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月刊イオがおくる日刊編集後記

朝鮮学校への補助金は法的根拠がある

2011-12-15 09:00:00 | (瑛)のブログ

  「そこで行われている授業の内容というのは、先ほども担当の局長に聞きましたら、行くと全然違う教科書を見せる。それから、そのときに限って適当な授業を見せる。それなら、その真偽をただすために、都の職員がやっぱり張りついて、一週間でも十日間でも一月でも、その実態を調査したらよろしいと思うし、それが嫌なら学校を閉鎖したらよろしいので、そういうことを強要できない相手に、私たち国民の税金を使って補助する必要は毛頭ないと私は思います」(東京都のHPから)

 上に記したのは12月8日に東京都知事が都議会で行った発言だ。 東京朝鮮学園が13日に反論の談話を発表したが、朝鮮学校を一度も訪れぬまま、それも事実をでっち上げてまで子どもの学ぶ権利を奪おうとする脅しだ。これが日本に暮らす外国人の2割=41万8000人の外国人を擁する首都東京のトップが口にできたものかと、わが耳を疑った。

 日本政府は、「高校無償化」問題で外国人学校の中で唯一朝鮮高校を排除し続けているが、世間の流れを見ていると、朝鮮学校が反日的な教育をしている、だから日本国民の血税を使うことはまったく許せない、という空気が漂っているようだ。

  しかし、はっきり言おう。朝鮮学校への教育補助は法的根拠がある。

 朝鮮学校への公的な補助金は、1970年に東京都が「私立学校教育研究費補助金」の給付に踏み切ったのが弾みとなり、1974年に大阪府が「私立専修各種学校設備補助金」、77年には神奈川県と愛知県が「私立学校経常費補助金」の支給を始める。その20年後の1997年には愛媛県が補助金制度を設けたことにより、朝鮮学校が所在するすべての都道府県が補助金を支給することになった経緯がある。

 私立学校振興助成法第16条は、地方自治体が各種学校に補助を実施できると定めている。また地方自治体法第232条2項は、地方自治体が「公益上必要がある場合においては」任意の対象に補助を行うことができるとしている。

 さらに、日本国憲法第26条の「教育を受ける権利」は国民のみならず日本に滞在する外国人にも保障されると解釈される。これは「教育の機会均等」をうたった教育基本法にも該当する。
 また、憲法は、国際条約の遵守をうたっており、例えば世界192ヵ国が批准した「国連・子どもの権利条約」には「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」(28条a)とのくだりがある。1992年に国連で決議されたマイノリティの権利宣言には、「国家は……マイノリティに属する者が自らの母(国)語を学び、母(国)語で教育を受ける十分な機会を得られるよう、適切な措置をとる」(第4条3項)と明記されている。

 このように、国際条約は民族的マイノリティのアイデンティティ教育を制度的に保障するよう、各国に求めている。

  しかしながら、日本は法制度上、外国人の「教育への権利」が確立されていない。

  日本で、朝鮮学校をはじめとする外国人学校は、日本の国公私立学校のような「1条校」になることはできず、自動車学校や美容学校のような「各種学校」止まり。昨春、高校無償化の対象に外国人学校が含まれることで、初めて国庫補助が実現したが、日本の法制度は外国人学校を支援する枠組みを持たない。そこで各自治体は、保護者の負担を減らして子どもたちの学ぶ権利を保障しようと考え、補助金制度を設けてきた。つまり「公益上必要がある」として独自に判断してきたのだ。背景には朝鮮学校関係者の粘り強い運動があるが、自治体の英断に多くの同胞は力を得てきた。

 例えば兵庫県が支給する外国人学校教育振興費補助金は、外国人学校に支給する補助金の中でトップレベルだが、外国人学校の定義を「専ら外国人の子女を対象とした教育を行う学校教育法第1条に規定する学校に準じた学校」と規定している。

  また市区町村レベルでは、東京都23区が外国人学校保護者の経済的負担を軽減するための保護者補助金を支給しており、江戸川区は、補助金交付の目的を「外国人学校に在籍する児童・生徒の保護者…の負担を軽減すること」としている。兵庫県や東京23区の対応は、制度の不備を自らが補うことにより、外国人の子どもの学ぶ権利を保障しようというものだ。外国人が納税の義務を果たす「地域住民」という視点も大きく作用している。

 都知事は「朝鮮学校に張り付いて調査する」というが、ゆくゆくは日本の私立学校、公立学校にも張り付くつもりなのか。日本国民が戦前の苦い経験から勝ち取った「教育の自由」が泣いている。(瑛)


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