいたずらムード、そして5銭で7人の敵と戦おうという武士っぷりを見せながら熊にやられっぱなしの紙くず屋の膨れっ面、そんな2人がウキウキ吉原へと向かう様子が活き活きと描写されてその姿が目に浮かぶようだ。大店を冷やかす紙くず屋を嗜め、裏の小店へ。「俺は見ての通りの職人だ、こいつは・・・、紙屋の旦那だ」に機嫌を良くした紙くず屋の束の間の喜び、すぐに正体を暴れ揚げ句の果てに「先祖代々の紙くず屋だい」。声をかけた若い衆に弁当を差し出す。がんもどきの汁が少ないという若い衆に「味がわかるな」とにやり、背中に背負った弁当を紙くず屋にどやされて汁が全部ふんどしにしみちゃった、「ふんどし絞ろうか?」と冗談飛ばして登楼。すぐに翌朝へと場面は移り、ぷいと帰った紙くず屋とは対照的に持ったが病で居続ける熊の元へ4日目の朝おばさん登場。優しい言葉の裏に隠された本当の言葉を解説。お銚子1本でやんわり追い出され、さすがにまっすぐ帰り辛くてぐずぐず酒を飲み、暗くなって帰る早々女房に問い詰められ、品川から吉原に移ったお勝との色っぽい事の次第を告白する熊が女房に叩かれ啖呵を切るまで、そしてそこからガラッと一転し母子が別れの挨拶をして出て行くまで、その劇的な変化に圧倒される。「出て行け」と言われた女房の悔しさよりも諦念がしみじみと感じられる。場面、登場人物の感情の転換が見事で、話にぐいぐい引き込まれてしまう。
仲入後の下、亀ちゃんの3年後の年齢が9歳から11歳にアップ。亀の登場の仕方、額の傷の負わされ方、母親にギュ~と抱きしめられて肋骨2本ヒビ、青鉛筆で空を書く、などの挿話は先日と変わらず盛り込まれている。女房が亀の忘れ物を届ける場面、確か先日は一番見栄えのいい着物を着て少しお化粧して出かけたように記憶しているのだが、今回は取る物も取りあえずいそいそ駆けつける。亀ちゃんの鰻の食べっぷり、見事だった。三年ぶり夫婦差し向いの場面は昨日よりややすっきり。

談春筐@静岡

2008年01月13日 | Weblog
談春独演会@静岡アザレア大ホールへ。
開口一番は春太「浮世根問」。流れる汗は会場の暑さだけが原因なのか、最初のうちは比較的テンポよく進むが、途中天国のありかに答えるあたりから失速。「宇宙を飛行機で~」以降は厳しいし難しい。
談春はマクラに黒おでんから番組で高田文夫や岡本なつき等と一緒に昇太の故郷に撮影に着た時の四方山話。そして「替わり目」。酔っ払いの亭主が無邪気で愛おしい。それに付き合う女房も可愛い。おでんの具のところ、女房は「ぺん」ではなく「すじ」をつめて「じ」。言葉のリズムとしてはペンの方が勢いがあって好き。うどん屋の出番は省略し、亭主の独白から一気にサゲへ。
仲入後、マクラに同窓会の話から同級生のフケ具合~自身の年齢の座標となる子供の不在と、変わって師匠や両親に確実に年を取っていることを実感させられる話。そして「妾馬」。大家に羽織袴姿を褒められている場面からスタート。大家の所でお世取=ミミズク~見せ物小屋の口上、「おもくもく」、しいたけ昆布、「おったてまつる」、「おまはんの葬式」などを経て、母親に晴れ姿を見せに行く場面へ。今日は大家の八五郎に対する「お前は馬鹿なんだから」発言はやや控えめ。強気の母親が「生まれ損ない」と言われて反発する八五郎の勢いに押され、一変して涙をこぼす場面はやはり胸に染みる。赤井御門守を訪れた八五郎、「お鶴」を知らないという門番に「今知らないのはマズイよ、殿様のメカちゃんだよ」と小指を立てる仕草が茶目っ気たっぷり。風呂敷=お広敷へ通され、名前が通じず「チョロギ」~黒豆、田中三太夫を待つ間ヒキガエルの真似、さらにウシガエルの真似まで。「堂々いたせ」は「身共の尻にくっつけ」となり、八五郎は「食いつけ?」と聞き違え、即答をぶてまで言葉のすれ違いが続く。無礼講を許された八五郎、赤井御門守の横で一際美しいお鶴を見つけ仁義を通すが、お酒の勢いで乱暴者が心の中に秘めた優しい思いを吐露、そんな思いが通じ、一生のお願いである母親の謁見を許され、座は感涙で満たされる。湿っぽくなった座を盛り上げようと都々逸をうなる八五郎、ノリのいい御門守に気分を良くし、座はすっかり八五郎の独壇場。そんな八五郎を気に入った御門守の「鶴の一声」で召し抱えられることになってハッピーエンド。

終演後、焼津の「松乃寿司」へ。焼津の駅前の閑散としたイメージを覆すような立派な店構え。17:30にもかかわらず駐車場はほぼ満車。おまかせを注文する。新鮮な駿河湾で獲れた魚を中心とした活きのよい旬の魚を楽しめる。特にレモンで食べるれんこ鯛の爽やかな味わい、むちむちした黒ムツ、脂ののった濃厚な味のブリ、ミナミマグロ中・大トロがおいしかった。江戸前ではありえない厚い切り身の歯応えも楽しい。家族連れでテーブル席は賑わい、そのオーダーで忙しい板場であるにもかかわらずいいテンポ、大将はとても気さく、ストレスフリーで食べられた。
食事を終えて名古屋へ移動。ソフィテル泊。

小堀遠州美の出会い展/談春独演会

2008年01月11日 | Weblog
昼に友人と待ち合わせ、銀座松屋の特別展「小堀遠州 美の出会い」展へ。12時過ぎに到着すると、会場は入場制限するほどの大盛況で既に長蛇の列。先にお昼ごはんを松屋8階「イ・プリミ」へ。ルッコラのサラダとトマトとモッツアレラチーズのパスタ、魚介のピザを注文。パスタとサラダはおいしかったが、ピザは生地もソースもイマイチ。魚介は火が通りすぎていて固い。他がおいしかっただけに残念。
食事を終えて遠州展へ。とぐろを捲いていた列はなくなってやや落ち着いたかのように見えた会場前だったが、中はぎゅうぎゅう、高齢者満載のすし詰め電車のような雰囲気で、遠州の世界観からはほど遠い。綺麗さびの言葉の如く洗練された茶道具、遠州と交流のあった大名や文化人の書画、鑑定書など、貴重な展示品の中で一番興味深かったのは小堀宗実氏のお濃茶お点前を収録した映像。お茶人ならば当然であろう所作も、お茶人ではない私にはちんぷんかんぷんで意味不明でかなり面白い。あとで友人に根掘り葉堀り質問してなるほど納得。どれほど不可思議に見える所作にもきっちり意味があり、それが形になり、それぞれの流派の美意識を表わしている。プラチナの茶室は煌々としたライトの中で見るものではないように感じる。月明かりの下でしかその美は現れないように思う。
大混雑の会場を離れ、疲労回復のためにマリアージュ・フレールへ。マルコ・ポーロとリンゴのタルトでのんびり。相変わらずここの紅茶はおいしい。アールグレー・フレンチブルー、ダージリン・ヒマラヤ、そして中国茶のオピウム・ヒルもおいしい。
気分一新、談春独演会@銀座ブロッサムへ。
開口一番はなし、いきなり談春が高座に。「子ほめ」上・中。そして仲入後「子は鎹」。前半は談春カラーで一気に進行。しかし下は家族・愛の劇場といった感じ。青い鉛筆のストーリーが以前より作り込まれ、話の重要な要素となっている。夜なべして書いた青空の絵、うなぎ屋に出かけた亀ちゃんはそれを忘れてしまう。それに気づいた母親は、迷った末にそれをうなぎ屋に届けに行く。階下から亀の名を呼ぶ母親、しかし亀はうなぎを口にいっぱい頬張って一言も声を発しない。この時の亀ちゃんの食べっぷりはすばらしい。そして2階に上がってきた母親と入れ替わって階下に降りる亀。父と母三年ぶりのぎこちない対面。そんな中、青空の絵を父親に見せる母。何だか理解できない父に、母は「空はあなたのことだと思います」と思い出話。母子二人に経済的な不自由はさせないという父に対して、堪りかねた亀「男だろ?」との言葉に棟梁は意を決してもう一度やり直そう、と切り出し、親子三人涙に暮れてサゲに。
終演後は並木通りのマルディグラへ。サインが分かりにくく穴場的雰囲気が漂う。ビルとビルの隙間に地下に降りる階段がある。料理は田舎風パテとちょっとカブるがどうじても食べたかったリエット、イカを墨で煮込んだものを前菜に、メインは仔羊のグリルとカスレをオーダー。パテとリエット、ビストロ風の気取りのない味、大満足。しかしイカは火が入りすぎて固い。メインは適量、どちらもおいしいがカスレはどうしても塩味強め。銀座のわりに値段もそこそこ、しかも夜遅くまで開いているので便利。