ひびのあれこれ・・・写真家の快適生活研究

各種媒体で活動する写真家の毎日。高円寺で『カフェ分福』をオープンするまでの奮闘記、イベント情報などをお伝えします。

日本の名人 春野百合子

2007年09月29日 | Weblog
待ちに待った春野百合子の舞台、日本の名人@大阪、茨木市クリエイトセンター。
出演は順番に桂三喬、一龍斎貞水「堀部安兵衛ー安兵衛婿入」、中入りを挟んで春野百合子、横山ホットブラザーズ。
お目当ての春野百合子は「好色五人女ーたるやおせん」。初めて浪曲を聞く私にとって、春野百合子は衝撃だった。談志以来、本物の名人に出会ったという実感を得た。麹屋に奉公に出ていたおせん。器量良く働き者のおせんに旦那は目をかけてやるが、それを悋気のおかみさんが妬きに妬いて追い出す口実として嫁に出す。某日、法事の手伝いにきたおせんを連れて、納戸の中を片づけているうちに旦那が取り落とした鉢がおせんの髪を直撃、乱れ髪に。それを見たおかみさんが不義密通を言い立て、結果おせんは離縁されてしまう。心配して駆けつけた旦那、行き場を失ったおせん、二人が橋の上で出会い、話をしているところにおせんの夫が探しにやってくる。そんなところを見られては不義がますます本気にされてしまうと、二人は舫っていた舟に身を隠す。亭主の追求から逃れるためその舟の縄を切り、流されていく舟の中で、捨身になった二人がいよいよ不義を本物にしてしまう。
その声の調子に琴線を逆なでされるようなしびれを覚え涙。圧倒的な説得力、歯車が噛み合わなくなっていくストーリーが流れるように展開していく。状況が浮かび上がってくる。まるで映画を見ているようだった。おかみさんの悋気の焔が目に見えるようで息を呑む。「まぁまぁまぁ」の調子が耳に残る。
合三味の一風亭初月の勝負師のような鋭い、真剣勝負の目つきにぞくっとした。緊張感で張り詰めた舞台、凄かった。

この後、春野百合子の「番町皿屋敷ーお菊と播磨」を音源で聞く。電車で聞いていたら思わず涙腺が弱まりこらえるのに必死。とんでもない声、表現力。そして今は亡き合三味大林静子が緊迫感をより一層高めていく。